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紅に染まる至仏山 [至仏山]

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 残雪期の植生保護のため5月7日から6月30日の間,至仏山登山道が閉鎖される。ここ数年少雪傾向だったが,今年は残雪も多めなので,できることなら閉鎖になる前に登っておきたいと考えていた。GW前半は不安定な天候が続き,チャンスはなかなか訪れない。やっと,後半に良い予報が並んだ。ここで行かないと次は7月だ。

 朝陽に染まる至仏山が見たいと思い,前日に家を発って鳩待峠で仮眠することにした。睡眠時間僅か1時間足らずで車を出ると満天の星空が広がる。月もなく,蠍座も天の川も頭上に横たわっていた。

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【朝の柔らかな光を受けて輝く至仏山の残雪】

 暗い道をライトの光だけを頼りに進む。月明かりはないものの,残雪があるおかげで地面の様子もほぼ一定だし,夜だと気温も低く雪も締まりアイゼンがよく効く。他の時期よりも寧ろ歩きやすいくらいだ。まだ,広葉樹林帯の葉も茂っていないから,枝の隙間から垣間見える星空を望ながら登れるのは心強いし,楽しい。しかも雪面からの照り返しもなく快適に登れる。ただ,この時期は,道迷いと滑落には十分注意が必要だ。

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【朝陽に染まる小至仏山から笠ヶ岳に続く稜線】

 先週,尾瀬を歩いたばかりなので,それほど疲れを感じないままオヤマ沢田代に着く。既にヘッドライトも必要ないくらい明るくなっていた。所々にある道迷い防止の赤い布を見落とさないように気をつけ,高さを稼ぐ。夏だと大小の岩を乗り越えたり,濡れて滑る木道を恐る恐る歩いたりするなど,状況に合わせて歩く必要もあるが,今はひたすら単調な雪の傾斜を修行のように進むのみ・・・。もうすぐ小至仏山という辺りで燧ヶ岳のかなり右の方から太陽が顔を出した。

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【春眠暁を覚えず・・・ 上越・越後の山々も眠たげです】

 ザックが転げ落ちない場所を選んで荷物を置き,空撮の準備を進める。暁の空に新ドローンMAVIC2が飛び立つ。多少の風にふらつくこともなく,安定して飛んでいるのは心強い。太陽の光が強くなるにつれ,至仏山の残雪が徐々に紅に染まっていく。GW中に多数のスキーヤーが刻んだシュプールも繊細で緩やかな絹のような凹凸もはっきりと分かる。降雪直後ならもっと綺麗で残雪たっぷりの至仏山を撮影できたと思うが,これだけでも十分すぎるくらい美しい。小至仏山まで空撮できたら帰ろうとも思っていたが,暫く残雪期の至仏山に登っていなかったし,時間もあったので山頂を目指すことにした。

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【平ヶ岳遠望】

 小至仏山頂を巻くように付けられた狭い登山道をアイゼンを引っ掛けないように注意しながら慎重に進む。鞍部からは夏道と違い,右寄りの雪の上の道を歩く。花はもちろん咲いていないので楽しみは少ないが,歩きやすさから言ったら夏道よりもずっと上だ。全く人と会うこともなく山頂に到着。この日の最初の登頂者となった。

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【燧ヶ岳と至仏山のコラボ】

 暫く貸し切り状態で,山頂からの眺めを独占した。雲一つ無い空,眩しい光に輝く残雪たっぷりの尾瀬ヶ原,耳を澄ますと聞こえるウグイスの声・・・ この至福の時間を思う存分味わった。GWも残り2日。休み明けに備えて今日は登山者は少ないのかなと思ったが,徐々に山頂に人が溢れてきた。最終的にはこの日は100人ぐらいの人が入れ違いに山頂を目指した。山頂からも数回空撮をしたあと,朝食をとって早めに下山した。

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【トカゲ岩付近からの尾瀬ヶ原。既に池塘周りは変色が始まっています。】
【ここに掲載している空撮画像撮影にあたり,関係各所への連絡し承認を頂いております】
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