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■紅に染まる燧ヶ岳[3] [燧ヶ岳]

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【尾瀬沼の上空を染め上げる朝焼け雲を映して尾瀬沼も赤く輝きます】

「紅に染まる燧ヶ岳」の最終回になります。
□10月2日(土)快晴
今週いっぱいは温かい日が続くというが,日が落ちると一気に冷え込んでくる。始めからビバークするつもりでいたから,ウェア類は初冬に着用するものをしっかり用意した。汗で濡れたものを着替えて,しっかり着込んだ。これで万全。徐々に暮れていく尾瀬ヶ原を眺めながら時間を過ごす。

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【モルゲンロートの燧ヶ岳柴安嵓と至仏山。上空からなので影燧も見えます】

残雪期や夏にビバークしたことはあるが,この時期は初めてだ。暗い道をひたすら登る場合は,体が温まっているからほとんど寒さを辛いと感じることはないけれど,何もせず,寒さに耐えながら待つ夜は長かった。夏に比べると秋は,日暮れが早い上,夜明けが遅いため夜の時間がずっと長いことを改めて実感した。

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【朝日を浴びる柴安嵓と爼嵓】

この寒さの中,ふとウトウトすることはあるが,眠ることなど不可能。星景写真を撮影する時だけ,動き回ったり撮影に集中したりしているから寒さを意識することはないが,撮影が終わると耐えがたい寒さの中にいることに気付く。徐々に風も強まってきた。長時間露光に震動は禁物。風の影響の少ない場所に移動して,カメラを設置。自分も岩陰で待機する。もうこの時期のビバークはこりごりだ・・・

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【朝の眩しい光に包まれる燧ヶ岳山頂】

長い夜が終わりに近づき,時間が早めに進むようになる。頭上に横たわっていた天の川や多くの星が薄明の空に溶けてゆき,東の空に温かい色彩が戻って来た。その色はだんだんと濃くなり,尾瀬沼上空にあった絹雲を茜色に染め上げる。その雲は御池岳を越え至仏山の方まで伸びていたから,空一面が薄紫のベールで覆われた。
さらに,ビーナスの帯が至仏山の上空を彩ると,ほどなくあちこちの山頂に真っ赤な明かりが灯る。そして,時間と共にその光は麓へと降りてゆき,その色を失う。

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【朝陽を浴びて徐々に目覚める尾瀬沼。朝靄もゆっくり消えてゆきます】

山頂付近は,夜半から風が強かったが,日の出前後はそれがピークとなった。立てておく三脚がカメラごと吹き飛ばされそうな勢いである。何より楽しみにしていた朝の燧ヶ岳空撮への影響が懸念されたが,案の定,離陸はしたものの次から次へと強風警告メッセージが表示される始末。最後は「自動帰還できないから手動で戻せ」の表示。そんな中では,柴安嵓まで飛ばして山頂付近を旋回するのが精一杯。モニタで確認しながら手動で回収して,空撮は終わりにせざるを得なかった。バッテリーを温存したのがこんな形で裏目に出るとは。

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【紅葉も最盛期だが朝陽を浴びて,より一層赤さを増す山頂付近の紅葉】

太陽の力は偉大だ。眩しい朝の光を全身に浴びていると,寒さに凍えていたことなどすっかり忘れてしまう。久しぶりに見る,そして暫く見ることがない光景をカメラに収め,御池から登ってきた登山者に絶景の一等地を譲り,山頂を後にした。

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【朝靄も徐々に消えてゆき,いつもの光景に戻っていきます】

今日は日曜日。御池からはひっきりなしに登山者が登ってきた。すれ違いなど出来ぬ狭さなので,カメラの三脚をぶつけないように気を配り道を譲るが,ほぼ10メートル間隔で次から次へと人が来る。合計150名はいただろう。こんな多くの人とすれ違うのは初めての経験だ。
しかも足場が悪い。上部はゴロゴロした丸い大きめの岩や浮き石が多く滑りやすい。熊沢田代より下は更に大きな岩を避け,乗り越えながらの下山でほとほと疲れた。昨夜ほとんど眠れなかったことや水不足で脱水症状気味になりながらの下山だった。
*空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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【燧ヶ岳の5つのピーク。爼嵓,柴安嵓,御池岳,赤ナグレ岳,ミノブチ岳】
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てばまる

いやいやお疲れさまでした。わたしも強風と寒さに耐えた経験あるのでその時のことを思い出してしまいます。今回が最後と現地では思うものの下山して時間がたつとまたムクムクと欲求が出てくるのですが登ってみないと分からないですから難しいものがあります。
前日からのぼるなら私でもバッテリー温存すると思うので難しい判断ですね。
by てばまる (2022-10-17 13:02) 

Aqua

寒さが半端ない上,夜が夏よりもこの時点で3時間以上長い。更に風も強かったので,夏に比べると修行のように辛い時間でした。
でも,所期の目的が全て達成できたわけではなく,ちょっと中途半端なのでひょっとするとまたやるかも・・・ (^^ゞ
by Aqua (2022-10-17 21:35) 

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