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眠りにつく尾瀬 [尾瀬ケ原]

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【すっかり雪に覆われた尾瀬ヶ原。この雪が根雪になることはないのだろう・・・】

11月5日【曇りのち晴れ】 
尾瀬の入山口,鳩待峠,大清水,沼山峠に通じる道もいよいよ閉鎖となる前日,尾瀬に久しぶりに大量の雪が降った。ここ数年,温暖化の影響からか新雪に覆われた尾瀬ヶ原の様子を見る機会は極めて少ない。せっかくの機会なので行ける時に行っておこうと急遽,鳩待峠に向かった。

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【雪晴れの登山道。すっかり葉が落ち明るくなった林内を歩く】

紅葉も終盤を迎えた奥日光も混雑からは解放され,気持ちよく車を走らせていると車道に大きな鹿が現れた。それも大きく立派な角を携えた雄鹿だ。こんな角で突かれたら車に大穴を開けられかねない。機嫌を損ねないようにスピードを落として慎重に車を走らせる・・・。しかし,暫く走っていると,次から次へと同じような雄鹿が現れる。全部で10匹近くはいただろう。さらにはカモシカまで現れた。鹿のサファリパークにでも迷い込んだか・・・

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【山の鼻ももうすぐ。見慣れた風景も雪に覆われて一変・・・】

最後に真打ち「熊」との遭遇もあり得るな・・・。今までにないくらいの数の野生動物の出迎えを受け,鳩待峠に着く頃には,気持ちもやや後ろ向きになっていた。
駐車場には以前から駐めてあったと思われる分厚い雪に覆われた車が数台,今日到着したと思われる車が2台寂しげに駐まっていた。

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【ふわふわの雪が湿原を覆う。池塘も場所によって表情が異なる】

準備だけは整え,鳩待峠休憩所に向かう。至仏山頂は雲に覆われ,晴れる気配はない。GPVでは昼頃から完全に晴れる予報にはなっているが,のんびりとそれを待つ余裕はない。今日は,午後2時までに戸倉に戻らなければ,道路が冬季閉鎖されてしまうのだ。

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【雪晴れの湿原。燧ヶ岳がなかなか山頂を見せてくれません】

鳩待峠からの様子を撮影していると,突然,峠まで数台の車が上ってきて,中から多くの人が降り立った。ビジターセンターの閉所作業をするのだという。その一団は,慌ただしく山の鼻に向かっていった。その人たちの後を追うように登山道に積もった雪を踏みしめながら歩き始める。前回とは明らかにその量が違う。優に15~20cmは積もっていただろうか。一人でラッセルするとなると厄介だが,先行者があったのでその苦労は軽減された。

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【氷で閉ざされた池塘のヒツジグサの上に雪が降り積もる】

すっかり葉を落とし,光溢れる林内には,昨日降った純白の雪が降り積もり,木漏れ日を眩しく反射させている。雪晴れの気持ちの良い林内をゆっくりと進む。前回たくさん見かけた熊の足跡もほとんどないが,油断は禁物。イヨドマリ沢周辺には,あちこちに熊の足跡があった。まだ冬眠はしていないようだ。

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【葉が落ち,林内が見渡せるようになった拠水林。川の流れも見えます】

先ほどの人たちが山の鼻で慌ただしく閉所作業をするのを横目に上田代に向かう。その先は,2~3名の踏み跡だけとなり,ふわふわで歩きにくい雪を踏み外さないように慎重に歩く。人のほとんどいない最終日に,高架になった木道から落ちて怪我する事態だけは避けたい・・・。激しく雲が行き交い,時々青空が空を横切ると,真っ白な雪原に落ちたスポットライトが雪原を行き来する。尾瀬のシーズン中に真新しい霜や雪と遭遇することが少なくなり,こんな雪の日ならではの光景を実際に尾瀬ヶ原で目にしたのは本当に久しぶりである。この雪は果たして根雪となって来シーズンまで残るのだろうか・・・上田代の逆さ燧のベンチ付近まで行き,折り返す。


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【湿原の白と池塘の黒。色の対比が面白い】

だんだん,天候は回復していたが,最後まで燧ヶ岳や至仏山の山頂は見ることができなかった。しかし,最後の最後に振り返ると,その時だけ燧ヶ岳の山頂が姿を現してくれた。燧ヶ岳に今年最後の挨拶をして帰路につく。

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【豪華絢爛,錦秋の尾瀬から僅か半月でモノクロの尾瀬へ。その変化は劇的です】

やはり,尾瀬最終日。しかも,平日でもあり一般の登山者と会ったのは10名程度だ。あとは尾瀬関係者ばかりである。帰り道,木道工事をしていた人に話を聞くと,木道工事は道路が冬季閉鎖になっても終わるまで続けるらしい。ビジターセンターの片付けも終わったようで山の鼻は物音一つしない静かな初冬の尾瀬に戻っていた・・・。尾瀬には半年ぶりの静寂が訪れ,長い眠りにつくのだろう・・・。

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【ドローンで間近から見た小至仏山】

すっかり天候も回復し,新雪を纏った至仏山がどっしりと見守る鳩待峠に着いたのは午後1時。冬季閉鎖には何とか間に合うだろう。最後に空撮をして尾瀬の地を後にした。

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【新雪に覆われた尾瀬を望む。燧ヶ岳はまた雲に隠れてしまった・・・】
※空撮に当たっては,国交省DIPS・FISS登録,関係機関への連絡調整済みです。
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鉄まんアトム

エンドロールが流れもう映画は終わったと思わせたあと、もうひと物語始まったような展開ですね。なんともなんとも言葉が出ません。これまた良いものを見させていただきました。ありがとうございます。
by 鉄まんアトム (2020-11-10 12:06) 

Aqua

コメントありがとうございます。気づかずに大変失礼しました。
今年は出だしが遅かったせいで,まだ尾瀬を歩き足りないせいかもう少し歩きたいと思っておりまして,実はこの後もアヤメ平を歩いてきました・・・ 
近いうちにまたUPします。
by Aqua (2020-11-14 21:38) 

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