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新雪に包まれた尾瀬ヶ原 [尾瀬ケ原]

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【朝日を浴びて輝く新雪と樹氷(猫又川上流,柳平付近)】

尾瀬の全ての山小屋は今年の営業を終え,尾瀬の入山口に続く道路も間もなく閉鎖となる。
新型コロナウィルスの対応に追われ,未だ嘗て経験したことのない今年の尾瀬のシーズンも間もなく終わろうとしているが,最後ぐらいはいつものように新雪に包まれた尾瀬を見て終わりにしたいと思っていた。

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【研究見本園の北側にある大白沢山と猫又川源流】

願いが通じたのか,週末は降雪直後に晴れるとの予報になった。
冬用タイヤに履き替え準備万端その日を待ち,降ったばかりの雪に逢いたくて深夜に車を走らせた。津奈木橋を越えた辺りから道路の一部が凍結していた。駐車場には30台程度の車が既に駐まっているが,皆仮眠中なのだろうか,乾いた空を吹き抜ける強い風の音が響き,上空には今月2度目という満月が煌々と輝いていた。

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【朝の光に染まる至仏山中腹】

少し休憩してから鳩待峠休憩所に向かう。風も強くドローンでの空撮はできそうになかったので,至仏山は諦めて尾瀬ケ原に向かうことにした。ただ,鳩待峠でさえ積雪はわずか数センチしかなく,尾瀬ケ原はそれほど積雪していないのではないかとの心配がよぎる。

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【徐々に青空のエリアが広がってきました】

林内に入ると,ふんわりと新雪が降り積もった木道には,数分前につけられたような生々しい熊の足跡が延々と続いていた。木道の先に,突然その足跡の主が現れてもおかしくはない状況に緊張感でいっぱいになる。いつもはザックに取り付けている鈴を手にしっかりと持ち,音を出しながら進むが生きた心地がしない。朝夕の薄明の時間帯は最も危ない。山の鼻までの道がとてもとても長く感じられたが,何とか無事に到着。ホッと胸をなで下ろす。

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【青空を背景に輝く至仏山の新雪】

見本園から光景は,出発時とは明らかに様子が異なり,燧ヶ岳や至仏山の頂は雲に隠れ,モルゲンロートに染まった雲が僅かに行き来しているだけだ。この付近だけ天候の回復が遅れているのだろうか。一瞬だけ至仏山頂が顔を出したり,雲の隙間から零れた光が降ったばかりの新雪や樹氷を照らしたりする時間はあるものの,上空はほとんど低い雲に覆われている。気温は-5℃。風も冷たい。

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【この頃はまだ雪も溶けずに残っていたのですが,肝心の光が・・・】

研究見本園で僅かの晴れ間を捉えて写真を撮ったり,空撮したりしてから上田代に移動する。上田代のベンチに荷物を下ろして天候の回復を待つが,一向に良くなる気配もなく,時間ばかりが空しく過ぎる。紅葉のシーズンは過ぎたとはいえ,今日は週末。8時頃になるとたくさんのハイカーが次々にやって来た,木道工事の音も遠く響く。

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【ヒツジグサを閉じ込める氷が江戸切子のように綺麗でした】

朝食をとっている時間にも刻々と風景が変わる。湿原の灌木や草に僅かに付いていた霜が溶け,降り積もった雪がどんどん溶けていく。朝日に輝く霜や新雪の光景が見たかったが太陽は雲に隠れたままだ。しかし,時間とともに上空の雲は明らかに動きが激しくなり,時折,湿原に光を落とすようになる。思い描いていたような光景とは異なるが,重い腰を上げ,あちこち歩き回ってシャッターを切る。雲の中に隠れていた至仏山,燧ヶ岳そして景鶴山も徐々に姿を現した。

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【新雪を纏ったヒロハツリバナ】

そこからの変化は急激だった。あっという間に雲がとれ,湿原を覆っていたはずの新雪もほとんど消えてしまった。ピーカンの青空と乾いた湿原,拠水林に点在するカラマツの黄葉。遠くには冠雪した尾瀬の山々。まさに初冬から晩秋の尾瀬に逆戻りしたかのような劇的な変化だった。雪がかなり降って翌日も残るようなら戸倉でもう一泊する予定だったが,雪が完全に消えてしまったことで一気に気持ちも萎み,このまま日帰りすることにした。

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【最後まで雲に覆われていた景鶴山もやっと姿を現してくれました】

そんな光景の中田代を散策後,上田代に戻ってベンチで寛いでいると,尾瀬仲間のてばまるさん,horiguchiさんがやって来た。今年はコロナ禍のため入山自粛要請があったり,オフ会も中止になったりで尾瀬仲間に会う機会もほとんどなかったが最後に漸く会うことができた。談笑後,中田代を散策してから戻るという二人を見送り,残雪の残る道をゆるゆると登って鳩待峠に戻る。
二人が到着するのを待ち,下山後は三人で龍宮小屋の小屋主さん宅を訪問。一年ぶりの再会でたくさん話もしたかったが,バスの時間もあるので来年,龍宮小屋での再会を約束して帰宅した。何とか新雪を見ることができたし,最後に尾瀬仲間にも会えたし,充実した一日だった。

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【カラマツの黄葉が綺麗な上田代。朝の雪は一体どこへ・・・】


※空撮に当たっては,国交省DIPS・FISS登録,関係機関への連絡調整済みです。
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