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梅雨明けの尾瀬を歩く【2】 [尾瀬ケ原]

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【尾瀬沼で見る夏の夕暮れ】

7月19日(月)(晴れ時々曇り)
昨夜は条件が整えば星景写真の撮影をしようと考えたが,目が覚めた時には,龍宮小屋周辺は濃い霧に覆われていてとても無理そうだったので,この日の星の撮影はは諦めて寝不足を解消すべく早々と休んだ。

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【朝靄に包まれた森に朝日が差し込む。光芒が美しい。】

目が覚めた時には,既に日の出時刻を回っていた。必要な荷物だけを持ち,この日はヨッピ橋方面に向かう。気付くと,木道を覆うように伸びた草に付いた朝露が靴やズボンの裾をいつの間にかビショビショに濡らす。ネットで確認すると至仏山頂は既にモルゲンロートに染まっているようだが,尾瀬ヶ原は相変わらず深い朝靄に覆われ,目の前の景色は一向に変わらない。そろそろいいかなと思い,途中からドローンを飛ばす。100mも上げると尾瀬ヶ原に澱んだ朝靄を突き破り,朝陽に染まる燧ヶ岳と至仏山が顔を見せる。モルゲンロートに染まる至仏山に燧ヶ岳の影が重なる。

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【はっきりくっきり完璧な白虹が見れました】

尾瀬ヶ原に朝の光が届くまでにはもう少し時間がかかるので,変化の乏しい上空で暫く撮影を続ける。この時期は,山の鼻やヨシッポリ田代付近が真っ先に,朝陽に照らされるようだ。湿原の様子が変化するまで空撮を一旦休止して,地上の撮影を始める。朝露に濡れるヤマドリゼンマイ。朝靄が激しく蠢く湿原。しっとりとした夏の朝を満喫していると,やがて周囲が明るくなる。そろそろ湿原の朝日が射し込む頃だ。目を凝らすと目の前には大きなアーチが現れ,時間とともによりくっきりとした白虹になっていく。すかさずドローンを上空へ。地上から見た白虹が,上空から見るとドローンの影を中心にした大きな円に変わる。

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【上空から見る白虹の一部】

朝日が当たると朝靄が激しく動き,その分布の濃いところと薄いところが出来る。その朝靄の薄いところを通して朝陽を反射して眩しく輝く池塘が見える。この時間帯しか見れない光景を心ゆくまで撮影してドローンを戻す。所々朝靄が残る朝の湿原を横目で見ながら急いで小屋に戻る。
朝食や出発準備を済ませてゆったりと朝のコーヒーを頂く。深い朝靄や完璧な白虹を撮影できて,今日やるべきことはほとんど済ませた気分である。あとは気儘に尾瀬沼に向かうのみ。

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【朝のドラマの終焉。これからが暑さの本番です】

弥四郎清水で冷たい水を補給して見晴で情報収集。尾瀬ヶ原を後にして段小屋坂を登る。まだ10時だというのに既に蒸し暑い。イヨドマリ沢や谷筋を歩く時には,冷気が澱んでいるためホッとする。重い荷物と腰の痛みを堪えながら白砂峠を越え,尾瀬沼へ。

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【白砂湿原・盛夏】

沼尻の休憩所もトイレも今シーズンは開いていないが,休憩所周辺ではたくさんの人が休んでいた。ここで昼食休憩と空撮をするために大休止していたが,この日も遠くで雷の音が聞こえ出し,急速に雲が広がる展開に。

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【沼尻付近には藻がびっしり覆い尽くし,不思議な色彩を放っている】

急いで昼食を済ませた後は,空撮を取りやめて長蔵小屋に向かう。
昔から「コバイケイソウの当たり年はキスゲ等の花が不作」と言われていたし,SNSの情報でも今年のキスゲはそれほど良くはなさそうだったが,それは間違いではなかった。時期的にはちょうど見頃なんだけどなぁ・・・

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【空高く伸びていた入道雲も夕陽に染まる】

受付を済ませ,部屋で寛いでいると予想通り雨が降り出した。入浴後食事を済ませて尾瀬沼の畔でのんびりする。燧ヶ岳上空に現れた入道雲が夕陽に染まり美味しそうな綿菓子のようだ。昨日のような派手な夕焼けにはならなかったが,徐々に暮れていく尾瀬沼の夕暮れを暗くなるまで楽しんだ。

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【一番大きな入道雲が燧ヶ岳山頂にかかり夕陽に染まっていた】

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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春の息吹きの中で【2】 [尾瀬ケ原]

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【上空から見る白虹。ドローンの影を中心にそれを取り囲む大きな白い虹ができる】

6月10日(晴れ)
明日は新月なので月に邪魔されることもなく星の撮影ができるかなと期待していたが,夜半には,いつものように夜霧が発生して龍宮小屋周辺は,ほとんど真っ白になった。星の撮影は明日の楽しみにとっておくことにして,朝靄の尾瀬ヶ原の撮影に備えてその夜は寝ることにした。

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【雲海に浮かぶ燧ヶ岳】

目が覚める頃になっても,まだ小屋の周囲は真っ白な霧に覆われていた。必要な荷物だけを持って小屋から出るには出たが,霧に覆われ周りの様子は全く分からない。そろそろ至仏山頂が朝陽に染まる頃である。空撮後の撮影も考慮して撮影場所を移動する。

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【朝の湿り気を帯びた空気をすり抜けて朝の光が湿原に届く】

長時間,霧に覆われていたせいか,木道がしっとりと湿り,場所によっては霜が降りているところもある。暫く歩いても朝靄の状態は変わらないが,目的のベンチにザックを置いてライブカメラを確認すると,予想通り,至仏山は朝陽を浴びて赤く染まっていた。急いでドローンを離陸させた。あっという間に朝靄の上空に出ると彼方には,モルゲンロートに染まる至仏山の姿があった。

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【沼尻の池塘群と尾瀬沼。上空の雲がすっかり夏のよう・・・】

湿原は真っ白な朝靄に覆われ眠りのさなかだが,上空では既に朝の劇的なドラマが繰り広げられていた。朝の光を受けて朝靄は慌ただしく動き,大きくうねり尾瀬ヶ原を行き来する。そのうねりが大きなスクリーンとなって太陽の光を映す時,地上では白い虹となって目の前に姿を現す。地上では視点となる者の影を中心に上半分の半円を描くが,上空ではその朝靄の分布や高度によって下半分の半円や,ドローンの影を中心とする大きな円となる。

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【初夏の光溢れる沼尻平】

そんな幻想的な朝靄の尾瀬ヶ原の上空を飛ぶドローンから送られてくる映像を見,僅かな時間をとらえては,時々カメラを構えて目の前の光景を記録する。
しかし,どうしても気になる・・・。下の大堀や龍宮付近にも昨年から本格的なシカの防護ネットが張られたが,これが,写真を撮る者にとって非常に目障りな場所に所構わず張られている。シカの食害から花を守れるのは良いことだが,花をひっくるめた風景の撮影を楽しみにしている者にとっては堪らない。花あっての尾瀬,尾瀬あっての花である。ここまで風景に入り込んでしまっては,景観破壊行為の何物でもない。もっと邪魔にならない樹林帯寄りに張ることは出来るはずである。

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【展望デッキからみるミネザクラと燧ヶ岳】

尾瀬ヶ原での撮影を終え,朝露に濡れ逆光に輝く湿原を眺めながら小屋に戻り,朝食をとる。2年ぶりの龍宮小屋のモーニングコーヒーをのんびりといただいてから尾瀬沼を目指す。当初はトガクシショウマや三条の滝を見て,尾瀬沼に向かうつもりでいたが,体調や時間を考慮して,通常のルートで尾瀬沼に向かった。

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【まだ見頃のミネザクラもたくさん残っていた】

すっかり日差しが強く,森の中を歩くルートは本当に心地良い。時々現れる渓流で火照った体を冷やしたりしながら白砂峠を越えると,林内に新鮮なムラサキヤシオツツジが多く見られるようになる。所々に残雪も見られるようになり,周囲には小ぶりなミズバショウが咲いていた。少し標高が高い分,花の見頃も,全体的に尾瀬ケ原より遅れている感じだ。

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【尾瀬沼の夕暮れ】

沼尻の休憩所で昼食後に空撮し,長蔵小屋に向かう。尾瀬沼周辺の山小屋は今年はコロナ等の影響で,どこも営業を再開してから10日ほどしかたっていないせいか,人影もまばらで静かな昔ながらの尾瀬を満喫した。宿泊先である長蔵小屋のこの日の宿泊者は3名しかなく,個室でゆっくり骨休めすることができた。食事を済ませた後,のんびりと散策の時間がとれるのは,日の長いこの時期ならでは。徐々に傾く夕陽に照らされるミズバショウを撮影して,静かな山小屋に戻り,早めに休んだ。

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです

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【夕陽を浴びて輝くカマッポリ湿原のミズバショウ】
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春の息吹きの中で【1】 [尾瀬ケ原]

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【紫外線も強くなり,新緑で覆われた森の木陰が恋しくなります】

6月9日(晴れ)
この時期の変化は急速で,1週間も違うと風景も咲いている花も大きく変わってしまう。特に,今年は例年以上に季節の到来が早いため,残雪の時期も花が見頃を迎えている期間も明らかに短いように感じる。

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【徐々に湿原にも緑に染まっていきます。空を写す池塘が涼しそうです】

コロナ禍で昨シーズンがスタートしたのは実質7月末だったから,ミズバショウもニッコウキスゲのシーズンも見逃し,今年こそ何とかその名残りや片鱗だけでも見ておきたいと思いがあった。コロコロ変わる天気予報に翻弄されながらも梅雨入り前の貴重な晴れの日を選んで急遽出かけた。

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【新緑も樹木や芽吹いた時期によって微妙に色が異なり,多彩なグラデーションが楽しめます】

今回は昨年営業を休止していた龍宮小屋と水道がやっと復旧し営業を再開したばかりの長蔵小屋に泊まることにした。体力が落ちている上,前回の尾瀬歩きで膝を痛めてしまって無理も出来ないのでそこを結ぶオーソドックスなルートをゆったりと歩こうと思う。

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【ダケカンバの新緑は特に目を引きます】

第一駐車場で待機していたバスに乗り込むがほぼ満員の状況だ。皆,好天につられて出てきたのだろうか? 平日だというのに,こんなに混雑しているとは予想外だったが,鳩待峠に着くとほとんど人もなく閑散としていた。

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【さてこれは何だと思いますか? こんな形をしているとは知りませんでした】

堆く積もっていた残雪もいつの間にかすっかり消え,爽やかな青空を背景に眩しく輝く鮮やかな新緑が印象的な鳩待峠でゆっくり準備を整えてから歩き始めた。
森に入ると前回はほとんど聞かれなかった多くの鳥の囀りがあちこちで聞こえ出した。渓流沿いではハルゼミ,湿原や池塘周りではカエルの声が森の中に響く。森がそしてそこに住む生き物たちが短い春をめいっぱい謳歌している様子を目で耳で,そして肌で感じることが出来た。春を待ちかねた尾瀬の命が激しく躍動していた。

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【平滑の滝を上空から】

いつもなら,ミズバショウはシーズン終盤を迎える頃なのだろうけれど,今年の場合は,一番遅いと思われる研究見本園のミズバショウの群落地でさえ,ほとんど見頃を過ぎていた。しかし,それにしてもこれは酷い・・・。ミツガシワやキスゲをシカの食害から守るために設置された柵が景観を台無しにしていた。設置する場所は他にいくらでもあるというのに,よりによってミズバショウの群落地のど真ん中に,嫌がらせをするかのように設置する必要があるのだろうか? もっと周辺部に移動してほしいものだ。

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【透過光で見る森の中の新緑。ほっとできるひとときです】

ミネザクラやミズバショウ,ショウジョウバカマ等の見頃は過ぎ,ムラサキヤシオやシラネアオイ,タテヤマリンドウがあちこちで存在感を示していた。ズミやコバイケイソウ,レンゲツツジの花,たくさんあったワタスゲの果穂も白く大きくなりつつあり,間もなく風に揺らめく姿を見せてくれるに違いない。

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【至仏山頂付近にかかった雲が,夕陽に照らされて綺麗に染まりました】

小屋に向かう途中で,下山する龍宮小屋の小屋主さんや尾瀬仲間と偶然遭遇し,長々と歓談できたのも嬉しかった。時間的に余裕があったので東電小屋・見晴を経由してから龍宮小屋に向かった。この日の宿泊者は4人。夕食後にカメラを持ってベンチに腰を下ろし,黄昏れていく尾瀬ケ原の様子をのんびりと眺めた。贅沢な時間が流れた。

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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本格的な春へのプロローグ【2】 [尾瀬ケ原]

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【モルゲンロートの至仏山と霜の降りた尾瀬ヶ原】

5月12日(晴れのち曇り)
寝起きの時間が普段とまるっきり違っているため体が戸惑っているのか,寝すぎたせいなのか3時30分には目が覚めた。撮影にはちょうどいい時間だ。肝心の天気も悪くない。薄明かりの中,ヘッドライトをつけて出発準備を整える。寝静まった燧小屋を出ぬけ,龍宮十字路に向かう。

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【その光は至仏山の雪を染めながらゆっくりと降りてきた】

振り返ると燧ヶ岳の背景の雲が淡いピンク色に染まっている。その光は徐々に空全体へと広がり,やがて尾瀬全体を優しく包む。東の空に大きめの雲があったので,モルゲンロートに染まる赤い至仏山は見れないかなと思いながらも少し待つと,山頂付近が赤く染まり出した。ありがたい。この雰囲気を記録に留めたくてドローンを飛ばす。朝靄はないが,今朝はよく冷えたおかげでたっぷりと霜が降り,湿原や周囲を取り囲む樹木が真っ白だ。その白いキャンバスを朝の光がうっすらと茜色に染め上げる。

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【朝一番の光に染まる遅霜の尾瀬ヶ原】

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【朝日を受けて輝く樹氷】

上空からではやや分かりにくかったが,遅霜で薄化粧した早春の尾瀬ヶ原をなんとか空撮することができた。地上の様子もじっくりと撮りたかったが,同時には撮影出来ないのがもどかしい・・・。ドローンを戻し,霜で滑りやすくなった木道を転倒しないよう慎重に移動する。

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【霜で真っ白になった湿原が朝日を浴びてあちこちできらきらと輝く】

やがて湿原にも朝の光が満ち溢れ,湿原全体を覆う薄いベールのようなしっとりとした空気を朝の光が眩しく照らす。湿原に目をやると,雪が溶けやっと現れた枯れ草も灌木も真っ白な霜を身に纏い,僅かな空気の流れにキラキラと輝きながら揺れている。神秘的な光景を目の当たりにして足を止めずにはいられない。この貴重な一瞬,空気感を記録に残そうと夢中で何枚もシャッターを切る。じっくり撮影したいが,空撮もしたくて後ろ髪を引かれながら龍宮十字路へ。空撮をするにはやはり位置的にここがベストポジションだ。

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【咲き始めたミズバショウも霜の洗礼を受けて真っ白だ】

ふと気付くと時間とともに池塘周りを白く縁取っていた朝の霜も徐々に溶け,いつもの風景に戻ってくる。遅霜がたっぷり降りた湿原,モルゲンロートの尾瀬ヶ原,雪解け水をたっぷりと湛えた池塘・・・ どれも魅力的だが,薄い雲が上空を覆い,湿原の輝きが失せる時間帯もある。その時間帯は光を待って撮影を再開するなど時間的なロスも多い。時間とともに条件は悪くなる一方なので気持ちは焦るが,撮影はなかなか思うように進まない。

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【上空から見た上田代。湿原の雪は本当に少なくなってしまった・・・】

この時期,この時間帯は何処をどのように撮影するのが良いか,空撮に関しては特に未知数で試行錯誤の連続だ。思うような画像が1回で撮れた試しはなく,何度も同じような撮影を繰り返すばかりである。とりあえず,バッテリーを1本残して空撮を終え,カメラを抱えて湿原を歩き回る。既に霜はほとんど溶け,山かげにその名残を残すのみであるが,その霜の中にたくさんの小さなミズバショウが寒そうに健気に咲いていた。

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【下の大堀の定番ポイントのミズバショウもかなり咲き出した】

霜もほとんど消えてしまったので,のんびりと朝食をとってから,長沢周辺だけではなく,下の大堀,ヨシッポリ田代などミズバショウが早くから群落を作る場所にも足を伸ばした。どこも既にミズバショウが小さいけれどたくさんの花を咲かせ,見頃を迎えようとしていた。雪解けだけでなく,花の開花も例年よりも確実に早まっている。
その後は,行き交う人も少ない尾瀬ヶ原を温かい日差しに照らされ,梅雨入り前の貴重な晴天の一日尾瀬ヶ原の散策を楽しみながら,ゆっくりと山の鼻経由で鳩待峠に向かった。

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【ヨシッポリ田代にたくさん咲いたミズバショウが迎えてくれた】

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【帰り道ではイワナシも咲いていました。こんな時期に咲くなんて・・・】

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです

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本格的な春へのプロローグ【1】 [尾瀬ケ原]

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【下の大堀,定番ポイントでのミズバショウと”燧ヶ岳”】

5月11日(曇り時々晴れ)
山小屋でも様々な対応を強いられながらも営業を始めた。尾瀬の山小屋から感染者を出すわけにはいかないが,自粛ばかりでは山小屋の存在自体が危ぶまれる事態になりかねない。栃木県は緊急事態宣言もまん延防止等重点措置の対象からも外れているので,自分でもコロナ対策には十分留意して出かけることにした。

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【終わりかけていた上田代の尾瀬ヶ原湖,それでも池塘の水量は豊富】

前回の尾瀬から2週間。既に尾瀬ヶ原の雪は消え,木道はほとんど出ているという。尾瀬ヶ原・上田代周辺の雪解けが進むと気になるのが短い期間現れる「尾瀬ヶ原湖」であるが,それさえも既に見頃は過ぎたようだ。前回の残雪の状態から,見頃は一週間~10日後位かと思っていたが,天候を見極めているうちに見頃を逃してしまったようだ。それでも,雪解け水溢れる尾瀬ヶ原をのんびりと歩きたい・・・。

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【残雪がほとんど消えた尾瀬ヶ原】

天気の回復が遅れ,朝のうちは天気も良くないようなので,ゆっくり休んでから出発。日光を越え,片品村に着いてもどんよりとした雲が上空を支配したままだ。
天気が良くなる気配もなかったので帰ろうかとも思ったが,せっかく来たのだからと気を取り直して鳩待峠へ。

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【緑の湿原へと生まれ変わるにはそんなに時間はかからない・・・】

至仏山が登山禁止期間に入る前では考えられないことだが,9時を過ぎているというのに鳩待峠駐車場は満車にならないばかりか,10台程度の車が止まっているだけだった。人の往来もほとんどなく,スキー・スノボの登山者で賑わっていた前回からは想像できない静けさだ。

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【林内の根明けも徐々に大きくなり,残雪もかなり減少した】

山の鼻に向かう道の雪も鳩待峠から下るに従って徐々に少なくなり,山の鼻に着く頃にはネットの情報通り,木道の雪はほとんど消えていた。山小屋周辺に残った雪を除雪するスタッフの声が辺りに響く。閑散とした山の鼻は静かに時が流れていた。ミズバショウシーズン前のエアポケットのような時期ではあるが,やはりコロナの影響は大きいと言わざるを得ない。

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【水バショウ。雪解け水に浸かって気持ちよさそうです・・・】

流れゆく雲の隙間から時折陽は射すが,長時間分厚い雲が上空を覆う。さらに,至仏山や燧ヶ岳の山頂が雲に隠れて見えないことも今ひとつ気持ちが盛り上がらない理由だ。こんな時は空撮しても面白くないので,上田代の逆さ燧のベンチに重い荷物を下ろし,昼食をとることにした。温かなしっとりとした空気に包まれ,遠くで響く鳥の声に耳を傾け,風に乗って運ばれてくる雪解け後の湿原の空気を吸いながらのんびりと昼食をとっていると徐々に気持ちも安らぐ。やはり,来て良かった。

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【ワタスゲの花もあちこちで見かけました】

そんな気持ちを映し出すかのように,空も急速に明るくなってくる。やっとドローンが飛ばせるな・・・念願の空撮を済ませた後は中田代に向かう。下の大堀の撮影ポイントは,小さめのミズバショウがたくさん咲いていた。少雪だった上に気温が高く,雪解けが早かった分,今年も季節の移ろいは前倒しだ。いい具合に雲も減ってきたので,ここで本日2回目の空撮。絵に描いたような雲を背景に,定番写真の反対側にある「燧とミズバショウの群落」の写真を撮影。ドローンならではの1枚である。

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【木道の間に守られるように咲くリュウキンカ】

一時は回復傾向であった天候も,また雲が優勢となったため早めに今日の宿「燧小屋」にチェックインし,バッテリーの充電等をしているとポツポツと雨が落ちてきた。早めに小屋に入って正解だった。本日の宿泊者は自分を含め5名。午後5時30分に早々と夕食を済ませ,入浴して部屋で寛いでいると空が急速に色づいてきた。久しぶりに尾瀬で見る夕焼けである。

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【六兵衛掘のザゼンソウも顔を出していました】

カメラを抱えて弥四郎小屋の先まで急ぐ。夕焼けだけでは絵にならないし,池塘とかもないしなぁと四苦八苦しながら撮影を済ませる。すると,傍らでドローンを飛ばす2人が。聞くと「シカの食害調査」だという。この時間帯に? FISSに登録してあったかなぁ・・・
いつしか至仏山や燧ヶ岳の上空にあった雲はほとんどとれ,澄み渡った空が一面に広がっていた。明日の朝は冷えそうだ・・・。小屋に戻って早々に休むことにした。

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【小屋で寛いでいたら空が急に色づいてきました】

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雪解け進む尾瀬ヶ原【2】 [尾瀬ケ原]

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【朝陽に染まる残雪の上田代】

 自分以外に宿泊者もなく,見晴地区でもう一つ開いている檜枝岐小屋にも数名の宿泊客しかいないため,静寂そのものだった尾瀬。春スキー客で賑わう山の鼻地区とは違い,尾瀬を満喫するには十分すぎるくらいだった。下田代の雪解けは尾瀬ケ原の中では比較的遅いほうであるため,この周辺では被写体探しに苦労するので朝弁当を頼んでおいて早めに小屋を後にした。雲一つない青紫の空に浮かぶ大きな月を見ながら中田代に向かう。

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【モルゲンロートに輝く至仏山】

 ライトこそいらない明るさだが,誰一人歩いていないし,鳥のさえずりが聞こえるようになるまでにはまだ少し早い季節である。聞こえるのは,堅い残雪を踏みしめる自分の足音だけだ。放射冷却で冷え切った湿原の雪は良く締まり,アイゼンがよく効く。

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【朝の光がやっと自分のいるところまで届きました】

 真ん丸の月が低くなるにつれ,ビーナスの帯がゆっくりと降りてきて,至仏山頂に赤い火が灯る。山頂に点火された火はみるみると山裾に向かってその範囲を広げる。気持ちも焦り,急ぎ足になるがなかなか良さそうな場所が見つからない。そうこうしているうちに朝の光が周囲を包み込む。ほどよい場所を見つけて,慌ただしく荷物を下ろして撮影準備に取りかかり,待ちかねたドローンを離陸させた。

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【上田代上空から見る日の出】

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【拠水林の中にも朝の光が届きます】

 上空から見る朝陽に染まる残雪の尾瀬ヶ原。今年は明らかに例年よりも雪解けは早く,池塘や雪原も多彩な表情を見せている。特に池塘はその水温の違いが影響しているのか溶け方も様々だ。単に真っ白な雪原だとやや面白みに欠けるが,これくらい変化があると楽しい。ついつい興味が先走り,動画を撮影していることを忘れて操作してしまうことも。

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【残雪が溶け芽吹きが始まったばかりですが遅霜で真っ白に】

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【やはりまだ早春。冬がちょっぴり同居しているんですね】

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【早めに顔を出したミズバショウの苞も茶色に変わってしまいそうです】

 陽が昇ると,地上でもあちこちでドラマが繰り広げられている。放射冷却で相当冷え込み気温は-5℃。春を待ちかねて早々に地上に現したミズバショウの花や灌木を縁取る霜が朝陽を受けてきらきらと輝き出す。ドローンでの撮影をしながらもこうした宝石のように煌めく一瞬も記録しておきたくて,コンデジでの撮影も並行して行う。慌ただしく時が過ぎ,日差しに暖かさが戻り,何事もなかったかのようにいつもの光景に戻っていく。

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【日が高くなると急激に温度が上がり,雪解けも進みます】

 撮影も一段落してから,昨日は人影もなかった龍宮小屋に立ち寄る。入り口の戸を開けると中から懐かしい顔が出迎えてくれた。小屋主さんは所用で今日上山してくるそうだ。帰る途中,何処かで会えるかも・・・

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【上田代の雪解けも急ピッチで進んでいます】

龍宮小屋を後にして山の鼻に向かうが誰一人とも会うこともなかった。本当に人がいないのか,広い尾瀬ヶ原のあちこちに分散しているのか,時間が早いからなのか? とにかくこの時期の入山者の目当ては春スキーと百名山の景鶴山登山の人が大多数なのかも知れない。

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【下の池塘は,微生物のミドリムシのようにも見えます】

 ゆっくり残雪の反射する光溢れる,雲一つない尾瀬ヶ原を散策したり,ドローンでの撮影をしながら山の鼻に向かっていたら声をかける人がいた。誰だろうと思っていたら龍宮小屋の小屋主さんだった。1年ぶりの再会だったので,その場で暫く談笑して別れた。今年は限定的ながらも営業してくれるのはありがたい。
最後はバテバテになりながら鳩待峠に着く。西日に銀色に輝く至仏山の雪面には,スキーヤーのシュプールが多数刻まれていた。

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【至仏山に刻まれたシュプール。これも春の風物詩だろう】
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雪解け進む尾瀬ヶ原【1】 [尾瀬ケ原]

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【上空を激しく雲が行き交い,面白い風景を見せてくれた】

 観測史上最も早いサクラの開花宣言が全国各地で続出した今年は,尾瀬でも温暖化と少雪の影響で雪解けもかなり進んでいるようだが,出かける前日に低気圧が通過し,僅かだが尾瀬は積雪したようだ。冬用タイヤも外してしまい,不安もあったので明るくなってから出かけた。

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【除雪した雪が積み上げられた鳩待峠。シラカバと樹間越しに見える至仏山の残雪が眩しい】

 鳩待峠の駐車場には午前8時頃に着いたが,ほぼ満車状態。平日にも関わらずかなりの賑わいだ。登山者の多くは至仏山で春スキーを楽しむためにやって来たスキーヤーやスノーボーダーである。雲一つない晴天だが,前日の低気圧の影響か猛烈な風が吹いていた。ドローンでの撮影を考えていたので,至仏山に向かう選択肢は消えた。たくさんの人が至仏山を目指す中,山の鼻に向かう。

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【熊棚。木の葉が落ちてしまったためその所在が明らかに。】

 雪が少なめとは言っても山の鼻への木道はほとんど雪の下。完全な雪道の方が踏み外す心配もないし,木道よりも寧ろ歩きやすいくらいだが急峻な場所もあるのでアイゼンを着ける。慣れないせいかアイゼンの爪を引っかけて転びそうになることも何度か・・・。静かな山の鼻に着いた。

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【ほんの一瞬だけ姿を見せてくれた燧ヶ岳山頂】

 相変わらず風は強く,冷たい。その風に乗って風花が飛んできたかと思うと時間とともにその量が増え,遠くに見えるはずの燧ヶ岳も霞んでしまうほどだ。強い風に運ばれた雲が日差しを遮ると一気に寒くなる。家で緩い生活に慣れてしまった体にはかなり堪えた。この強風では楽しみにしていたドローンでの空撮もままならない。

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【フォトジェニックな雲が行き交います】

 今日は,見晴まで歩くだけなので,ロケハンをかねてあちこちふらふらと雪原を歩き回る。雪の中から顔を覗かせたベンチに腰を下ろして,のんびりと昼食をとる頃には,風も一時よりも収まっていた。しかし,燧ヶ岳の山頂はいつになっても雲に隠れたままだ。上空ではいろいろな形の雲が次々と現れては移動していくが,雪原に落ちたその影が忙しそうに移動するのを見ているだけでも退屈しない。

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【上空からの残雪の尾瀬ヶ原。今年は雪解けが早そう・・・】

 上田代周辺の池塘も既に姿を現しているところもあるなど,今年の残雪は情報通りかなり少なめだ。尾瀬ヶ原を西から東に移動するにつれ,その雪の量はさらに少なくなっていき,下の大堀橋から龍宮小屋間は,ほぼ完全に木道が出ていた。風も収まってきたので,空撮も何度か楽しみながら今日の宿「燧小屋」に向かう。

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【拠水林の葉が落ちてヨッピ川の流れがよく見えます】

小屋で受付を済ませたあとは,必要な物だけを持って,夕食まで小屋周辺を歩く。既に風はおさまり雲もかなり少なくなった。天気予報も明日の晴天と冷え込みを伝えていた。今日の宿泊客はただ一人。何度も尾瀬に通ったが初めての経験だ。(゜Д゜)
やることもないし,長時間の慣れない雪歩きと眠さで早々に就寝。明日に備える。

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【景鶴山とヨッピ川】

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【水量豊富な平滑の滝】

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眠りにつく尾瀬 [尾瀬ケ原]

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【すっかり雪に覆われた尾瀬ヶ原。この雪が根雪になることはないのだろう・・・】

11月5日【曇りのち晴れ】 
尾瀬の入山口,鳩待峠,大清水,沼山峠に通じる道もいよいよ閉鎖となる前日,尾瀬に久しぶりに大量の雪が降った。ここ数年,温暖化の影響からか新雪に覆われた尾瀬ヶ原の様子を見る機会は極めて少ない。せっかくの機会なので行ける時に行っておこうと急遽,鳩待峠に向かった。

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【雪晴れの登山道。すっかり葉が落ち明るくなった林内を歩く】

紅葉も終盤を迎えた奥日光も混雑からは解放され,気持ちよく車を走らせていると車道に大きな鹿が現れた。それも大きく立派な角を携えた雄鹿だ。こんな角で突かれたら車に大穴を開けられかねない。機嫌を損ねないようにスピードを落として慎重に車を走らせる・・・。しかし,暫く走っていると,次から次へと同じような雄鹿が現れる。全部で10匹近くはいただろう。さらにはカモシカまで現れた。鹿のサファリパークにでも迷い込んだか・・・

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【山の鼻ももうすぐ。見慣れた風景も雪に覆われて一変・・・】

最後に真打ち「熊」との遭遇もあり得るな・・・。今までにないくらいの数の野生動物の出迎えを受け,鳩待峠に着く頃には,気持ちもやや後ろ向きになっていた。
駐車場には以前から駐めてあったと思われる分厚い雪に覆われた車が数台,今日到着したと思われる車が2台寂しげに駐まっていた。

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【ふわふわの雪が湿原を覆う。池塘も場所によって表情が異なる】

準備だけは整え,鳩待峠休憩所に向かう。至仏山頂は雲に覆われ,晴れる気配はない。GPVでは昼頃から完全に晴れる予報にはなっているが,のんびりとそれを待つ余裕はない。今日は,午後2時までに戸倉に戻らなければ,道路が冬季閉鎖されてしまうのだ。

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【雪晴れの湿原。燧ヶ岳がなかなか山頂を見せてくれません】

鳩待峠からの様子を撮影していると,突然,峠まで数台の車が上ってきて,中から多くの人が降り立った。ビジターセンターの閉所作業をするのだという。その一団は,慌ただしく山の鼻に向かっていった。その人たちの後を追うように登山道に積もった雪を踏みしめながら歩き始める。前回とは明らかにその量が違う。優に15~20cmは積もっていただろうか。一人でラッセルするとなると厄介だが,先行者があったのでその苦労は軽減された。

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【氷で閉ざされた池塘のヒツジグサの上に雪が降り積もる】

すっかり葉を落とし,光溢れる林内には,昨日降った純白の雪が降り積もり,木漏れ日を眩しく反射させている。雪晴れの気持ちの良い林内をゆっくりと進む。前回たくさん見かけた熊の足跡もほとんどないが,油断は禁物。イヨドマリ沢周辺には,あちこちに熊の足跡があった。まだ冬眠はしていないようだ。

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【葉が落ち,林内が見渡せるようになった拠水林。川の流れも見えます】

先ほどの人たちが山の鼻で慌ただしく閉所作業をするのを横目に上田代に向かう。その先は,2~3名の踏み跡だけとなり,ふわふわで歩きにくい雪を踏み外さないように慎重に歩く。人のほとんどいない最終日に,高架になった木道から落ちて怪我する事態だけは避けたい・・・。激しく雲が行き交い,時々青空が空を横切ると,真っ白な雪原に落ちたスポットライトが雪原を行き来する。尾瀬のシーズン中に真新しい霜や雪と遭遇することが少なくなり,こんな雪の日ならではの光景を実際に尾瀬ヶ原で目にしたのは本当に久しぶりである。この雪は果たして根雪となって来シーズンまで残るのだろうか・・・上田代の逆さ燧のベンチ付近まで行き,折り返す。


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【湿原の白と池塘の黒。色の対比が面白い】

だんだん,天候は回復していたが,最後まで燧ヶ岳や至仏山の山頂は見ることができなかった。しかし,最後の最後に振り返ると,その時だけ燧ヶ岳の山頂が姿を現してくれた。燧ヶ岳に今年最後の挨拶をして帰路につく。

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【豪華絢爛,錦秋の尾瀬から僅か半月でモノクロの尾瀬へ。その変化は劇的です】

やはり,尾瀬最終日。しかも,平日でもあり一般の登山者と会ったのは10名程度だ。あとは尾瀬関係者ばかりである。帰り道,木道工事をしていた人に話を聞くと,木道工事は道路が冬季閉鎖になっても終わるまで続けるらしい。ビジターセンターの片付けも終わったようで山の鼻は物音一つしない静かな初冬の尾瀬に戻っていた・・・。尾瀬には半年ぶりの静寂が訪れ,長い眠りにつくのだろう・・・。

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【ドローンで間近から見た小至仏山】

すっかり天候も回復し,新雪を纏った至仏山がどっしりと見守る鳩待峠に着いたのは午後1時。冬季閉鎖には何とか間に合うだろう。最後に空撮をして尾瀬の地を後にした。

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【新雪に覆われた尾瀬を望む。燧ヶ岳はまた雲に隠れてしまった・・・】
※空撮に当たっては,国交省DIPS・FISS登録,関係機関への連絡調整済みです。
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新雪に包まれた尾瀬ヶ原 [尾瀬ケ原]

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【朝日を浴びて輝く新雪と樹氷(猫又川上流,柳平付近)】

尾瀬の全ての山小屋は今年の営業を終え,尾瀬の入山口に続く道路も間もなく閉鎖となる。
新型コロナウィルスの対応に追われ,未だ嘗て経験したことのない今年の尾瀬のシーズンも間もなく終わろうとしているが,最後ぐらいはいつものように新雪に包まれた尾瀬を見て終わりにしたいと思っていた。

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【研究見本園の北側にある大白沢山と猫又川源流】

願いが通じたのか,週末は降雪直後に晴れるとの予報になった。
冬用タイヤに履き替え準備万端その日を待ち,降ったばかりの雪に逢いたくて深夜に車を走らせた。津奈木橋を越えた辺りから道路の一部が凍結していた。駐車場には30台程度の車が既に駐まっているが,皆仮眠中なのだろうか,乾いた空を吹き抜ける強い風の音が響き,上空には今月2度目という満月が煌々と輝いていた。

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【朝の光に染まる至仏山中腹】

少し休憩してから鳩待峠休憩所に向かう。風も強くドローンでの空撮はできそうになかったので,至仏山は諦めて尾瀬ケ原に向かうことにした。ただ,鳩待峠でさえ積雪はわずか数センチしかなく,尾瀬ケ原はそれほど積雪していないのではないかとの心配がよぎる。

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【徐々に青空のエリアが広がってきました】

林内に入ると,ふんわりと新雪が降り積もった木道には,数分前につけられたような生々しい熊の足跡が延々と続いていた。木道の先に,突然その足跡の主が現れてもおかしくはない状況に緊張感でいっぱいになる。いつもはザックに取り付けている鈴を手にしっかりと持ち,音を出しながら進むが生きた心地がしない。朝夕の薄明の時間帯は最も危ない。山の鼻までの道がとてもとても長く感じられたが,何とか無事に到着。ホッと胸をなで下ろす。

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【青空を背景に輝く至仏山の新雪】

見本園から光景は,出発時とは明らかに様子が異なり,燧ヶ岳や至仏山の頂は雲に隠れ,モルゲンロートに染まった雲が僅かに行き来しているだけだ。この付近だけ天候の回復が遅れているのだろうか。一瞬だけ至仏山頂が顔を出したり,雲の隙間から零れた光が降ったばかりの新雪や樹氷を照らしたりする時間はあるものの,上空はほとんど低い雲に覆われている。気温は-5℃。風も冷たい。

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【この頃はまだ雪も溶けずに残っていたのですが,肝心の光が・・・】

研究見本園で僅かの晴れ間を捉えて写真を撮ったり,空撮したりしてから上田代に移動する。上田代のベンチに荷物を下ろして天候の回復を待つが,一向に良くなる気配もなく,時間ばかりが空しく過ぎる。紅葉のシーズンは過ぎたとはいえ,今日は週末。8時頃になるとたくさんのハイカーが次々にやって来た,木道工事の音も遠く響く。

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【ヒツジグサを閉じ込める氷が江戸切子のように綺麗でした】

朝食をとっている時間にも刻々と風景が変わる。湿原の灌木や草に僅かに付いていた霜が溶け,降り積もった雪がどんどん溶けていく。朝日に輝く霜や新雪の光景が見たかったが太陽は雲に隠れたままだ。しかし,時間とともに上空の雲は明らかに動きが激しくなり,時折,湿原に光を落とすようになる。思い描いていたような光景とは異なるが,重い腰を上げ,あちこち歩き回ってシャッターを切る。雲の中に隠れていた至仏山,燧ヶ岳そして景鶴山も徐々に姿を現した。

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【新雪を纏ったヒロハツリバナ】

そこからの変化は急激だった。あっという間に雲がとれ,湿原を覆っていたはずの新雪もほとんど消えてしまった。ピーカンの青空と乾いた湿原,拠水林に点在するカラマツの黄葉。遠くには冠雪した尾瀬の山々。まさに初冬から晩秋の尾瀬に逆戻りしたかのような劇的な変化だった。雪がかなり降って翌日も残るようなら戸倉でもう一泊する予定だったが,雪が完全に消えてしまったことで一気に気持ちも萎み,このまま日帰りすることにした。

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【最後まで雲に覆われていた景鶴山もやっと姿を現してくれました】

そんな光景の中田代を散策後,上田代に戻ってベンチで寛いでいると,尾瀬仲間のてばまるさん,horiguchiさんがやって来た。今年はコロナ禍のため入山自粛要請があったり,オフ会も中止になったりで尾瀬仲間に会う機会もほとんどなかったが最後に漸く会うことができた。談笑後,中田代を散策してから戻るという二人を見送り,残雪の残る道をゆるゆると登って鳩待峠に戻る。
二人が到着するのを待ち,下山後は三人で龍宮小屋の小屋主さん宅を訪問。一年ぶりの再会でたくさん話もしたかったが,バスの時間もあるので来年,龍宮小屋での再会を約束して帰宅した。何とか新雪を見ることができたし,最後に尾瀬仲間にも会えたし,充実した一日だった。

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【カラマツの黄葉が綺麗な上田代。朝の雪は一体どこへ・・・】


※空撮に当たっては,国交省DIPS・FISS登録,関係機関への連絡調整済みです。
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尾瀬清秋【3】尾瀬ケ原編 [尾瀬ケ原]

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【雨上がりの尾瀬ヶ原。長い間霧が流れしっとりとした空気に包まれてていた】

■10月15日(木) 曇り時々晴れ
酔いのせいか,疲れのせいか分からないがよく寝た。尾瀬に来た時の方が,家で眠るよりも睡眠時間がとれている。眠りが浅くなった時に聞こえるのは,窓の外に響く激しい雨の音。星の写真を撮影するには条件的には良い日だったが,そんなチャンスは全くなかった。

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【雨に濡れ,紅黄葉もその色の深みを増す】

山の鼻小屋の部屋は今回は「ワタスゲ」。かの写真家,某先生がよく宿泊されていた部屋である。ちょっと狭いが部屋の2面に窓があり,外の様子を確認するには都合がいい。朝起きて窓を開けると,ヒンヤリと湿った空気が室内に流れ込む。雨はやんだものの湿原には霧が流れ,まだ眠たげだ・・・。
館内放送に急かされ,食事を済ませる。早々に出発準備を済ませるが,今日はどうしよう?

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【霧も上がり,やがて雲間から光が漏れる天候に変わった】

一日曇りだろうし,ぱっとしない天候だったら,早々に引き上げるつもりだったが,荷物を一式持って上田代まで散歩することにした。普段は時間に追われたり,写真を撮りまくったりと,ゆっくりと落ち着いて尾瀬の中で過ごすことも少なかったのでベンチに荷物を下ろしぼんやり過ごした。”色づく山のもみじを この先一体 何度 見ることになるのだろう・・・”ふと,竹内まりやの「人生の扉」の歌詞が頭をよぎる・・・。

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【紅黄葉も,太陽の光を浴び,乾いた秋の風に吹かれて気持ちよさそうだ】

改めて,こんな素晴らしい光景の中に身を置き,のんびりと過ごすのはなんと贅沢な時間だと思った。
霧に包まれた湿原を時折通り過ぎるのは木道工事の人たちか? やがて,その霧もだんだん晴れ,周りの風景がはっきりと見渡せる。今まさに見頃を迎えた紅葉に染まった木々に包まれた湿原。この素晴らしい光景を目に焼き付け,写真に収めて山の鼻に戻る。

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【こうした表情が見ることができるのは,本当に限られた時間なのだと改めて実感した】

やはり紅葉のベストシーズンとあって,至仏山荘前のベンチは少しだけ賑わっていた。徐々に天候も回復傾向にあったので,お茶などを飲みながら過ごしていると,やがて雲間から光が降り注ぐようになった。ダケカンバやブナの木々を照らす温かな光に見守られながら,ゆっくりと鳩待峠に向かった。

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【紅葉に包まれた綺麗な山道を周囲の様子を確かめながら鳩待峠へと戻る


鳩待峠から戸倉のバス連絡所までジャンボタクシーでその後バスに乗り換えて・・・と思っていたが,大清水行きの最終バスは数分前に出てしまうというハプニングもあった。しかし,そのジャンボタクシーの運転手が直ぐに大清水に向かってくれ,事なきを得た。
今回も一ノ瀬・三平峠,御池周辺の最盛期の紅葉を見ることもでき,心に残る尾瀬となった。
【ドローンでの空撮に当たっては国交省DIPS・FISS登録,関係機関への連絡調整済みです。】

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【今回見つけたツルコケモモの実】

■蛇足ですが・・・
竹内まりやの「人生の扉」へのリンクを参考までに載せておきますので,ぜひ聞いてください。心に染みる素敵な歌です。
https://www.youtube.com/watch?v=GBJuRfQPdZM

(英語部分の訳:Yahoo知恵袋より)
I say fun to be 20
You say it's great to be 30
And they say it's lovely to be 40
Bue feel it's nice to be 50
私は言うの、「20歳になるのはたのしいこと」
あなたは言うの、「30歳になるのはすばらしいこと」
そして、みんなは言うわ、「40歳になるのは素敵なこと」
でも、50歳になるのもいいなって感じるわ

I say it's fine to be 60
You say it's alright to be 70
And they say still good to be 80
But I'll maybe live over 90
私は言うの、「60歳になるのもいいんじゃない」
あなたは言うの、「70歳になるのも悪くはないわ」
そしてみんなは言うわ、「80歳だってまだまだ大丈夫よ」
でも、私は90歳過ぎまで生きると思うわ

I say it's sad to get weak
You say it's hard to get older
And they say that life has no meaning
But I still believe it's worth living
But I still believe it's worth living
私は言うの、「弱るのは(老いるのは)悲しいこと」
あなたは言うの、「老いていくってつらいこと」
そしてみんなは言うの、「人生に意味はない」って
でも、私は信じてる、生きるってすばらしいこと(価値があること)
でも、私は信じてる、生きるってすばらしいこと

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【辛うじて残っていたナナカマドの紅葉】
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