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新雪眩しきアヤメ平 [アヤメ平]

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【モルゲンロートに染まるアヤメ平の崖】

先週,新雪のアヤメ平を歩いてきた時の様子を簡単にまとめましたのでご覧ください。

11月12日(木) 快晴
11月も半ばを過ぎ,尾瀬では雪の降る日もその量も日増しに増え,文字通り「遙かな尾瀬」になろうとしている。降雪と雪解けを何度かくり返し,やがて真冬の眠りにつく・・・。しかし,尾瀬が雪に閉ざされ眠りにつく僅かな間隙を縫って尾瀬に会いに行ける年もある。純白の雪に覆われたその姿は凜として気高く神々しい。訪れるどの季節よりも間違いなく美しい。そんな神秘的な初冬の尾瀬を垣間見る事ができるのが,アヤメ平である。

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【上空から眺めたモルゲンロートに染まる初冬のアヤメ平】

前日に車を走らせ道の駅で仮眠後,車で富士見下へ。ここの積雪はわずかだが,富士見峠は30cmぐらいはあるだろうか。物音一つしない真っ暗な道をいつ現れるか分からない熊の幻影に怯えながら,ただひたすら距離を稼ぐ。轍もすぐになくなり,目の前に延びる道の先にあるのは,降り積もったフワフワの新雪とそこに付けられた小動物の足跡だけだ。高度が上がるとだんだん雪が深くなるが,流石にここまでくれば熊が来ることはないだろう・・・。

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【一部見える尾瀬ヶ原も結構積雪しているようです】

アヤメ平の直下に着く頃にはヘッドライトは必要なくなっていた。気温は-5℃。新雪は20~30cm。時間的にそろそろ陽が昇る頃だ。そこで寒さに耐え,暫く待った。やがて,アヤメ平の崖が淡いピンク色に染まり始める。その頃合いを見計らって空撮開始。

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【降雪直後なので樹木にたくさん雪がついていて初冬の雰囲気たっぷりでした】

今までも朝陽に染まるアヤメ平を見たくて歩いたものの,雪に阻まれ悔しい思いをしたことが何度もあるが,今は代わりにドローンが飛び回り,茜色に染まるアヤメ平や至仏山,尾瀬の彼方の会津や越後の山々を上空から見せてくれた。気温が低いせいかバッテリーの減りが速い。登山道からだと電波が遮られるため飛行できるところには制約が多いが,なんとか素晴らしい光景を見ることができた。

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【クリスマスツリーのように綿帽子をかぶったオオシラビソ】

昨年は天候の悪化で撤退したが,今年は天気も安定しているし,時間もたっぷりあるので予定通りアヤメ平に向かう。新雪は見た目には繊細で儚げだが,歩くことを考えると非常に厄介である。時にはスノーシューを装着し,呼吸を整え,一歩一歩意識して歩を進めなければならない。踏み込んだスノーシューに崩れ落ち覆い被さった雪を乗せたまま歩き続けることもあり,目的地に着くまでに通常の何倍もの時間がかかる。幸い,富士見下から富士見峠までの道は林道なので比較的歩きやすいが,問題はそこから先である。降ったばかりのサラサラの雪が木道や湿原に降り積もり,強風がそれを均してしまうためルートが分からない。残雪期と違って雪が締まっていないため,不用意に歩くと木道の隙間にも池塘にも落ちてしまう危険性があるのだ。

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【アヤメ平は風が強いため降った雪も飛ばされ,積雪自体はそれほど多くありません】

歩くたびにフワフワの雪に体力を吸い取られる感じである。時々木道を踏み外し,その間に嵌まりながらも時間をかけて富士見田代に到着した。純白の雪に覆われた無垢の情景を期待していたが,池の周囲や池の上は既に小動物の遊び場になっていたようだ。さらに,たっぷり時間をかけてアヤメ平に到着した。雪は先週よりも若干増えているようだが,池塘は一部がまだ氷結していない。雪原からも一部草が見えている。遠くには会津・越後の真っ白な雪を被った山々が聳えていた。

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【閉ざされゆくアヤメ平の池塘。まだ完全に凍ってはいません】

木道やベンチの雪は強風に飛ばされてほとんどない。朝強かった風もやっと収まり,ベンチも太陽の光で温められてぽかぽかのハイキング日和。ベンチで昼食後アヤメ平を後にした。帰り道,この日会った唯一の登山者からラッセルのお礼まで言われてしまった。さらに,帰り道を急いでいると大きなシカが3頭,ほんの数メートル先を横切った。思いもよらぬハプニングに最後はどきどきだったが,コロナに振り回された2020年の尾瀬のシーズンを無事に終えることができたことに感謝したい。

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【アヤメ平の風紋。風が作り出す不思議な模様がたくさんありました】

※国交省ドローン情報基盤システム(DIPS)登録,関係諸機関への連絡・調整済みです。
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眠りにつく尾瀬 [尾瀬ケ原]

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【すっかり雪に覆われた尾瀬ヶ原。この雪が根雪になることはないのだろう・・・】

11月5日【曇りのち晴れ】 
尾瀬の入山口,鳩待峠,大清水,沼山峠に通じる道もいよいよ閉鎖となる前日,尾瀬に久しぶりに大量の雪が降った。ここ数年,温暖化の影響からか新雪に覆われた尾瀬ヶ原の様子を見る機会は極めて少ない。せっかくの機会なので行ける時に行っておこうと急遽,鳩待峠に向かった。

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【雪晴れの登山道。すっかり葉が落ち明るくなった林内を歩く】

紅葉も終盤を迎えた奥日光も混雑からは解放され,気持ちよく車を走らせていると車道に大きな鹿が現れた。それも大きく立派な角を携えた雄鹿だ。こんな角で突かれたら車に大穴を開けられかねない。機嫌を損ねないようにスピードを落として慎重に車を走らせる・・・。しかし,暫く走っていると,次から次へと同じような雄鹿が現れる。全部で10匹近くはいただろう。さらにはカモシカまで現れた。鹿のサファリパークにでも迷い込んだか・・・

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【山の鼻ももうすぐ。見慣れた風景も雪に覆われて一変・・・】

最後に真打ち「熊」との遭遇もあり得るな・・・。今までにないくらいの数の野生動物の出迎えを受け,鳩待峠に着く頃には,気持ちもやや後ろ向きになっていた。
駐車場には以前から駐めてあったと思われる分厚い雪に覆われた車が数台,今日到着したと思われる車が2台寂しげに駐まっていた。

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【ふわふわの雪が湿原を覆う。池塘も場所によって表情が異なる】

準備だけは整え,鳩待峠休憩所に向かう。至仏山頂は雲に覆われ,晴れる気配はない。GPVでは昼頃から完全に晴れる予報にはなっているが,のんびりとそれを待つ余裕はない。今日は,午後2時までに戸倉に戻らなければ,道路が冬季閉鎖されてしまうのだ。

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【雪晴れの湿原。燧ヶ岳がなかなか山頂を見せてくれません】

鳩待峠からの様子を撮影していると,突然,峠まで数台の車が上ってきて,中から多くの人が降り立った。ビジターセンターの閉所作業をするのだという。その一団は,慌ただしく山の鼻に向かっていった。その人たちの後を追うように登山道に積もった雪を踏みしめながら歩き始める。前回とは明らかにその量が違う。優に15~20cmは積もっていただろうか。一人でラッセルするとなると厄介だが,先行者があったのでその苦労は軽減された。

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【氷で閉ざされた池塘のヒツジグサの上に雪が降り積もる】

すっかり葉を落とし,光溢れる林内には,昨日降った純白の雪が降り積もり,木漏れ日を眩しく反射させている。雪晴れの気持ちの良い林内をゆっくりと進む。前回たくさん見かけた熊の足跡もほとんどないが,油断は禁物。イヨドマリ沢周辺には,あちこちに熊の足跡があった。まだ冬眠はしていないようだ。

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【葉が落ち,林内が見渡せるようになった拠水林。川の流れも見えます】

先ほどの人たちが山の鼻で慌ただしく閉所作業をするのを横目に上田代に向かう。その先は,2~3名の踏み跡だけとなり,ふわふわで歩きにくい雪を踏み外さないように慎重に歩く。人のほとんどいない最終日に,高架になった木道から落ちて怪我する事態だけは避けたい・・・。激しく雲が行き交い,時々青空が空を横切ると,真っ白な雪原に落ちたスポットライトが雪原を行き来する。尾瀬のシーズン中に真新しい霜や雪と遭遇することが少なくなり,こんな雪の日ならではの光景を実際に尾瀬ヶ原で目にしたのは本当に久しぶりである。この雪は果たして根雪となって来シーズンまで残るのだろうか・・・上田代の逆さ燧のベンチ付近まで行き,折り返す。


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【湿原の白と池塘の黒。色の対比が面白い】

だんだん,天候は回復していたが,最後まで燧ヶ岳や至仏山の山頂は見ることができなかった。しかし,最後の最後に振り返ると,その時だけ燧ヶ岳の山頂が姿を現してくれた。燧ヶ岳に今年最後の挨拶をして帰路につく。

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【豪華絢爛,錦秋の尾瀬から僅か半月でモノクロの尾瀬へ。その変化は劇的です】

やはり,尾瀬最終日。しかも,平日でもあり一般の登山者と会ったのは10名程度だ。あとは尾瀬関係者ばかりである。帰り道,木道工事をしていた人に話を聞くと,木道工事は道路が冬季閉鎖になっても終わるまで続けるらしい。ビジターセンターの片付けも終わったようで山の鼻は物音一つしない静かな初冬の尾瀬に戻っていた・・・。尾瀬には半年ぶりの静寂が訪れ,長い眠りにつくのだろう・・・。

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【ドローンで間近から見た小至仏山】

すっかり天候も回復し,新雪を纏った至仏山がどっしりと見守る鳩待峠に着いたのは午後1時。冬季閉鎖には何とか間に合うだろう。最後に空撮をして尾瀬の地を後にした。

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【新雪に覆われた尾瀬を望む。燧ヶ岳はまた雲に隠れてしまった・・・】
※空撮に当たっては,国交省DIPS・FISS登録,関係機関への連絡調整済みです。
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新雪に包まれた尾瀬ヶ原 [尾瀬ケ原]

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【朝日を浴びて輝く新雪と樹氷(猫又川上流,柳平付近)】

尾瀬の全ての山小屋は今年の営業を終え,尾瀬の入山口に続く道路も間もなく閉鎖となる。
新型コロナウィルスの対応に追われ,未だ嘗て経験したことのない今年の尾瀬のシーズンも間もなく終わろうとしているが,最後ぐらいはいつものように新雪に包まれた尾瀬を見て終わりにしたいと思っていた。

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【研究見本園の北側にある大白沢山と猫又川源流】

願いが通じたのか,週末は降雪直後に晴れるとの予報になった。
冬用タイヤに履き替え準備万端その日を待ち,降ったばかりの雪に逢いたくて深夜に車を走らせた。津奈木橋を越えた辺りから道路の一部が凍結していた。駐車場には30台程度の車が既に駐まっているが,皆仮眠中なのだろうか,乾いた空を吹き抜ける強い風の音が響き,上空には今月2度目という満月が煌々と輝いていた。

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【朝の光に染まる至仏山中腹】

少し休憩してから鳩待峠休憩所に向かう。風も強くドローンでの空撮はできそうになかったので,至仏山は諦めて尾瀬ケ原に向かうことにした。ただ,鳩待峠でさえ積雪はわずか数センチしかなく,尾瀬ケ原はそれほど積雪していないのではないかとの心配がよぎる。

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【徐々に青空のエリアが広がってきました】

林内に入ると,ふんわりと新雪が降り積もった木道には,数分前につけられたような生々しい熊の足跡が延々と続いていた。木道の先に,突然その足跡の主が現れてもおかしくはない状況に緊張感でいっぱいになる。いつもはザックに取り付けている鈴を手にしっかりと持ち,音を出しながら進むが生きた心地がしない。朝夕の薄明の時間帯は最も危ない。山の鼻までの道がとてもとても長く感じられたが,何とか無事に到着。ホッと胸をなで下ろす。

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【青空を背景に輝く至仏山の新雪】

見本園から光景は,出発時とは明らかに様子が異なり,燧ヶ岳や至仏山の頂は雲に隠れ,モルゲンロートに染まった雲が僅かに行き来しているだけだ。この付近だけ天候の回復が遅れているのだろうか。一瞬だけ至仏山頂が顔を出したり,雲の隙間から零れた光が降ったばかりの新雪や樹氷を照らしたりする時間はあるものの,上空はほとんど低い雲に覆われている。気温は-5℃。風も冷たい。

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【この頃はまだ雪も溶けずに残っていたのですが,肝心の光が・・・】

研究見本園で僅かの晴れ間を捉えて写真を撮ったり,空撮したりしてから上田代に移動する。上田代のベンチに荷物を下ろして天候の回復を待つが,一向に良くなる気配もなく,時間ばかりが空しく過ぎる。紅葉のシーズンは過ぎたとはいえ,今日は週末。8時頃になるとたくさんのハイカーが次々にやって来た,木道工事の音も遠く響く。

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【ヒツジグサを閉じ込める氷が江戸切子のように綺麗でした】

朝食をとっている時間にも刻々と風景が変わる。湿原の灌木や草に僅かに付いていた霜が溶け,降り積もった雪がどんどん溶けていく。朝日に輝く霜や新雪の光景が見たかったが太陽は雲に隠れたままだ。しかし,時間とともに上空の雲は明らかに動きが激しくなり,時折,湿原に光を落とすようになる。思い描いていたような光景とは異なるが,重い腰を上げ,あちこち歩き回ってシャッターを切る。雲の中に隠れていた至仏山,燧ヶ岳そして景鶴山も徐々に姿を現した。

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【新雪を纏ったヒロハツリバナ】

そこからの変化は急激だった。あっという間に雲がとれ,湿原を覆っていたはずの新雪もほとんど消えてしまった。ピーカンの青空と乾いた湿原,拠水林に点在するカラマツの黄葉。遠くには冠雪した尾瀬の山々。まさに初冬から晩秋の尾瀬に逆戻りしたかのような劇的な変化だった。雪がかなり降って翌日も残るようなら戸倉でもう一泊する予定だったが,雪が完全に消えてしまったことで一気に気持ちも萎み,このまま日帰りすることにした。

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【最後まで雲に覆われていた景鶴山もやっと姿を現してくれました】

そんな光景の中田代を散策後,上田代に戻ってベンチで寛いでいると,尾瀬仲間のてばまるさん,horiguchiさんがやって来た。今年はコロナ禍のため入山自粛要請があったり,オフ会も中止になったりで尾瀬仲間に会う機会もほとんどなかったが最後に漸く会うことができた。談笑後,中田代を散策してから戻るという二人を見送り,残雪の残る道をゆるゆると登って鳩待峠に戻る。
二人が到着するのを待ち,下山後は三人で龍宮小屋の小屋主さん宅を訪問。一年ぶりの再会でたくさん話もしたかったが,バスの時間もあるので来年,龍宮小屋での再会を約束して帰宅した。何とか新雪を見ることができたし,最後に尾瀬仲間にも会えたし,充実した一日だった。

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【カラマツの黄葉が綺麗な上田代。朝の雪は一体どこへ・・・】


※空撮に当たっては,国交省DIPS・FISS登録,関係機関への連絡調整済みです。
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