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有馬雅美写真展「尾瀬夢幻 Ver.1.2」(宇都宮巡回展)の御案内 [尾瀬ケ原]

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 有馬雅美写真展「尾瀬夢幻 Ver.1.2 ~水が織りなす美しき世界~」を以下の日程で開催いたします。

 この写真展は,'23.1.27-2.2「富士フイルムフォトサロン 東京」で,また,'23.4.21-4.26「高崎シティギャラリー」で開催した写真展で展示した作品に,新たに8点ほど追加・入れ替えを行い,合計59点の作品を展示する予定です。
 お忙しいことと存じますが,是非とも御高覧を賜りますよう,謹んでお願い申し上げます。皆様のお越しを心よりお待ちしております。

【日 時】2024年3月2日(土)~3月10日(日) 10:00~18:00
    ( 最終日は16:00まで,入館は終了10分前まで )
【場 所】栃木県総合文化センター 第1ギャラリー
    ( JR宇都宮駅バスで「県庁前」下車・徒歩3分,東武宇都宮駅から徒歩10分 )
【作 品】B0/全倍/全紙,カラー,59点
【入場料】無料

■栃木県総合文化センターでの写真展(今回)のお知らせ
http://www.arima.jp/new/utsunomiya.pdf
■フジフイルムスクエア公式サイト
https://fujifilmsquare.jp/exhibition/230127_02.html
■写真集「尾瀬夢幻 ~水が織りなす美しき世界~」(日本写真企画) 先行販売中
http://www.arima.jp/syashinsyu.htm
【ISBN】978-4-86562-141-9
A4ヨコ/100ページ/オールカラー/上製本/定価3300円(税込)
全国有名書店・ネット書店にて取扱中

#尾瀬夢幻 #有馬雅美
#富士フイルムフォトサロン #高崎シティギャラリー #栃木県総合文化センター
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■初雪と晩秋の尾瀬[3] [尾瀬ケ原]

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【なかなかスッキリしない天候でしたが,徐々に陽が射す展開に・・・】

□10月23日(月)晴れのち曇り 25,232歩

 山に入り3日目にもなると,よほど体が疲れている時は別だが,目覚ましを掛けなくても起きたい時間に自然に目が覚めるようになる。5時に目が覚め,部屋から尾瀬ヶ原を望むと,分厚い雲が尾瀬ヶ原に蓋をしていた。霜も霧もなくひっそりとした朝だった。これでは,イマイチやる気が起きず,そのままもう一度,布団の中に潜り込んだ。

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【待っていた一瞬。スポットライトと背景の影の具合が思い通りになってくれました】

 布団の中で少し微睡んでから洗面所に向かおうとすると何と目の前にKさんがいた。先週,尾瀬沼でもお目にかかったばかりだが,今回は,見晴休憩所やトイレ等の施設の閉所作業で来ているということだった。夕食の時,明らかに登山者とは違う10人ぐらいの団体がおり,その中にKさんもいたようだが気付かなかった。先週の御礼と挨拶をしてから,燧小屋を後にした。

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【紅葉の森の奥に僅かに顔を見せる雪を纏った景鶴山】

 天気予報では,昼頃には晴れになるが一日曇りの予報となっていた。どん曇りならそのまま真っ直ぐ帰るつもりでいたが,湿原に出る頃には北側の山並みにスポットライトが当たるフォトジェニックな状況になっていた。何枚か写真を撮った後,予定を東電小屋経由に変え,赤田代方面に向かった。その後も,薄い雲の間から青い空が見え隠れしていたので,ひょっとすると意外に早く天候が回復するかも知れないと感じた。

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【積雪から一日経ち,一番雪を残す至仏山と拠水林】

 しかし,流石にこの時期にこのルートを歩く登山者は誰一人なく,寂しいルートをただ一人歩くのは,やはり心細い。今年は熊の被害も多いと聞くし・・・。森に入るとたくさんの枯葉が木道を覆い隠していた。落ち葉の下は濡れ,その上に雪まで積もっているので非常に滑りやすい。何とか転倒せずに東電小屋に着き,そこのベンチで朝食にした。のんびりとおにぎりを頬張っていると,やがて,スポットライトがヨシッポリ田代を照らし始めた。願ったり叶ったり・・・。

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【すっかり葉を落とした樹とまだ紅葉の気が混在する晩秋の森】

 誰一人いない寂しい東電小屋を後にする頃には,空を覆っていた雲は,掃き清められて青い空が優勢となり,絹雲が秋らしさを演出し始めていた。今回は,橋板も外され雪で滑りやすくなった下の大堀川橋を渡る自信はなかったので,龍宮十字路経由で山の鼻に向かうことにした。この日は,多分飛ばすことはないと思っていたドローンも好天につられて2回ほど尾瀬の空を飛んだ。思いの外,雪が溶けるのが早く残雪の尾瀬ヶ原を思う存分空撮することはできなかったが,紅葉のシーズンもそろそろ終わる尾瀬ヶ原の様子を撮影することができた。

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【秋らしい雲が定番ポイントの上空に現れました】

 山の鼻に向かって歩いていると,平日にも関わらず次々に人がやってくる。30人以上の人とすれ違っただろうか。中には軽装の外国人もいた。山の鼻では,唯一山の鼻小屋が小屋閉めの作業を黙々とこなしていた。だんだんと雲が優勢になる中,今年最後の尾瀬を後にした。
今回は,久しぶりに山小屋に宿泊して初雪が見れたこと,久しぶりに尾瀬仲間と歓談できたことなど充実した尾瀬締めとなった。

晩秋の尾瀬ヶ原上空から・・・ - Spherical Image - RICOH THETA


【空撮で撮った晩秋の尾瀬のぐるり360度画像です】
*空撮にあたっては,DIPS2.0での各種登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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■初雪と晩秋の尾瀬[2] [尾瀬ケ原]

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【長沢入り口付近。降ったばかりの雪が一面に付着して神々しい感じがします】

□10月22日(日)雪のち快晴 27,536歩
 初雪なのでそれほど積雪することはないのかなと思っていたが,部屋の窓を開け確認すると予想以上の積雪だ。5cm程度はあったろう。早速,カメラを持ち出して辺りを撮影する。当初の予報では明け方までに雪は止み午前中に晴れる予報なのだが,朝になっても激しく雪が舞っていた。朝陽に輝く新雪の尾瀬を空撮したかったが今回はお預けとなった。樹木にもたくさん着雪があったが,踏み締める雪は大量に水分を含んだ湿雪で重そうな雪だった。降っている傍から,樹木に付いた雪がどんどん落ちていく。小屋の周辺を撮影してから朝食にした。

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【雪は降り続いているものの,薄い雲の切れ間から光が漏れる時も・・・】

 今回は昼弁当を頼んでおいて,それを朝食にするつもりでいたが,急遽無理を言って朝食を追加する形となったが,快く応じて頂いたので温かい朝食を三人で戴くことが出来た。外の様子が劇的に変化する様子ではなさそうなので,朝食も比較的ゆっくりととることができた。着替え等の荷物は小屋に預け,撮影機材をリュックに詰め,小屋周辺から撮影することにした。相変わらず細雪が降り続けているが,雲の薄い部分が明るく輝く。

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【湿雪なので降雪中も積雪は時間と共に徐々に溶け出していきます】

 雪が止むのを待って空撮をしたかったが,なかなか雪は止むことは無く,ジリジリと気持ちばかりが焦る中,気温も上昇。樹氷のような幻想的な光景も徐々に雪が溶け出し,着雪していた雪もみるみる落ちていった。湿原に積もっていた真っ白な雪も時間とともに水分を吸い変色し,やがてはベチャベチャの残雪に変わっていく。
このままではあっという間に溶けてしまうと感じ,取り急ぎ上田代付近を撮影することに決めてそちらに向かった。Tさんたちは,ヨッピ橋経由で尾瀬ヶ原の東側を半周したそうだ。

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【山の鼻地区の方が積雪が多かったようで,雪がかなり残っていました】

 上田代に向かって歩いている僅かな時間にも,どんどんと見える風景は変わっていく。後で分かったことだが,今回の積雪は東側よりも西側の方が積雪が多かったようだ。その分,上田代の方がまだ雪が多く残っていたので撮影には好都合だった。雪の下から僅かにその色を見せる紅葉の樹林帯,水温が高いため真っ先に溶ける池塘周辺,時間とともに劇的に変化する湿原の表情を丁寧に記録した。
 上田代に着く頃,ちょうど雪も止み,雲の隙間から時折日差しが漏れるようになったので,やっと念願の空撮を開始した。上空から見る真っ白な上田代。残雪期は湿原のほとんどが残雪に覆われているが,この時期は池塘がまだ氷結してないため黒くなっているのが特徴的である。上田代や牛首上空をぐるぐると何度も旋回したりして約30分の撮影を終えた。

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【晩秋の紅葉に降ったばかりの新雪の組み合わせが美しかったです】

 どんどんと晴れのエリアが広くなり,日差しも強くなってきて加速度的に雪が溶けていく。木道もベチャベチャになり益々歩きにくくなっていた。改めて,元来た道を戻り,変わりゆく初雪の尾瀬ヶ原の変化を追った。写真を撮りながら龍宮小屋に戻る途中,下の大堀の大きな池塘の傍のベンチに荷物を置き,空撮をしている時,Tさんたちと再会。記念撮影したり談笑していると龍宮小屋の小屋閉めの協力でやってきたJさんとも出会い,短い時間だったが話が出来た。そうしているうちに,なかなか姿を現さなかった燧ヶ岳,至仏山,景鶴山の山頂も徐々に姿を現した。

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【上田代に着く頃には青空も見え,光も射し込んできました】

 皆と別れて龍宮に向かって歩いて行くと,みるみる雲はなくなり,湿原内にあんなに豊富にあった雪もほとんど消えてしまった。僅か数時間の劇的な変化にただただ驚くばかり。今朝の光景は夢だったのだろうかと思わせるような変化である。ただ,燧ヶ岳や至仏山の山肌には,まだ真っ白な雪が輝き,あれが夢や幻では無かったことを告げていた。小屋に預けていた荷物を受け取り,ベンチで昼食をとってからゆっくりと見晴に向かい,この日,尾瀬で唯一営業している燧小屋にチェックインした。

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【雪を被った山頂付近と紅葉が残る周囲の山々との色の組み合わせが綺麗でした】

 早々に風呂に浸かって一息ついてから,カメラを持って湿原を歩く。夕陽が傾き,ただでさえ赤い紅葉の燧ヶ岳を一層赤く染め上げていた。空撮するとその夕陽に照らされた樹木の影が長く長く伸びているのが印象的だった。ピーカンの空に日も沈み,撮影するものも無くなったので小屋に戻ると,夕食の時間になっていた。
多すぎるくらいの食事を何とか食べきり,寝る前にもう一度風呂に入って冷えた体を温めて就寝。明日の予報が良い方に外れることを期待して・・・。

*空撮にあたっては,DIPS2.0での各種登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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【赤く染まった尾瀬を夕陽が更に赤く染めてくれました】
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■初雪と晩秋の尾瀬[1] [尾瀬ケ原]

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【雨の中を在るよく覚悟できたのですが,晴れてくれたので助かりました】

□10月21日(土)[午前]曇り時々晴れ,[午後]雨のち雪 17,670歩
 先週末,好天の下,黄葉と紅葉に包まれた綺麗な尾瀬を堪能したものの,本格的な紅葉には早かったしドローンによる空撮も出来なかったことから,紅葉が綺麗なうちにもう一度,尾瀬を訪れたいと思っていた。そこに,週末には寒波が訪れて北関東北部の山岳地では降雪があるとの天気予報がもたらされた。しかも翌日の予報も悪くない。山小屋が営業している期間中に尾瀬に雪が降ったのは10年以上経験がない。週末で混雑するかも知れないが,千載一遇のチャンスとばかりに山小屋に予約を入れた。

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【今週末ぐらいまで持つと思ったのですが・・・ 見頃は数日前のようです】

 降雪直後となる日曜日に入山し,翌日に残雪の尾瀬を撮影するつもりでいたが,土曜日の雪の降り方次第では,津奈木~鳩待峠間の車道が通行止めにならないとは限らない。尾瀬仲間も久しぶりに入山するということだったので,一日早く入山して待機することにした。しかし,太平洋側の気候の日光は好天で,朝早くから紅葉見物の観光客で渋滞するのは確実。渋滞前に日光を通過したいと考えて,いつもと変わらない時間に家を出た。予想通り日光は混雑していたが,何とか渋滞からは逃れることが出来た。あとは今日中に山小屋に着けばいい。

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【テンマ沢付近の紅葉。この辺りはちょうど良い感じでした】

 第一駐車場でタクシーを待っていると何と尾瀬友のTさんと,Hさんが突然目の前に現れた。正に乗合タクシーに荷物を積んで鳩待峠に向かうところだったので,挨拶もそこそこに鳩待峠に向かい,二人が到着するのを待った。それにしても待ち合わせをしたわけではないのに,これほど絶妙のタイミングで会うことが出来てただただビックリした。それほど待たずに二人が到着した。また,ここで久しぶりに鳩待峠で寛ぐ尾瀬仲間のRさんとも出会った。
 昼前後から天候は崩れる予報なので,三人で山の鼻に急ぐ。しかし,天候は崩れるばかりか,寧ろ時折日が射して,一層円熟味を増した紅葉が太陽の光に照らされ森の中を明るく彩っている。ただ予想外だったのは,先週は紅葉には早かったので,今週末ならまだ何とか見れると思っていた紅葉は赤みを増し,ほぼ終わりかけの様相だった。落ちた葉っぱもたくさん木道に散り敷いていた。

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【先週末に比べると,すっかり色は濃くなり,葉を落としてしまった樹も目立ちます】

 山の鼻地区の山小屋はもうすっかり冬支度を終え,雪囲いに囲まれて閑散としていた。一週間前はあんなに華やかな賑わいを見せていたのに信じられない思いだ。唯一営業していた山の鼻小屋で昼食をとることにした。片付けの関係からか簡単なメニューしかなく,この日は三者三様,皆カレーで済ます。いつまでたっても天気の崩れる気配は無かったが,上田代を歩いている頃にぽつりぽつりと降り出した雨が,急に激しくなったので雨具に着替える。
 このところ暫く雨の中を歩く経験をしていないので,雨に濡れた木道は滑りそうで怖い。腰が引けそうになりながらも雨に耐え,ひたすら龍宮小屋に急ぐ。手袋もしていない両手が冷たい。相当冷え込んできているのだろう。このまま雪になってくれるといいのだが・・・,そんな思いで見ていると時折雨の中に白いものが見えたが,霙になったりすることはあっても直ぐ止んでしまい,なかなか本格的な雪に変わることはなかった。

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【上田代を過ぎる辺りから小雨が強く降り出しました・・・ それがやがて霙に】

 龍宮小屋に着くと小屋閉めの手伝いで来ているNさんや例年この時期に宿泊しているTさんらが通りかかり,声をかけてくれた。今日の宿泊客は20名ほど。悪天だからと取りやめるどころか,むしろ雪を期待してそれを楽しみに来たという人ばかりである。ただ,その中に,例年この時期に来て長逗留していた兵庫のTさんやHさんの姿が見えないのは寂しさを感じる。
 部屋にいても寒いしつまらないので,ストーブを取り囲んで集まった人たちと暫く雑談していたが,体も冷えてきたので早々に入浴。予報よりも遅れ気味の雪に,本当に降るのだろうかと不安になりながらも,夕食後もストーブの周りには人だかりができて,外の様子を気にしていた。やがて少し遅れて降り出した雪は,だんだんその勢いを増し,みるみる数センチの積雪となった。これで一安心。明日の早朝は,念願の雪景色と対面できそうである。寝起きに目の前に広がる真っ白な雪景色を夢見て床についた。

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【ついにやって来ました。お待ちかねのものが・・・】
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■錦秋の尾瀬に霜が降る[3] [尾瀬ケ原]

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【一面真っ白な大霜の朝。モノトーンの世界に赤い火が灯る・・・】

□10月14日(土)晴れ 23,888歩
 今朝の好天は部屋の冷え切った空気からも容易に想像できた。今朝も食事は涙をのんで朝弁当にしておいたので,心ゆくまで撮影に専念しよう・・・。小屋を出たのは5時20分を過ぎていた。まだ辺りは暗く,薄明の空にはいくつかの星が瞬いている。三脚なしで撮影できる状態ではないので先を急ぐ。湿原はもちろん拠水林の樹木の先端にまではっきりとした霜が付いている。これは紛れもない大霜だ。深く感謝・・・。シカ柵も漸く除去されたので撮影候補地は増えたが,思い悩んだ末ヨッピ橋方面に向かった。

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【太陽の光は湿原を照らし,凍り付いた世界を一瞬にして溶かし始める】

 朝靄がそれほど出ていない分,冷え込みも昨日以上だ。逆に冷え込みが厳しいから朝靄が湧かないのか,その因果関係はちょっと分からないのだが・・・。(^^ゞ 今朝の気温は昨日よりも更に冷えて-5℃。枯葉に付いた霜も冷やしすぎの冷凍庫についた霜のようにバリバリに尖っている。周りをぐるり見渡せばうっすらと雪が積もったかのように真っ白な光景が広がる。夜明け前の青い光が荘厳な雰囲気を醸し出す。

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【大霜ならでは。湿原の木々や小さな草の先端までとげとげの霜でびっしり】

 やがて,東と南の空に浮かんでいた僅かな雲が,茜色に染まる。それは,時間とともにその濃さを増し,いつしか至仏山頂を照らし始める。至仏山頂に灯った光はなだらかな斜面を駆け下りて湿原までやってくる。モルゲンロートの進捗状況を確認しながら,夏や秋の定番ポイント・イモリ池に向かう。
その光が湿原を照らし始めると湿原の水蒸気が忙しく動き回る。それにつられてあちこちにカメラを向けて忙しくシャッターを切る。まだ気温が高いのでこの光を受けて湿原の草に付いた霜はあっという間に落ちてしまうのでのんびりしていられない。

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【朝の光を浴びて,僅かな空気の流れが起きその揺らめきが霜を輝かせる】

 何処にカメラを向けても絵になるのが,この時間帯だ。いつもなら朝食の時間を気にしたり,ドローンでの撮影に追われたりして,中々撮影できなかった地上からの光景を今回は,怪我の功名でじっくりと撮影できた。久しぶりに一眼レフで撮影する醍醐味を味わった。やはり空撮できないのはどうにも心残りではあるが・・・この時期撮りたかった大霜の光景をここ数年続けて撮影できているが,いつ見ても感動的な光景である。

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【水温お高い池塘からは,もうもうと水蒸気が上がり激しく動き回る】

 大霜に覆われていた湿原や樹林帯が時間と共に元の秋の色に戻っていく。今は正に秋真っ只中なのだ。この紅葉と大霜という組み合わせはなかなか見れるものではない。長かった影も徐々に短くなると,大霜は日陰にだけ取り残される。そうした場所やまだ霜が溶けた水滴の煌めく様子を撮影しながらゆっくりと龍宮小屋に戻る。今日一日分の撮影エネルギーをすっかり使い切った感じで,小屋主さんと談笑して小屋を後にする。「また来年,良いお年を・・・」その年最後となる宿泊時の挨拶に見送られて小屋を後にした。

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【樹木を真っ白に覆っていた大霜がだんだん溶け,元の色が徐々に戻る】

凄いものを見てしまった後は,どんな秋の光景を見ても気持ちは時めかない・・・。乾いた秋風吹き抜ける尾瀬ヶ原を錦に染まる山々に見守られて山の鼻へ。すると,そこで久しぶりに満面の笑みで,いつものドリンクを美味しそうに飲み干すKさんに遭遇した。しばし談笑して山の鼻を後にする。次はいつになるのかな。出来たら来週辺りドローン撮影のリベンジが出来たら良いのだが・・・

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【間もなくピークを迎えようとしている上田代。】

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■錦秋の尾瀬に霜が降る[2] [尾瀬ケ原]

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【まだ水温が高い尾瀬沼から立ち上がる朝靄の中を優雅に泳ぐカモ】

□10月13日(金)晴れ 27,255歩
 撮影地が目と鼻の先にある長蔵小屋は,そんなに早く起きる必要は無いのだけれど,早々に目が覚めてしまったので撮影の準備を済ませて薄暗い小屋の外に出た。空気はヒンヤリと冷え,ビーナスの帯が空と尾瀬沼の水面を華やかな色に染めていた。沼からはもうもうと朝靄が漂う中を多くの水鳥が餌を啄んでいた。元長蔵小屋のテラスで明るくなるのを待っているとカメラを持った人たちが次々とやってきた。

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【雲の切れ間から朝日が射し込んだらしく赤い光は帯状になっていた】

 朝靄に包まれた尾瀬沼の幻想的な光景も暫く見ていたかったが,湿原の様子も気になって大江湿原に移動する。高い樹木の先まで真っ白になる所謂大霜と言えるほどではないが,相当広範囲にわたって霜が降り,赤茶色の草紅葉に染まっていた大江湿原は,まるで雪が降ったかのように真っ白になっていた。木道にも霜が降り滑りやすいので注意しないと・・・。

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【朝靄のベールに包まれたダケカンバ黄葉】

 周りを小高い山に囲まれた盆地のような大江湿原は,日が射し込む時間が遅く,この時期はちょうど朝食の時刻と重なる。寒い朝の暖かい朝食は魅力的だが,泣く泣く朝弁当を頼んでおいた。朝食の時間になり湿原を行き来する人は燧ヶ岳に向かう登山者ぐらいとなり,より撮影に集中できる。

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【僅かな霜が紅葉した小灌木の葉っぱを繊細に縁取る】

 湿原全体がフリーザーの中に入ったような凍てつく朝。気温は-3℃。木道の脇に既に立ち枯れていたミヤマアキノキリンソウや小灌木の小さな葉一つ一つにまで丁寧かつ綺麗な装飾が施され,青白い凜とした湿原の中で花を咲かせたかのように一際注目を浴びている。

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【大江湿原に朝日が射し込む】

 湿原を取り囲む林の上部に日が射し始めると,ダケカンバの黄葉が,ナナカマドやヤマウルシ等の紅葉が,今自分が秋の真っ只中にいる事を実感させる。いつもだと紅葉が終わってから見られるこのような大規模な霜がこの紅葉の時期に見られるのは大変ありがたいことだ。
その光がやがて湿原のシンボルにもなっている三本のカラマツにスポットライトを当てる。そして,程なくしてその光は湿原の上へ。すると僅かな上昇気流を生み,霜を纏う一本一本の草を揺らし,七色に輝く小さな光を四方八方に飛び散らせる。宝石箱に光が当たったかのような美しさだ。
霜が溶けるまでの僅かな時間。時間を忘れて撮影に集中した。この時期の撮影の醍醐味はここにあると言っていい。

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【黄葉した樹間越しに尾瀬沼を望む】

 時間と共にあっという間に霜は溶け,僅かに残った影の部分にその名残を留めるだけとなった。長蔵小屋に戻り,まだチェックアウトの時間前だったので,部屋に戻って朝食をとる。やはり冷たく堅くパサパサの朝弁当は出来れば避けたい・・・。

 宿泊と一年間の御礼を言って小屋を後にする。三条の滝の空撮ができないので燧裏林道を回るのは取りやめて,段小屋坂を経由して見晴に向かうことにした。秋の爽やかな乾いた空気の中,ブナなどの広葉樹の黄色いトンネルの中を時間に追われることなくのんびりと写真撮影をしながら見晴に向かう。ほとんど下りだからと油断して歩いていたら木道の段差に躓いて転倒。縛らず動けず倒れていたら登山者に見られてちょっと恥ずかしい思いをした。

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【一面のブナの万華鏡の中を進む】

 やはり空撮が出来ないのは痛い・・・。こんな日はビールでも煽って・・・と思っていたら尾瀬小屋の生ビールの看板が目に飛び込んできた。あとは,山小屋に向かうだけなのでここでお昼にすることにした。注文は生ビールとスパイシーカレー。値段は高めだが,生ビールはもちろんカレーも山小屋とは思えないクォリティの高さ。今後私の見晴での定番になりそうだ。

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【寺ヶ崎の紅葉と秋の空】

 ゆっくりとお昼を食べてから今日宿泊する龍宮小屋に荷物を預け,早々に一番風呂に入ってから長沢付近を撮影したりベンチでゆったりしていたら,夕食の時間を迎えたのでいったん小屋に戻る。今日の宿泊客は10名程度。紅葉がそろそろ見頃になってきたとは言え平日なので人出はそれほど多くない。いつもと違ってカメラマンもそう多くはなさそうだ。小屋主さんとしばらく談笑してから早々に休んだ。

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【夕陽を浴びて黄葉もより一層華やかに・・・】
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■温暖化の中で迎える秋[2] [尾瀬ケ原]

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【朝靄の中から見上げるモルゲンロートの燧ヶ岳】

□9月25日(月)晴れ 23,174歩
 早めに休んだので,目覚ましに起こされることなく早々に目が覚めたが,日の出も遅いので明るくなるのを待って小屋を後にする。昨年は何度も一面の分厚い朝靄に覆われ,ドローンを飛ばすまで周囲の状況が全く状況が分からない状態が続いたが,今回は朝靄越しに至仏や上空の様子を確認しながら撮影できるのはありがたい。
歩いていると上空にうっすらと広がっていた雲がピンク色に染まり出し,その色合いを深めていった。朝靄のベール越しに見る,モルゲンロート・・・ これもまた中々出来ない経験である。上空からも撮影したい衝動に駆られたが,ぐっと堪えて地上からの撮影に努めた。

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【薄いベール越しに見る朝焼けの空】

 ふと気付くと,所々木道がよく滑る。濡れているからではなく,良く見るとどうも霜が降りているようだ。昨日の朝も相当冷え込んだという話だが,自分の温度計では3℃。今までの暑さが嘘のようである。今回は流石に滑り止めまでは用意していなかったので,滑らないように慎重にあちこち移動する。

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【朝陽を浴び,朝靄に包まれた尾瀬ヶ原】

 満を持してドローンを使って上空からの撮影を開始する。それほど濃くはないが,朝靄は比較的広い範囲を覆い幻想的な光景を作り出している。その動きも激しく,朝靄の動きを追いかけるように撮影を続ける。パノラマ撮影の空いた時間を使い,カメラを変え,レンズを変えて地上からも撮影を重ねる。あっという間にドローンのバッテリー1本を使い切り,戻って来た瞬間を待って,地上の様子も撮影する。この時ばかりはつくづく体がいくつもあったらと思う。

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【朝陽に輝くヤマドリゼンマイ黄葉】

 朝陽が湿原を照らすようになるとその忙しさはMAXだ。静かに湿原を覆っていた朝靄があちこちを彷徨い,上空に立ちのぼる。その条件によっては白い虹を描く。拠水林から溢れる木漏れ日は光芒となって湿原に多数の光の矢を放つ。湿原に目を遣ると,昨夜のうちに降りた朝露や霜が朝日に照らされて溶け,僅かな空気の動きに反応してキラキラと輝いている。山小屋に泊まる醍醐味は,正にこのドラマを見ることにあるといっても過言ではない。

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【森の中から現れる朝の光。光芒が美しい】

 上空からと地上から慌ただしく撮影しているとあっという間に時間がたってしまう。夏至以降は日の出がどんどん遅くなるのと同時に,撮影のピークとなる時間帯が山小屋の朝食時間ともろに被ってしまうようになる。そんな時に撮影もしないでのんびりと朝食をとっている訳にもいかないので,いつもながら朝食そっちのけで山小屋のスタッフに大いに迷惑をかけているのがなんとも心苦しい。

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【モルゲンロートに染まる朝靄】

 朝靄がほとんど消える頃,急いで小屋に戻って朝食を掻き込む。パッキングしやすいようにとまとめておいたものをバタバタとザックに詰め込み,荷物を下ろせば,出発準備完了。後はいつでもチェックアウト可能だ。ここでいつものコーヒーをいただきながら,たもあみさんや宿泊客の方とのおしゃべりをしながら時間を過ごし,最後の最後に小屋を後にする。

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【朝の息吹きに包まれる尾瀬ヶ原】

このまま真っ直ぐ鳩待峠に向かうというたもあみさん達と別れ,あちこちで目に付いたものをだらだらと撮影しながら同じルートを戻ると,目の前に大きな一団が・・・。その円の中心にはたもあみさん夫妻がいた。どうももっていたあの長い撮影機材が気になったNHKの取材を受けていたようだ。
最後のひと踏ん張りをする前に至仏山荘で腹ごしらえを済ませてから,鳩待峠への道をゆっくりと戻った。

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【色付き始めた池塘に泳ぐカモを見るとシーズンの終わりを実感します】

後でニュースで確認したが,この日は関東北部はかなり冷え込み,日光や尾瀬では初霜が観測されたとニュースでも伝えていた。いよいよ本格的な秋が訪れる・・・。さて,次はいつ行こうか?
*空撮にあたり,DIPS2.0での機体登録・飛行計画登録,関係機関への連絡・調整済み。

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【不思議な花の付き方をするアザミ】
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■温暖化の中で迎える秋[1] [尾瀬ケ原]

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[やっと弾けたマユミの実。でも葉はまだ緑色]

□9月24日(日)晴れ 23,281歩
 日本各地で連日猛暑が続き,真夏日の日数が過去最高を記録し,9月になってもその高気圧は陰りを見せず残暑に見舞われ続けた今年。「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもので,9月も半ばを過ぎ,気温は相変わらず高いものの朝夕は過ごしやすくなった。それと同調するように天候も不安定になり,安定して晴れる日は少なくなった。この暑さで遅れている初秋の尾瀬の様子が気になって,好天が予想される日に一泊で尾瀬に向かった。

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[遅れていた草紅葉もようやく色付き始めましたが,場所によってばらつきがあります]

 昨日は天候の回復が遅れたが,久しぶりの晴天の週末とあって第一駐車場は既に満車。第二駐車場から鳩待峠へと向かった。鳩待峠では,重機が大きな音を立てて休憩所と山小屋の工事を急ピッチで進めていた。気が付けばもう9月下旬。今年,工事できる日はそう多くない。流石に今日は日曜日。いつもの尾瀬と違ってひっきりなしに人がやってくる。

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[秋の空を映す池塘と草紅葉の始まった湿原]

 今朝方まで雨が降っていたのだろう。森の中に入ると登山道がしっとりと濡れていた。特に厄介なのは濡れた木道だ。以前に比べて滑り止めがあちこちに取り付けられ歩きやすくはなっているが,気を緩めると足元を掬われる。注意していたつもりだったが,一度だけ派手に転倒して手首を捻った。

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[草紅葉の進行状況によっていろいろな色合いが楽しめるカラフルな湿原]

 山の鼻に着くと木陰のベンチで登山者がたくさん休んでいた。ビジターセンター前のマユミの実が赤く色付いて綺麗だったので撮影していると,目の前に薫さんが現れた。見晴地区でのイベントを済ませて下山するところだった。写真展には来ていただいたものの尾瀬で会うのは2年ぶりだ。シーズン終了までまだ何度も入山するようなので,今年はまた会えそうだ・・・

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[青い空に真っ白な雲が盛んに行き来していました]

 人で賑わう山の鼻から研究見本園に進み,一番奥にあるベンチで大休止。既に秋色に染まり始めたから湿原越しに吹いている風を感じながら,軽めに昼食をとる。山の鼻の賑わいが嘘のように静かな別世界が広がる。ここから見る景色も長い間に様変わりした。一番の変化は,中央部で写真のアクセントにもなっていたシラカバが軒並み枯れてしまったことだ。

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[温暖化による高温の影響で,今年の花暦は終盤戦。秋の花は見頃を過ぎてしまいました]

 ピーカンの青空に浮かぶ真っ白な綿雲をのんびりと眺めながら,上田代に向かう。湿原の様子は,いつもなら9月初旬に行っている尾瀬オフ会の頃と同じような状況だった。ずっと気温が高かったせいで花暦はいつもよりも早め早めに推移し,秋の訪れは極端に遅れている。いつもは今頃はヤマドリゼンマイが赤く色付いている時期なのに,牛首辺りのヤマドリゼンマイもまだ緑色をしていた。

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[遅霜に痛めつけられたヤマドリゼンマイもやっと本格的に色付いてきました]

 尾瀬ヶ原を歩いている時には,雲の勢力が強くなり,カンカン照りの日差しからは逃れることが出来たが,日頃の不摂生がたたったのか平坦な木道を歩いているだけなのに少々バテ気味。熱中症だけは避けようと,こまめに給水しながらヨッピ橋へ。やはり,ヤマドリゼンマイの黄葉は全体的に遅れているようだ。ただ,遅霜の影響で再生した事もあってか,その色合いには明らかにばらつきがあった。これも温暖化の影響と言えるだろう。

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[午後の日差しに輝くヤマドリゼンマイ。黄葉は透過光越しに見た方が綺麗です]

 多くの登山者と行き交い挨拶を交わしたが,午後2時を過ぎた頃から人の行き来がほとんどなくなった。やはり,今日の好天に誘われて日帰りで訪れた人が多かったのだろう。ベンチに荷物を置いて,心ゆくまで初秋のヤマドリゼンマイや尾瀬ヶ原の空撮をして,龍宮小屋に向かった。

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[ススキがあるといかにも「秋の夕暮れ」という感じがします]

 2か月ぶりの龍宮小屋で受付周辺をウロウロしていると,たもあみさん夫妻が現れた。土曜日から来ているとのことで写真展以来久しぶりにゆっくりと話した。
夕食前にふと外を見ると,太陽が傾き,雲がいい感じになってきたのでカメラを持って出かける。派手な夕焼けでは無かったが,秋を感じさせる穏やかな夕暮れだった。食事後,小屋主さんやたもあみさんたちと談笑して,部屋に戻た。

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[明日の好天を約束してくれているような夕暮れとなりました]

*空撮にあたり,DIPS2.0での機体登録・飛行計画登録,関係機関への連絡・調整済み。


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■変わりゆく刻の中で[2] [尾瀬ケ原]

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[音もなく静かな朝。朝靄が広がり穏やかな朝が訪れた]

□7月7日(金)晴れ 29,195歩
昨日,龍宮小屋に宿泊した方は,どの人も写真を撮る方ではないので食事後も食堂で時間を過ごしていた。ということは・・・ 日の出前の時間にぼんやりしていると間違いなく寝過ごすと思って早めに目覚ましをセットして準備をする。

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[それほど濃い朝靄ではなかったが,尾瀬ヶ原一面が朝靄に覆われていた]

目覚ましが鳴る前に目が覚めたので,撮影機材だけを詰めたリュックを持って下に降りると,誰も出発準備をしている人も出かけた様子もない。薄暗い中,登山靴の靴紐をしっかり結んで小屋の外に出た。朝靄は尾瀬ヶ原全体に広がってはいるものの至仏山は半分以上顔を出しているので,靄はそれほど深くはないようだ。

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[上空から見た初夏の早朝の尾瀬ヶ原]

朝露に濡れた草の生い茂る木道をベンチ付近まで急ぐ。位置的にも尾瀬ヶ原のちょうど中心にあるので空撮をするにはちょうど位置的にも都合が良いからだ。
上空を見ると,今朝は朝靄以外は全くないピーカンと思っていたが,いつの間にか北半分を大きな雲の一団が空を覆っていた。ちょっと心配になったが,至仏山山頂からいつもの朝のドラマが幕を開けた。

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[朝靄漂う尾瀬ヶ原とダイヤモンド燧ヶ岳]

しかし,その光がだんだん弱くなったり,消えたりを繰り返す。上空に広がり始めた雲が勢力を増して光を遮り始めたのだ。朝靄の消えないうちに空撮を始めておこうとドローンを飛ばす。思ったよりも朝靄は狭い範囲にしか広がっていなかったが,動きのある朝靄とあちこちに光が動く様子は,モニタで見ていても楽しかった。

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[朝露をまとったウラジロヨウラク]

やがて,その雲が時間と共に南に流れていき,湿原全体を照らすようになった。しかし,その頃には残念ながら朝靄はすっかり消え去ってしまい,白い虹や想うような写真が撮れなかったのは,残念だった。ただ,朝露で潤う高山植物や湿原の様子を撮影しながら,小屋に戻った。朝食開始時刻には少し遅れたが,宿泊客はまだ食事中だったのでホッとした。ここ数回,朝弁当が続いたが,撮影後に温かい食事をいただけるのは何よりもありがたい。

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[遅霜の被害を受けたが,何とか例年の状態に戻りつつあるヤマドリゼンマイ]

朝食後,部屋に戻って出発準備を整え,ロビーで小屋主さんと一年ぶりの龍宮コーヒーを味わいながら談笑して小屋を後にする。
時間もあるので,見晴を経由して帰宅することにした。龍宮を過ぎると木道が極端に荒れる。自分自身,この木道の中央が抉れていたため何度も足を捻挫している。
尾瀬の歩荷さん達がクラウドファンディングで一部修理したのだが,全体から見ればほんの僅かでしかない。何とかならないものか・・・

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[青空が広がる尾瀬ヶ原と秋を想わせる雲]

見晴は時期的にキスゲのシーズン前でもあるし,夏休みも始まっていないので,賑わいからはほど遠く,静かに時間が流れていた。弥四郎清水の水場に流れ込む沢水が気持ちよさそうだった。湿原ではちょうどトキソウやサワランが見頃となっていた。今年はツルコケモモを多く見かけた。間もなく見頃を迎えるはずのニッコウキスゲは,木道脇にポツポツとある程度で,余り見かけなかった。シカの食害や霜害の影響もあると思うが,今年はそもそもが花芽もないのだから裏年なのだと思う。

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[朝靄もすっかり消え,夏の空を映す池塘]

 全く,記録的に早かった雪どけ,そして遅れて何度もやって来た降雪,降霜によって,植物は散々痛めつけられた。今年は高山植物にとって正しく受難の年であると言えよう。今日もまた,観測史上初となる7月の黄砂の影響が残り,晴れてはいるものの遠くの山や森は霞んでいる。これはこれで今の尾瀬でもあるし,貴重な一日なので,行き来する雲間から時折落ちる日差しを待ち,ゆっくりと撮影しながら鳩待峠の道を登った。
*空撮にあたり,DIPS2.0での機体登録・飛行計画登録,関係機関への連絡・調整済み。
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■変わりゆく刻の中で[1] [尾瀬ケ原]

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[朝靄漂う尾瀬ヶ原。もうすぐ日の出の時間を迎えますが・・・]

□7月6日(木)晴れ 24,341歩
 梅雨の重苦しい空気の中,2日間だけ与えられた晴れ間。ここ1か月近く尾瀬に出かけていなかったので,やはり出かけておきたい。咲いている花も相当様変わりしていることだろう。ただ,気になるニュースもあった。なんとこの2日間,例年冬から春にかけて季節風に乗り中国からやってくる黄砂が日本に来るらしい。

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[ハクサンシャクナゲ]

 どんより曇っていた空も,戸倉に着く頃にはすっかり晴れ上がり,新緑が眩しく輝いていた。久しぶりの好天と言うこともあってか,平日にも関わらず乗合タクシーは直ぐにいっぱいになるためザックを車に積むと,全く待つことなくタクシーは鳩待峠に向かった。そして,いよいよ鳩待峠に着くと,様子がかなり変わっていた。と言うのも鳩待山荘と休憩所の改築工事が本格的に始まっていたからだ。工事が終わるのは2年後になるようである。

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[オニシモツケ]

 ここで,荷物を預けてオヤマ沢田代付近まで往復するつもりでいたが,荷物の預かりサービスはないし,時間も10時を回っていたので今回は諦めることにした。最近はいろいろ計画をしてもほとんど安易な方に流れるなぁ。(^^ゞ荷物を背負い,疲れが残る体を引きずりながら,道端に咲く花を見つけては,じっくりとカメラで撮影をしていくため,なかなか山の鼻に着かない。でも春先と違って,すっかり葉で覆われた森は,梅雨の晴れ間から降り注ぐ日差しを遮ってくれるので非常にありがたい。

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[梅雨とは想えない夏らしい青い空が広がりました。そこから降り注ぐ光は強烈でした]

 山の鼻では,あちこちで小学生がグループで昼食を食べていた。天気も良く気持ちも高まっているのだろう。子どもたちの生き生きした声がキャンプ場内に響いていた。自分ではまだ昼食には早かったので先を急いだ。しかし,時間と共にはっきり見えていたはずの燧ヶ岳や距離的に目に前にある至仏山でさえ,白い霞に覆われたような状態になっていった。これがニュースで伝えていた黄砂である事は直ぐに理解できた。後で調べると,7月のこの時期に黄砂が日本で観測されるのは,気象観測を始めてから初めてなのだという。

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[池塘によってヒツジグサのある池とそうでない池が・・・]

 その黄砂も,真夏の強烈な日差しを遮ることは出来ずに,ジリジリと熱い日差しが降り注ぐ。森や日陰がほとんどない尾瀬ヶ原は正に地獄のような暑さだ。熱中症には気をつけなくては・・・。

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[オゼタイゲキ]

 もう一つ気になっていたのが,6/20の遅霜の影響である。ヤマドリゼンマイやカキツバタ・ヒオウギアヤメ,レンゲツツジ等が壊滅的な被害を受けているというので気になっていたが,その情報に嘘偽りは無かった。一番酷かったのがヤマドリゼンマイである。正に9月の草紅葉頃に霜に当たって茶色に変色し,チリチリに縮んだ状態と変わらない様子だった。その頃と違い,まだ大きくなりきれていない若葉が茶色に変色しているのを見るのは何とも痛々しい。また,レンゲツツジはもう時期を過ぎていたが,アヤメやカキツバタは蕾の状態で枯れているものが多く見られた。

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[ハッチョウトンボ]

 ただ,その茶色に変色したヤマドリゼンマイの真ん中辺りから新しい葉が伸びたり,その根元から新たな芽吹きが見られたりしたこと,アヤメやカキツバタは新しい蕾から真新しい花をたくさん咲かせていた。環境がどんなに過酷でも必死で生きようとするその健気な姿に,ただただ感動するばかりだった。

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[黄砂に霞む至仏山と遅霜の影響を受けるヤマドリゼンマイ]

 時間と共に至仏山の影は薄くなるばかり。そして,気のせいか眼が痛み出してきたので,ピーカンだし早々に小屋にチェックインすることにした。
小屋で受付を済ませると今日の宿泊客は全部で6名ほど。一番風呂にも浸かることが出来て最高の気分。食事までの時間部屋でまったりとした・・・。

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[夕暮れ空を映す,波静かな池塘が綺麗でした]

 夕食を早めに済ませて,機材を持って龍宮十字路のベンチで夕暮れの一時を過ごす。日中はピーカンだった空に時折雲が行き来していたので,少しは焼けるかなと淡い期待をしながらその時を待ったが,燧ヶ岳の山頂が少し赤く色付いた程度だった。
その後,部屋に戻り早々に休むことにした。
*空撮にあたり,DIPS2.0での機体登録・飛行計画登録,関係機関への連絡・調整済み。

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[夏至は過ぎましたが,太陽は景鶴山のこんな近くに沈んでいきます]
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