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草もみじの頃【2】 [尾瀬ケ原]

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【太陽もかなり燧ヶ岳の南の裾野から昇るようになった】

9月21日(火)(快晴)
明日は中秋の名月。窓からふと外を見ると,いつの間にか上空を覆っていた雲がほとんどなくなり,丸く大きな月が尾瀬ヶ原上空で煌々と輝いていた。この日は,夕霧も靄も何故かほとんど出ていない。朝になればもう少し出てくれるかと期待をして布団に潜る。

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【この日はこの一角にだけ,ほんの短い時間だけ現れた朝靄。超貴重品です。】

予定よりもかなり早く起きてしまったが,この頃になると至仏山頂からモルゲンロートが始まるのが5時30分頃なので,部屋で横になって過ごす。頃合いを見て第二長蔵小屋を後にする。見晴から山の鼻間は尾瀬のメインルートだが,六兵衛堀から見晴間の木道の傷みが最悪と言っていいほど酷い。足を捻ってしまわないよう注意して龍宮十字路へ。

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【初秋の彩りを見せる湿原にうっすらとかかった朝靄】

上空には微妙に風が吹いているせいか,この日は朝になってもそれほど朝靄が出ることはなかった。ただ,場所によっては霜が降りたらしく,スルッと足を取られることが何度かあった。僅かにあった朝靄は時間とともに景鶴山の方に流れていく。この朝靄を追いかけるようにヤマドリゼンマイのビューポイントに向かう。

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【そろそろ紅葉が見頃となるダケカンバも長い影を落としています】

この群落地に着く頃,燧ヶ岳の裾野から太陽の光が零れ,朝露に濡れたヤマドリゼンマイを照らす。僅かに残った朝靄もいい感じだ。しっかりと一眼で撮影後,すかさずドローンを上空へ。僅かに残る朝靄が消えぬうちに撮影しておきたいと気持ちは焦る。何とか間に合ってうっすらではあるが,白虹らしきものも確認できた。

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【朝日を浴びて煌めくヤマドリゼンマイ】

今回はヤマドリゼンマイの紅葉を地上や上空から撮るのが目的ではあったが,10m以上の上空からだとどうしても,塊としてしか捉えられない。その一帯が紅葉している事ぐらいしか分からずあまり面白くないので,慎重に低空からの飛行も試してみる。風も雲も全くない状態で飛ばすには絶好のコンディションにも関わらず思うようなカットは得られなかった。残念・・・。

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【ヤマドリゼンマイもほとんど紅く染まり,見頃を迎えていました】

荷物を持って東電小屋に向かう。今年もヤマスタのスタンプラリーが行われているが,最後に東電小屋が残ってしまったためだ。缶バッジの配布は早々に終了してしまったようだが,今年のヤマスタも何とかコンプリートできた。あとは秋の湿原歩きをのんびりと楽しみながら帰るとしよう。人通りの少ない東電小屋のベンチに荷物を下ろし最高の風景に包まれて朝食をとる。

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【黄土色の湿原とヤマドリゼンマイの赤が尾瀬ヶ原の初秋を代表する色ですね】

この日は朝,太陽が昇ってから帰るまで雲一つない完璧な快晴の一日だったにもかかわらず,真夏の一日とは違って,爽やかな風に吹かれ,ベンチでゆっくりと休憩を取りながら鳩待峠に向かった。

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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【まだこのように黄色い色をしたヤマドリゼンマイもありました】
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草もみじの頃【1】 [尾瀬ケ原]

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【秋の明るい空を映す上田代の池塘群】

夏の記録的な降水量と悪天候が,9月に入っても続いているような不安定な天候が続いていたが,中旬になると漸く秋らしい天候に変わってきた。台風一過で好天が予想できたので,時期的に見頃を迎えているはずの草紅葉が見たくて出かけることにした。
早めに家を出発したものの,ライブカメラで朝靄の尾瀬の光景を見てしまうと,昨日のうちに出発しておくべきだったとの後悔が・・・。戸倉に着くと,第一駐車場は既に満車,第二駐車場も半分以上埋まっていた。久しぶりの好天とシルバーウィーク等の条件が相まって一気に人出が増えたのだろう。

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【個体差はあるが,ダケカンバの紅葉はそろそろ見頃を迎える】

乗合タクシーから下りると鳩待峠は,周囲の木々がほんのりと色付き,紅葉シーズンが目の前に迫ったことを告げていた。雲一つない一面の青空から降り注ぐ日差しも真夏のそれとは違って柔らかく,吹き抜ける乾いた風も爽やかだ。
まず,ドローンで周囲の様子を簡単に撮影してから,秋の気配が漂う森に足を踏み入れる。所々に紅く染まった葉が入り混じり,黄色く色付き始めた葉を通り抜けてきた光が,森の中を明るく照らす。僅かばかりの華やかさを感じると同時に,この光景を見ることが出来る時間も残り少ないと思うと一抹の寂しさを感じてしまう。カラカラと乾いた風が木々を揺らすと枯葉が音もなく落ちる。いろいろな色の葉が周囲に鏤められ,積み重なっていく。

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【ヤマドリゼンマイの葉はほとんど霜にも当たらず見頃を迎えた】

山の鼻に着くとベンチ周辺は,今が緊急事態宣言中であることを忘れてしまうくらい多くの人が休んでいた。今年もコロナ禍で山小屋は受け入れをかなり制限していたから,いつ来ても登山者は少なく,久しぶりに活気ある尾瀬を見た。今年は早々と営業を終える山小屋がほとんどなので,こうした光景を目にする機会はこの先もほとんどないだろう・・・。

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【ヒツジグサはまだ花を咲かせているが,徐々に紅葉が進んでいた】

徐々に雲は多くなりつつあったが,至仏山荘のカフェテラスでコーヒーを飲みながら早めの昼食にした。ゆっくりと秋の一日をここで過ごせたらとは思うが,じっとしていると妙に落ち着かないので,研究見本園・上田代に移動して空撮を開始した。しかし,この頃から徐々に大きな雲が移動してきては日差しを遮り,思うように撮影できない。逆さ燧のベンチで光線待ちをしていると尾瀬仲間のhoriguchiさんがやって来た。話を聞くと大清水から入山後,尾瀬沼を経由して日帰りするところだという・・・。今の自分にはとてもできない芸当だ。

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【秋空と草紅葉の湿原をバックに聳える燧ヶ岳】

この時期は木道工事用の資材があちこちに放置され,撮影の邪魔になってしまう。それを確認しながら龍宮十字路へ。そして今回,何よりも楽しみにしていたヤマドリゼンマイの黄葉が気になってヨッピ橋方面に向かう。何日か前の冷え込みで一部が茶色く変色したり,縮れていたりするものもあったが,時期的にはちょうど良い感じである。カメラの設定で色合いは微妙に変わるが,今年一番の見頃と言っても良いだろう。

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【この時期の草紅葉は,いろいろな色が楽しめるところがいい】

相変わらず雲が優勢だが,その隙間を通り抜けた午後の日差しがヤマドリゼンマイの大きな葉を背後から照らすと,緑,黄色,オレンジ色のグラデーションがステンドグラスのように鮮やかに輝きを増す。やがて雲が多くなり,撮影が思うように進まないので,適当に撮影を切り上げて山小屋に向かう。
今回お世話になるのは第二長蔵小屋。明日は平日なのでこの日の宿泊客は少なく,僅か5名。暫くぶりに泊まったが,かなり老朽化してしまったというのが正直なところ・・・。サービス面でも首を傾げざるを得ない部分も多くあり,残念な思いだけが残った。

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【木漏れ日溢れる明るい林内】

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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