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■風薫る5月[2] [尾瀬ケ原]

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[朝日に染まる至仏山と朝靄の尾瀬ヶ原]

□5月18日(木)快晴
 久しぶりに朝食を朝弁当にして,日の出前に小屋を後にする。空に雲一つなく,朝靄もほとんどない朝だ。この日の朝は,日中の暑さからは想像も出来ないくらいに冷え込み,木道には霜が降りていた。

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[燧ヶ岳山頂から昇る太陽。いわゆる「ダイヤモンド燧ヶ岳」]

龍宮十字路に向かう途中,そろそろ空の色が少しずつ変わり始める。日の出直前のブルーアワーと言われる時間帯だ。僅かにあった朝靄は時間と共に自分のいる方に流れてきたので,この時間帯を外すと完全に消えてしまいそうな気がして,適当な場所を見つけてリュックを下ろし,撮影を始めた。

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[朝の雰囲気を残す早春の尾瀬ヶ原]

 すると,直ぐに至仏山頂付近の色が変わっていった。太陽が昇る空の一角に薄い雲が広がっているのだろう。山頂を真っ赤に染める強い赤ではなく,ほんわかとした春らしい柔らかな色に染まっていった。その様子を上空からも撮りたくて,ドローンを飛ばす。

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[眩しい光の中を歩く。朝の散歩道]

 上空から見ると,龍宮から下田代はそれほど朝靄は出ていなかったが,龍宮十字路付近はちょっと薄いベールを被ったように,白い朝靄に覆われていた。しかし,それもそれほど濃いものではなく,時間とともにあっという間に消えていった。その分,地上の様子がしっかりと分かるのだが,これが良かったのか悪かったのか・・・。

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[見晴~東電小屋に向かう途中の湿原で。ここの群落が一番綺麗でした。]

 やがて,太陽が湿原を照らすようになると,特に池塘周辺に水蒸気が上がり,それが動き回る様が幻想的である。自由に飛び回り,燧ヶ岳山頂から登る太陽を撮影した。ただ,燧ヶ岳の裾野から昇る太陽と,山頂から登る太陽では,山頂から出る方が時間的に遅くなり,その分朝陽特有のオレンジ色の光ではなくなってしまうのが残念な点である。またその間に,朝靄がすっかり消えてしまったのも残念だった。朝靄がない分,地上の風景の変化が分かって良かったのかも知れないが。

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[雪どけ水が流れ込み水量豊富なヨッピ川]

 空撮を終え,朝陽に輝く池塘や湿原の様子を繰り返し撮影した後は,いったん見晴に戻って,昨日通っていない東電小屋やヨシッ堀田代経由で帰る事にした。トガクシショウマや滝の撮影にも心引かれたが,足の痛みも長引いてもいることだし,今回は他の方のレポートにお任せすることにして,今回は尾瀬の風に吹かれてゆるゆると帰ることにした。

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[木道の間にたくさん見られたリュウキンカ]

 途中のベンチで朝食を取ったり,比較的綺麗なヨシッ堀田代のミズバショウを堪能したりしながら,帰宅の道に着いていると,上田代で花見さんに会った。最後に残ったバッテリーでドローン撮影をしようと,送信機の操作に夢中になっていると突然顔を上げたら,目の前にいたのが花見さんだった。今年だけで既に4回目という御来場にただただ驚くばかり。しばらく撮影しながら談笑していると新井先生も来ているということだった。

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[芽吹き始めた拠水林越しに見る燧ヶ岳]

 その場を後にして10分後,木道上をドローンがこちらに向かって飛んでくる。一体誰だろうとみていると,どうも木道上を歩いてくる人を撮影しているらしい。
その人物が写真家の新井先生だったのだ。撮影中にも拘わらず,新井先生に声をかけていただいたので,そのカットは撮影中止となり,改めて撮り直す事になったようだ。

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[湿原も周辺の樹林帯も芽吹きが始まり,新緑が綺麗でした]

6月に群馬テレビで放送される尾瀬の番組の取材のための撮影だったらしい。そこで新井先生と暫く談笑して,山の鼻に向かった。
昼食をとってから新緑の回廊を花の撮影をしながらゆっくりと下山した。
*空撮にあたり,DIPS2.0での機体登録・飛行計画登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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[7月並みの気温でミズバショウも一気に見頃となってきました]
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■風薫る5月[1] [尾瀬ケ原]

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【まだ,葉は十分茂っていないため明るい林内から見える残雪の至仏山が眩しい】

□5月17日(水)快晴
 今年は,シーズン前の4月に写真展を開催し,終了したら残雪の尾瀬へ行こうと思っていたところ,異常気象でかなり目論見が外れた。今冬の少雪と急激な気温上昇の影響で史上最速ともいえる位の早さで雪もとけ,湿原の植物の開花も早まった。

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【まだ小さかったオオバキスミレ。数もまだ少なめでした。】

 季節毎の特徴的な光景を撮影したいと思っていたので,春から夏へと移り変わりを感じられる残雪期の尾瀬を見られないのは寂しい限りである。ここ数年,コロナの影響もあり,残雪期の尾瀬を余り歩けていないので,来年こそはしっかりと残雪期の尾瀬を歩きたいとの思いを強くした。

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【イワナシがちょうど見頃でした。この色合いと透明感がイイです。】

 GW明けから休館するところも多く,山小屋が本格的に営業を始めるのは今週末辺りからと言う事情もあり,今回は見晴の「燧小屋」に予約を入れる。鳩待峠まで車で入れるギリギリの日程だったが,早々に鳩待峠の駐車場は満車のようだ。戸倉から乗合タクシーで鳩待峠に向かう。周囲にはタムシバがたくさん咲き出していて季節はこんなに進んでしまったのかと驚かされる。

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【ミズバショウが並んでアーティスティックスイミングしているようでした】

 鳩待峠は平日だけあって流石に人はそれほど多くないが,次から次へと人はやって来て,明らかにコロナ期間中とは違うなと感じる。
一段落して,重い腰を上げる。さて,暫く怠けていて歩いていなかったし,今日は最初と言う事もあるのでのんびりと山小屋まで行くだけにした。
木道を進むとやがて目の前にチラチラとイヨドマリ沢のミズバショウが見えてきた。SNS等の情報にもあったように,今年はGW後の連日の降霜により,多くのミズバショウが被害に遭い,苞の先端が茶色に変色してしまっている。真っ白なものは極端に少ない。

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【雪どけが早かった割に小さい株が多かった。数は多かったです。】

 急ぎ,その足でいつもミズバショウシーズンの終盤に,遅れて見頃を迎える研究見本園のミズバショウ群落地を覗いてみた。早くから雪が消えていた割には,ミズバショウの生育は遅く,小さいものがほとんどだ。
ここでドローンのトラブル発覚。ログインしないと飛行距離や高度に制限が出るというものだ。DJIのパスワードとかも曖昧だったし,第一この携帯電波やWi-Fiが使えないところでどうやってログインしろというのか。結局山の鼻に戻り,いろいろ操作して何とかドローンが使えるようになった。
昼食をとり,気持ちを落ち着かせてから山小屋に向かう。ここでかなり時間を無駄にしてしまった。

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【研究見本園の奥の群落地。ミズバショウうようよ・・・】

 ラジオの予想では今日はフェーン現象も加わって関東甲信地方は7月並みの気温になるとか,前橋も真夏日になるとか伝えていた。例に漏れず,尾瀬も暑い。ビジターセンター前の温度計で既に30℃。確かに真夏並みだ・・・。何も遮るもののない尾瀬ヶ原歩きは相当辛いが,風が強めに吹いていた事がせめてもの救いだった。

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【上空から見た上田代付近の池塘】

 湿原や周囲の樹林帯には芽吹き始めたばかりの新芽や若葉の新緑が風に揺られて輝いている。湿原には,ショウジョウバカマやワタスゲに混じって,気の早いタテヤマリンドウの青い花もちらほら見える。また2本の木道の間には,シカの食害から逃れたリュウキンカが寄り添うように咲いていた。
しかし,尾瀬と言えばここと言われるほどの定番ポイント,下の大堀のミズバショウは数も少なく酷い状態だった。

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【雪どけ水は引いてしまったけれど,周囲の湿原はまだ湿っていて色が濃いので,尾瀬ヶ原湖が何処にできたのか上空からも一目瞭然です。】

 GW後,2週間程休業中の龍宮小屋に挨拶に立ち寄り,小屋主さんと暫く談笑してから見晴に向かう。日帰りで訪れた人は,時間的にもこの先までは行かないから,ここから木道を歩いている人の数はぐっと減る。

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【湿原も樹木も芽吹きが始まり,茶色から新緑への模様替えが始まっています。】

 見晴に着くと,営業前のあちこちの山小屋で,営業に向けて何処も忙しそうに準備をしていた。秋のそれとは違い活気があって,皆いきいきしていた。小屋で受付をしてから荷物を置いて,少しだけ周囲を散策して戻ると,夕食の時間だった。食堂でも座り方もコロナ前の様子に戻っていた。夕食後日も傾いてきたので,カメラを持って辺りをうろうろ。
小屋に戻ってからは,条件的に良くないので星の撮影はせずにゆっくり休む事にした。糊のきいた枕カバーやシーツが心地良かった。

*空撮にあたっては,DIPS2.0での機体登録・飛行計画登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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【尾瀬ヶ原の夕暮れ】
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有馬雅美写真展(高崎巡回展)の御案内 [尾瀬ケ原]

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有馬雅美写真展(高崎巡回展)の御案内
有馬雅美写真展「尾瀬夢幻 ~水が織りなす美しき世界~」を以下の日程で開催いたします。
お忙しいことと存じますが,是非とも御高覧を賜りますよう,謹んでお願い申し上げます。
この写真展は'23.1.27-2.2まで東京六本木のミッドタウンの「富士フイルムフォトサロン 東京」で開催した同名写真展の巡回展です。皆様のお越しを心よりお待ちしております。
なお,公開時間を当初の,9:00~19:00(最終日は17:00)から,10:00~18:00(最終日は16:00)
に変更しましたのでお間違えの無いよう宜しくお願いいたします。

【日時】2023年4月21日(金)~4月26日(水) 10:00~18:00
    ( 最終日は16:00まで,入館は終了10分前まで )
【場所】高崎シティギャラリー 第5展示室
    ( 高崎駅から徒歩10分,コミュニティバス利用の場合「市役所」下車,徒歩3分 )
【作品】B0/全倍/全紙,カラー,51点

■高崎シティギャラリーでの巡回展のお知らせ
http://www.arima.jp/new/takasaki.pdf

■フジフイルムスクエア公式サイト
https://fujifilmsquare.jp/exhibition/230127_02.html

■写真集「尾瀬夢幻 ~水が織りなす美しき世界~」(日本写真企画) 好評販売中
http://www.arima.jp/syashinsyu.htm
【ISBN】978-4-86562-141-9
A4ヨコ/100ページ/オールカラー/上製本/定価3300円(税込)
全国有名書店・ネット書店にて取扱中

#尾瀬夢幻 #有馬雅美
#富士フイルム フォトサロン #高崎シティギャラリー
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■いきなり晩秋,そして初冬へ[3] [尾瀬ケ原]

□10月22日(土)くもり
天気予報では午前中から徐々に天気が悪くなる予報だったが,それが前倒しになったようで,日の出の時刻になっても朝靄に覆われることも空が焼けることもなく,穏やかな朝が訪れた。静かな尾瀬沼の畔でたくさんの水鳥がせわしく餌を啄んでいた。長蔵小屋の周辺や大江湿原をゆるゆると散歩して,小屋に戻って朝弁当を食べる。

このところ朝弁当にすると決まって天候が崩れる。寧ろ,普通に朝食を頼んでおいた方が,撮影の好条件に恵まれるという皮肉な結果になっている。もっとも,スマホが使えない状況で好条件に巡り会ったとしても,肝心の空撮ができずにがっかりするのは目に見えていたのだが・・・。

太郎さんや小林さんに今シーズンの御礼を言って,小屋を後にする。今日は尾瀬を堪能できる最後の週末とあって,沼山峠からはたくさんの人が次々に押し寄せる。その中にKさんもいて,久しぶりに談笑することが出来た。沼山峠に着く頃には,少し日差しも出てきたが,低い雲が優勢で条件的には余り良くない。

しかし,当初の予定であった尾瀬の滝巡り4つめの滝「抱返の滝」を見るために,沼山峠休憩所脇の道を下る。実はこの滝を見ることも,このルートを歩くことも初めてである。地図では沼山峠休憩所から僅か25分程度と書いてあったが,高低差は200m以上はあった。

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【初めて見る抱返の滝】


道標が出てきたのでその方向に進むと直ぐ目の前に大きな岩盤を這うように流れる抱返の滝があった。水量は思ったよりも少なめだが,間近に見る滝は紅葉の森に見守られて静かに流れ落ちていた。もっと水量の多い時期にも見てみたいものだ。

見たかった滝を見ることができたので,七入には向かわず踵を返す。人通りのほとんどない寂しい道だが,古い木道や階段などが所々にあり,歴史とどこか懐かしさを感じさせる登山道は,帰りには登りがきついと感じる場所も一部あったが,沼山峠のこんな近くにこのような場所があるならもっとアピールしてもいいのでは・・・と思った。

シャトルバスに乗り込み御池に戻り,車で5つめの滝「モーカケの滝」に向かい,車に置き忘れた予備のiPhone7を使って空撮をすると,展望台からは見れないモーカケの滝の全容をはっきりと捉えることが出来た。周囲の紅葉と相まってこの滝の美しさを再認識した。6つめの滝として「竜ノ門の滝」の撮影も考えたが,現在は展望台への道が通行止めとなっているので断念せざるを得なかった。
*空撮にあたって,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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【上空から見るモーカケの滝】

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■いきなり晩秋,そして初冬へ[2] [尾瀬ケ原]

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【真っ白な霜が降りた湿原に朝の光が舞い降りる】

□10月21日(金)快晴
雲も夕焼けも一切なく満天の星空が輝く尾瀬ヶ原。寝る前にちょっと湿原に様子を見に行くと,かなり冷え込み,湿原には既に少し霜が降りていた。明日は期待できそうだ。この時期になると撮影で忙しくなる日の出の時間帯は午前6時前後。その1時間ぐらい前からガサゴソと動き回る人の物音で目が覚め,ぼんやりした頭で少しずつ撮影の準備を進める。今回に関しては晴れを疑う余地は全くなく,期待していた霜がどれくらい降りているかが気になる・・・。

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【大霜の朝は空気が冷えすぎるため朝靄は出ないことが多いがこの日は違った】

恐る恐る確認すると,湿原は期待以上に真っ白だ。近くのダケカンバやカラマツの先端まで真っ白だ。大霜であることは間違いなかった・・・。心躍らせながら,滑り止めを装着して薄暗い湿原に。頭上にあった満天の星は数を減らし,下弦の三日月が輝く。行き先をシカ柵を撤去した下の大堀にするか,ヨッピ橋方面にするか決めていなかったが,湿原を見るとヨッピ橋の方に朝靄が漂っていたので,それに吸い寄せられるように足が自然とそちらに向かう。

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【枯れて寂しげだった湿原が一気に華やぐ瞬間】

時間とともに今回の大霜の全容がはっきりしてきた。ここ数年見ていないくらいのレベルの大霜である。何処にカメラを向けても絵にはなるが,どんなふうに切り取ったら良いものやら・・・。大霜の日は相当冷えるので朝靄はそれほど出ないのだが,今回は例外的に朝靄も出ている。

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【湿原だけでなく,周囲の木々もj霧氷が付いて真っ白になっていた】

まずは,その朝靄が消えてしまわないうちに何とかしようとドローンを離陸させる。湿原,拠水林など辺り一面真っ白だ。しかも,朝靄がより一層幻想的な雰囲気を醸し出している。一通り写真撮影,ビデオ撮影を済ませていったん着陸させ,スマホ,デジカメ,デジイチで忙しく周囲の様子を撮影する。

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【朝陽を浴びて,大霜が一斉に煌めき出します】

気温-6℃。漸く朝日が湿原を照らす時間帯になる。朝陽を浴びて輝く大霜は最強だ。空撮を始めると地上の撮影が出来ないので,この時とばかりに夢中でカメラであちこちを撮影しまくる。その時間が長すぎたのかいざ空撮を再開しようとした時,事件は起こった。空撮になくてはならないスマホが真っ暗な画面のまま全く反応しなくなったのだ。以前尾瀬仲間からも聞いていたので,冷えすぎてバッテリー保護機能が働いたのだと直ぐにピンときた。暖めれば元に戻るだろうとたかをくくりポケットにスマホを入れ回復するのを待ったが結局,家に戻るまでスマホが復活することはなかった。(>_<)

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【紅葉と大霜が同居する晩秋の龍宮小屋】

空撮は諦めざるを得ず,仕方なくデジカメやデジイチでの撮影を続ける。しかし,今日一番の撮影チャンス時に空撮できないとは何とも無念だった。悔やんでも悔やみきれない。いつもなら予備に持っていたスマホを忘れたのも気の緩み・・・。大いに反省させられた。

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【湿原に鏤められた宝石の数々】

まだ大霜の光景は広がっていたが,気落ちしていつもよりも早めに小屋に戻り朝食をとる。ロビーで出発前に小屋主さんと話していたら,あちこちに撮影に出かけていた知り合いが次々と戻って来た。大霜を撮影できて満足そうな顔が並ぶ・・・。空撮は出来なかったが,大霜の撮影は出来たのだから,次にかけようと気を取り直して小屋を出た。

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【カラマツもそろそろ見頃となった長蔵小屋付近】

この後は,時間とともに増す膝と足首の痛みが心配だが,段小屋坂を経由して尾瀬沼に向かう。見晴の山小屋も開いているのは少数派になり,晩秋の段小屋坂を行き来する登山者もほんの僅か。より一層寂しさが漂う晩秋の雰囲気いっぱいの道を足を庇いながら時間をかけて尾瀬沼に到着。早々に長蔵小屋にチェックインして寛ぐ。いつもなら空撮に時間を取られるが,それがないとなると手持ち無沙汰だ。少し休んだら膝の痛みも和らいだので,デジカメだけ抱えて大江湿原や小屋の周囲でスナップ撮影。夕食の時間を待って今年最後の尾瀬の山小屋での夕食を味わって,この日も早々に休んだ。
*空撮にあたって,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済み。

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■華やぐ湿原[2] [尾瀬ケ原]

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【雨上がりの湿原。低く垂れ込めていた雲が徐々に上がる姿も幻想的だった】

□10月12日(水)くもり
夜中にふと枕元の音で目が覚める。もしやと思って外の様子を覗うと,やはり不安は的中。結構勢いよく雨が降っていた。重く垂れ込めた雲も夜の内に少しずつ晴れ,朝には朝靄が立ち込める光景を信じて疑わなかったが,予想がものの見事に外れた。まだ時間が早く,もう少しすれば状況は改善すると期待して少し休むが,目が覚めても状況はさほど変わらなかった。

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【天候も徐々に回復傾向。ナナカマドの赤が鮮やかです】

雨は上がったもののどんよりと低い雲が湿原全体を覆う。雨で滑りそうな木道を慎重に歩いて十字路へ。湿り気たっぷりの朝の空気の中で,今日どうするかじっくり考えて,今日は尾瀬沼に向かう予定を取りやめて帰宅することにした。

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【雨が上がり雲が徐々に消えてゆきます・・・】

小屋に戻ると朝食の時間になっていて,食事のある宿泊客が食堂に集まって静かに食事をしていた。今日は,三条の滝を経由して御池に抜け,尾瀬沼に向かうつもりでいたので,珍しく朝食を朝弁当に変えていたが,それをロビーのテーブルで食べることになってしまったのは,些か残念ではある。
朝食を食べてから,頃合いを見計らって長蔵小屋に予約キャンセルの連絡を入れる。
いつでも出発できるように出発準備を整え,小屋の周囲をカメラだけを持ってうろうろする。雨上がりの秋真っ盛りの湿原を何枚かカメラに収めてから,小屋に戻り,今年最後の挨拶をして鳩待峠に向かう。

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【秋の彩り】

低かった雲が周囲の山々に懸かり,徐々に雲が消えていく様子も,また幻想的で面白い。時間と共に空は明るくなり,時折雲の間から光が零れるようになる。明日の予定を取りやめたのは,早まったかな。と少し後悔もしたが,後の祭り・・・。すっかり乾いて,歩きやすくなった木道をのんびりと歩いていくと,時間と共に多くの登山者とすれ違うようになる。今は秋の真っ只中。多くの登山者が尾瀬の紅葉を見るために次から次へとやって来た。あと2週間ほどでこの賑わいもすっかり影を潜め,尾瀬のシーズンが終わってしまうのだな・・・ との思いに耽りながら帰宅の途についた。

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【ヤマウルシの実】

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【オオヤマノボクチの実。まっくろくろすけのようにいつか動き出しそうです】
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■華やぐ湿原[1] [尾瀬ケ原]

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【青空を映す池塘群の様子】

□10月11日(火)晴れ時々くもり
尾瀬の湿原を取り囲む山々の紅葉は例年だと10月の体育の日前後と相場が決まっていた。しかし,時期の尾瀬の週末は多くのハイカーで激混み。車で移動するにも,奥日光で大渋滞・・・。自由に動けるようになってからは,この混雑を避け,連休直後に尾瀬ヶ原から尾瀬沼に歩く計画を立てた。

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【この橋を渡ると尾瀬に来たことを実感します】

奥日光の様子から,尾瀬の紅葉も時期的にまだ早いということは容易に推測できた。これもまた温暖化の影響なのだろうか。金精道路を走っていると,反対側の車線をわき目も振らずにひた走るキツネが一匹。いつもなら直ぐに脇道に入って身を隠してしまうのだが,この日は違った。車を駐めて様子を確認すると,その先に車に轢かれた子鹿が一頭横たわっていた。その子鹿を狙ってやって来たのだ・・・ 生きるためとはいえ,余りにもショッキングな現場を目の当たりにして,心はザワついた。車を走らせ,乗合タクシーに乗り換え,鳩待峠に着いてもその気持ちを引きずったままだ・・・。

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【本格的な紅葉にはまだ少し早いようです】

気持ちが動揺した状態のまま,山の鼻に向かって歩き出す。連休直後と言うこともあって,久しぶりの晴れ間にも拘わらず人の行き来は非常に少ない。
昨日の雨のため森の中の木道はしっとりと濡れ,ボ~っとしているといっぺんで足を持って行かれ,即退場せざるを得なくなるだろう・・・。気を引き締めて華やぐ森を進む。

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【色とりどりな牛首を背景にダケカンバの黄葉が綺麗です】

全体的には徐々に色付いてきてはいるものの,近くで見ると全体的に色がくすんでいたり,一部が茶色に変色したりしていて綺麗とは言えない状態だ。ナナカマドもヤマウルシもあの鮮やかな色合いにはほど遠い。夏の異常な暑さが原因なのか,激しい温度変化が原因なのか,今年の紅葉はここ数年では一番悪いと言える状況だ。

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【色とりどりな紅葉がが楽しめる華やかな寺ヶ崎付近】

青空の割合が高いとは言え,水蒸気が多く,空気の透明度も高くない上,激しく雲が行き交い燧ヶ岳や至仏山の山頂は見えないままだ。しかし,時間とともに状況は良い方に変わってきているので,あまり先を急がず,のんびりと天候の回復を待ちながら上田代のベンチで昼食をとる。

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【ベンチでのんびりしていると午後のまったりとした時間が流れます】

秋の柔らかい光が湿原を包み込む時間が長くなってきたので,ここで待望の空撮を行う。秋の澄んだ空を映した池塘と紅葉した周囲の山々がいかにも秋といった感じだ。また,大空を忙しそうに流れていく雲の影が尾瀬ヶ原の上を忙しく行き来する様子も面白い。その後も他の場所に移動して撮影してみたものの,この日の空撮は2度に留めた。

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【ダケカンバの紅葉もそろそろ終わりのようです】

激しく雲が行き交い,それを見ているだけでも飽きない。その風に煽られ,午後の日差しに眩しく照らされて,チラチラと光り輝くダケカンバの黄葉。燃え尽きる前のろうそくの輝きのような,最後の煌めきを見せてくれているのだろうか・・・。湿原では,一ケ月前,まだ緑色だったヤマドリゼンマイも今はすっかり枯れてチリチリになってしまった。時の移ろいは早いものである。あと一ケ月もすれば湿原は,真っ白な雪に覆われ,長い眠りについているのかも知れない。

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【尾瀬ヶ原のモザイク模様はこの時期ならではです】

時間と共に,すっかり雲が優勢となり,時折,雲の間から漏れる光がスポットライトとなって紅葉した木々や湿原を照らしている。こんな様子を夢中で撮影していると,行き交う人も疎らになってくる。気温も一気に冷えてきたのでこの日の宿,龍宮小屋にチェックインした。天気はその後,悪くなる一方だったので,夜の撮影は諦めた。前日に宿泊した「ちーむ尾瀬」の仲間が小屋主さんに託した心温まるサプライズが用意されていた。いつものメンバーの楽しそうな顔が浮かんだ。ただただひたすらうれしかった・・・。これだけでも尾瀬に来て良かった。そして,やはり前日に直接会っておくべきだったと思った。

*空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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■草紅葉の季節[2] [尾瀬ケ原]

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【広がる雲海に満ちあふれる朝の光】

 10名ほどの宿泊者が寝静まる龍宮小屋の周囲を真っ白な霧が覆う。小屋周辺が朝靄に覆われるのはいつものこと。必要な荷物だけを持って,小屋のWi-Fiに繋いで状況を確認すると,晴れの予報のままだがライブカメラは暗くて様子が分からない。仕方なく情報収集は諦めて,小屋を後にする。

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【180度向きを変えると,雲海上には白い虹が広がる】

 真っ白な朝霧に覆われ鳥や虫の声も全くない静かな木道を辿ってヨッピ橋方面に向かう。木道周辺はすっかり仮払いされているため,靴やズボンが朝露でビショビショになってしまうことがないのはありがたい。いつもなら霧が晴れる時間帯になっても周囲の様子は一向に変わらない。今日は,霧が濃いのかも知れないと思い,状況が改善するのを待ちきれず,ドローンを上空に飛ばす。

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【ヤマドリゼンマイ黄葉と白い虹】

 朝靄が立ちこめていても,いつもならほんの数秒で,朝靄の上にから真下に広がる朝靄の彼方に燧ヶ岳や至仏山を見ることが出来るのだが,今回はそうはいかない。いつもよりもはるかに長い時間をかけてやっと雲海の上に出ることができた。

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【朝霧が晴れて,やっと初秋の朝が訪れた・・・】

上空は願い通りの青い空が広がり,雲海の彼方には尾瀬を取り囲む山々が聳えていた。雲海の上に日が射し込むと漂う雲が朝の光を受けて赤く染まる。荘厳な朝のドラマの始まりである。上空に行けば早い日の出となり,低空になるほど雲や周囲の山の遮られて日の出は遅くなるが,その分赤さは失われてしまうので,ちょうどいいタイミングだった。

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【ヤマドリゼンマイの黄葉が進む尾瀬ヶ原】

 しかし,この時間帯は,雲海を撮影してしまうとそれほど変化がないので,30分ほど飛ばしてから撤収した。この日は,靄と言うよりは霧で,空気中を漂う水滴の粒も大きく,比べものにならないくらい濃かったので,暫く待ってもこの霧が晴れることはなさそうだったので,一旦小屋に戻って朝食を食べてから出直すことにした。こんなことなら,朝弁にしておくべきだったな・・・・。

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【漸くヤマドリゼンマイも黄色く色付き始めました】

 急いで小屋に戻り,朝食を済ませて部屋を片付けて小屋を出るまで,この霧は晴れることはなかった。食事中に霧が晴れ,この日のクライマックスを見損なったら,絶対に悔いを残す結果となったと思うが,朝食が終わるまで何とか霧が晴れるのを待っていてくれたようで嬉しかった。あわてて食べたので消化不良気味だが,また同じ道を通ってヤマドリゼンマイのポイントに着く頃,上空を覆っていた霧が少しずつ晴れ,青い空が見え隠れする。そして,隙間から漏れた光が湿原を覆う朝霧に射し込み・・・ 白い虹が現れた。

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【進む尾瀬ヶ原の草紅葉】

 黄色に染まったヤマドリゼンマイの群落の上に低い白い虹がアーチを架ける。時刻は7時30分を回り,太陽も高くなっていたため,その分,虹は低くなる。慌ただしく地上の様子を撮影してからドローンを上空に向かわせると,あっという間に霧が消えてしまった。雲も霧もないピーカンの空の下の湿原では少し物足りない。贅沢は言うまい・・・。このような完璧な条件で撮影できるのも中々ないことなので,じっくり空撮して再度,龍宮小屋に戻った。

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【初秋の空を映すイモリ池】

 小屋では,朝の清掃が始まっていたが,この後は鳩待峠経由で帰るだけと決めていたので,小屋の常連のHさんと談笑したりてまったりと過ごす。10時ごろまでだらだらして帰路につく。まだまだ強い秋の日差しを受けて黄金色に輝く湿原を撮影をしながら,鳩待峠に着いたのは16時頃だった。

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【ダケカンバも少しずつ色付き始めました】
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■草紅葉の季節[1] [尾瀬ケ原]

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【ヤマドリゼンマイも日に日に黄色く色付いていきます】

□9月15日(木)晴れのちくもり
 例年,行われている尾瀬でのオフ会は3年連続で中止が決まった。コロナが流行の兆しを見せ始めた頃,まさかこんなに長引くとは全く予想できなかったことだが,健康上の懸念がある以上,無理に開催することも出来ないだろう。

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【池塘はたくさんのヒツジグサで覆われ輝いていました・・・】

 しかし,そんな年でも時間と共にどんどん季節は進んでしまう。ヤマドリゼンマイなどの草紅葉も既に始まっているという,情報もたくさん飛び込んできて,尾瀬に向かう日を探したが,好天が長続きしない不安定な天候続きで,中々その日を決めかねていた。何とか2日間,雨の心配のいらない日があったので,山小屋の予約をした。この時期,本格的な紅葉シーズンを前にいくつかの山小屋は休館日となっているところも多いので注意も必要だ。

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【池塘の周囲はまだヤマドリゼンマイの色付きが遅いようです】

 当初は,久しぶりに檜枝岐経由で入山を考えていたが,大事なものを忘れ,福島側に向かう理由がなくなったので,いつも通り,戸倉を経由して鳩待峠に向かう。平日だし,紅葉シーズン前でもあるので,鳩待峠は前回ほどの賑わいはなかった。猛威を振るっているコロナの第7波の影響もあるのかも知れない。

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【秋の空を映す池塘とヤマドリゼンマイ】

 周囲の山々も夏の濃い緑から徐々にその色を変えつつある。あと一ヶ月もしないうちに華やかに彩られるこの地の様子を思い描く時,その華やかさに心躍らせると同時に,尾瀬のシーズンも残り少なくなったことが頭の片隅を掠め,ちょっと寂しくもなる。

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【龍宮十字路の夕暮れ】

 峠の道を緑一色だった森が少しずつその色彩を変えていた。オオカメノキの赤い実と秋色に染まった葉も,秋の訪れをいち早く伝えてくれた。だんだん尾瀬ヶ原が近づくにつれ,アキノキリンソウの鮮やかな黄色や,ヤマトリカブト,エゾリンドウの涼しげな青が多くなった。山の鼻に着き,ふといつものベンチを見ると,新井先生が東電の方と話していた。ビジターセンターで財団の会議があるという。

 少し立ち話をしてから,見本園に向かう。見本園の木道脇には秋の風物詩となった木道修理用の資材が無造作にあちこちに置かれていた。ヘリも忙しそうに何度も行き来していたので,静けさを求めて上田代に向かった。

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【夕食後,突然空が紫色に染まった・・・】

 時間と共に,上空をどんどんと雲が覆うようになり,燧ヶ岳や至仏山の山頂もなかなか姿を見せてくれなかった。しかし,ジリジリと照りつける日差しはまだ夏のそれであり,湿度も高く,少し歩くと汗ばんでしまう。時折吹き抜ける風も,日本に接近しつつある台風の影響なのか,妙に生暖かった。木道の間には,たくさんのエゾリンドウやミヤマアキノキリンソウ,サラシナショウマ,ウメバチソウなどが,尾瀬ヶ原に最後の彩りを添えていた。

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【オオカメノキの実と紅葉】

 今回の一番の楽しみは,何と言ってもヤマドリゼンマイの黄葉である。芽吹きの頃も面白い被写体だが,緑から黄や赤に徐々に変化していく様子が秋を感じさせてくれる。しかし,今年の秋は気温の寒暖差が激しく,一度かなり気温が下がった時がある。その影響か,葉は緑色をしているもののその周囲が茶色に変色したり,チリチリに枯れているものが多く見られた。全体的に色もくすんでいたし,今ひとつ冴えない感じであった。ヤマウルシやナナカマドの紅葉も遅れているようである。

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【ヤマトリカブト】

 それでも,紅葉の進み具合は,場所によってかなり違いが見られた。ドローンを飛ばして上空から見てみると,緑,黄,そしてオレンジ色に染まる華やかな湿原のグラデーションが初秋を感じさせてくれた。機械のセンサーで見る紅葉は,人間の目で見るよりもはっきりと季節の移ろいを捉えていた。

 早めに今日の宿である龍宮小屋にチェックインして,小屋主さんや常連さんと談笑した。夕食まで少し時間があったので,カメラを持ってベンチまで移動する。だんだんと雲が多くなってしまい,綺麗な夕焼けは望めそうもなく,諦めて小屋に戻り,食事を済ませる。ふと見ると,空が紫色に染まってきたので慌てて小屋の外に飛び出して数枚撮影し終わると,何事もなかったかのように灰色の空に戻ってしまった。

 風呂に入り,のんびりしていると,小屋の周辺は夜霧に覆われ何も見えなくなった。月夜の白虹を撮るチャンスかなとも思って期待したが,天気予報通り雲が辺りを支配し,明け方まで月は,ほとんど姿を見せてくれなかった・・・ と思う。(^^ゞ

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【今回たくさん見られたエゾリンドウ】
*空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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■真夏の光溢れる尾瀬へ[2] [尾瀬ケ原]

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【尾瀬ヶ原は真っ白な朝靄に覆われていても上空では朝のドラマが繰り広げられていました】

□7月1日(金)晴れ 34,224歩
目覚ましに起こされることもなく4時20分に目が覚めた。既にヘッドライトがいらない明るさになっていたので,昨夜のうちに準備したものを背負って小屋を出る。
小屋の周りはすっかり朝靄に覆われ,真っ白だ。朝靄に佇むワタスゲやレンゲツツジの湿原も幻想的である。遠くで小さくカッコウの声が響き高原の夏を演出していた。朝靄が薄くなった所から時折,青い空が覗く。今日も好天に違いない・・・

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【朝靄に包まれた朝の湿原】

ベンチに荷物を下ろし,ドローンを離陸させる。あっという間に朝靄の上に飛び出ると,真っ白な朝靄の絨毯を眼下にして,山頂付近が赤く染まった至仏山や大きく伸びた燧ヶ岳の影,燧ヶ岳の裾野から顔を覗かせる太陽がモニターに飛び込んでくる。太陽の光が射すとそれまで澱んでいた重苦しい空気が一気に動き出すから不思議である。モルゲンロートに染まる朝靄を高度を変え,場所を変え撮影してみる。地上はまだ朝靄の中だ。

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【朝靄が激しく蠢く早朝の尾瀬ヶ原】

湿原を覆い尽くしていた朝靄が少しずつ明るくなり,時折,朝靄越しに太陽の丸い形が眩しくなったり,見えなくなったりを繰り返す。そして,ふと朝靄が途切れそこから溢れた光が朝露を纏ったワタスゲやヤマドリゼンマイを照らすと,朝露の一粒一粒がきらきらと輝き,風に揺れる様は時間を忘れてしまう。さらに,薄い霧の彼方には薄い白虹も現れた。このところデジカメの撮影が疎かだったこともあり,今回は時間をかけて朝の光景も撮影した。

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【スポットライトが当たりヤマドリゼンマイの若葉が眩しく輝きます。】

朝靄が消えてしまわないうちに,ドローンでの撮影を再び開始。幻想的な光景を狙ってあちこち移動させる。はやり何もない日中とは違って朝靄のある光景は幻想的で魅力的である。朝食の時間なので撮影を切り上げて小屋に戻る頃には,ズボンの裾は朝露に濡れびっしょりになっていた。

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【夏空を写す尾瀬沼と沼尻の池塘】

今回は,ヤマスタのチェックインのこともあるので,迷わず東電小屋経由で見晴に向かう。途中,昨日はまだ蕾だったニッコウキスゲが二輪,山吹色の花を咲かせていた。ヨッピ橋を渡るとヨシッポリ田代のワタスゲが出迎えてくれた。尾瀬ヶ原全体で見ると例年並みと言える状態だが,東電小屋の周辺はいつもの年よりも確実に見応えがあった。こちらを回って正解だった。爽やかな風が吹き抜ける中を湿原内に咲き始めた花を撮影しながら見晴へ。

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【林内で見かけたゴゼンタチバナ】

熱くなった体をしっかりクールダウンしてから,段小屋坂へ。尾瀬ヶ原と違って所々に木漏れ日があるだけでほとんど木陰なのがありがたい。さらに,イヨドマリ沢の水は暫く手を入れていると痛くなるほど冷たく,そこを吹き抜ける風は涼しすぎて寒いくらいだった。そんな樹林帯の道を渓流の音を聞きながら,暑さを忘れて歩けるのはありがたいものである。

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【ウワズミザクラもそろそろ終盤】

白砂湿原の木陰で昼食後,沼尻休憩所に到着。今年は営業をしていないがテラスの陰に荷物を置いてゆっくりする。尾瀬沼に映る真っ白な入道雲,そして湖面を吹き抜ける夏の風・・・。夏真っ只中の光景の中にぼんやりと佇む。ふと,湿原の池塘も尾瀬沼も冷静な目で見ると,いつもと比べて,かなり水位が低いなと感じた。今年は梅雨らしい天気ではなく,雨が少なかったためなのか,今夏の電力需要逼迫による影響なのか不明ではあるが,気になるところである。

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【夕暮れの尾瀬沼】

昨日に比べて暑い中歩き続ける時間帯も少なかったが,登りで多少汗もかいたし蒸すので,早々に長蔵小屋にチェックインした。風呂の時間を待って直ぐに風呂場に。しっかり汗を流し,大きな浴槽にゆったりと浸かった。風呂上がりに,この日上山してきた太郎さんとゆっくり話をした。夕食の時間になったので食堂に向かう。この日の宿泊客は全部で20名程度。この時期は,時間的にゆっくりと食事をとる時間があるのはありがたい。

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【久しぶりに尾瀬沼上空にあった雲が真っ赤に焼けてくれました。】

夕食後,少し休んでから,昨日の反省から完全なブユ対策をして,食事後,夕暮れの時間帯になるのを待ってカマッポリ湿原へ。良さそうな雲が西の空にあったので,これは焼けるかも知れないとの期待が高まる。低い位置にあった雲の隙間から太陽の光が漏れると周囲のコバイケイソウがオレンジ色に染まる。そして太陽が尾瀬沼の彼方に沈むと,その光は上空にあった雲を真っ赤に染め上げた。パレットのようにいろいろな色が入り混じり,時間と共により濃く,鮮やかになっていく。そして,その気分を台無しにするのがブユである。対策をしていてもお構いなし。周囲をぶんぶんと飛び回るので,まず奴らを追い払ってからシャッターを切らねばならない。本当に鬱陶しい。
ブユと格闘しながら撮影を終え小屋に戻る。部屋に戻って横になっていたらいつの間にか寝てしまった。

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【尾瀬沼から立ち上る銀河】

*空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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