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■真夏の光溢れる尾瀬へ[1] [尾瀬ケ原]

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【真夏の空を映す池塘群】

□6月30日(木)晴れ時々くもり
 史上最速の梅雨明け,そして,6月にもかかわらず全国各地で気温が40℃を越え,東京では連日35℃以上の真夏日が9日も続く異常事態となった。偏西風の蛇行がその原因だという。ほぼ一週間続く晴天の予報を目にして,足は尾瀬に向かった。

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【もうダメかなと諦めていたズミですが,研究見本園で何とか見ることが出来ました】

 時期としてはワタスゲも見頃を迎え,至仏山も7月に入ると登山解禁となる。高山植物を求めて多くの登山者が訪れ,週末ともなれば一気に混雑するだろう・・・。
いつもなら梅雨の真っ只中で出かける機会もそれほど多くないが,いつもならワタスゲやレンゲツツジが見頃となる時期だ。
戸倉の第一駐車場は平日だというのにいっぱいだ。ちょうど出発待ちをしていた小型バスに揺られて鳩待峠に着いたが,予想以上に雲が多く至仏山頂も雲の中に隠れていた。

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【牛首付近。いつもはワタスゲの群落が見れる場所ですが,暫くここの群落は見ていません】

 今年もヤマスタのスタンプラリーが良いタイミングで始まっていたので,チェックポイントでチェックインしながら歩くことにする。まず,鳩待山荘からと思い,受付に入ると来栖支配人が。ちょっと談笑して山の鼻に向かう。雲の隙間から漏れる強い日差しを逃れるように薄暗い森に入る。平日のため,児童・生徒が次々と尾瀬学校で入山してくる。所々で立ち止まって説明している横をすり抜け,山の鼻に着くと至仏山荘前に見覚えのあるカメラザックが。

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【ちょうど見頃を迎えていたウラジロヨウラク。今年は当たり年のようだ。】

 至仏山荘にいた新井先生に挨拶をしてから,見本園に向かう。ミズバショウシーズンはすっかり終わったが,その後,シカ柵の効果があってミツガシワが例年以上の群落を作っているというので,それを確認したかったからだ。見本園内を一周したが,ミツガシワの見頃は既に過ぎ,フワフワになったワタスゲが気持ちよさそうに風に揺れていた。

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【イモリ池と至仏山】

 時間とともに,尾瀬ヶ原や燧ヶ岳・至仏山頂を覆っていた雲も徐々にとれ,真っ青な青い空が一面に広がった。容赦ない夏の強烈な日差しが辺りに降り注ぐ。前回はヒメシャクナゲが多く感じたが,今回はあちこちでウラジロヨウラクやタテヤマリンドウを見かけた。今年はやはり残雪が多かった分,これらの花は当たり年となっているようだ。

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【ハクサンチドリ。アップにするとラン科の花である事を実感します。】

 真夏の湿原を空撮しようとドローンを飛ばす。池塘の水面に映る青い空と真っ白な雲がいかにも夏らしい。しかし,空撮にも慣れてきたせいか,ただ撮っているだけでは面白みに欠けるなと思いつつもバッテリー2本ほど飛ばした。

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【オゼヌマタイゲキ。尾瀬沼では何故か見かけません?】

 何一つ遮るもののない尾瀬ヶ原を歩いていると,背面からジリジリと照らされる。体温を下げるために首筋に掛けていた濡れタオルもいつの間にか乾いてしまった。こんな時は,炎天下のベンチよりも拠水林の木陰がありがたい。ここで荷物を下ろして小休止。水分や塩分の補給を忘れたら,忽ち熱中症になりそうだ。尾瀬とは言え,手元の温度計では32℃を越えていた。もう,初夏を通り越して,すっかり真夏である。

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【夕陽に照らされるヤマドリゼンマイ】

 僅か2週間で一気に大きくなったヤマドリゼンマイやほとんど終わっていたズミに季節の移ろいの早さを感じながら龍宮小屋に到着。部屋につき,まず明日に備えてドローンのバッテリーの充電を開始する。程なく夕食の時間になったので,早々に夕食を済ませ,必要なカメラだけを持って十字路まで歩き,ベンチでのんびりする。

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【龍宮十字路の池塘の夕暮れ。この日は少し焼けてくれました。】

 夕刻が近くなるにつれ,忘れていた悪夢が・・・。この時期の朝夕の太陽が昇ったり沈んだりする時間帯になると,何故かきまって大量のブユが異常なくらい纏わり付いて周囲を飛び回る。ヤッケを着て帽子を被り防いだつもりでも隙間から入り込んだり,写真にも大量に写り込んだりする。厄介なのはドローン操縦中に送信機を操作する手にブユがとまってしまった時だ。もう操縦どころではなく,中断することもしばしば・・・

 前日が新月だったため,月明かりもなく星の撮影には好都合だと思っていたのだが,暗くなると急激に温度が下がった影響で夕霧が湿原を覆い始めた。幸い小屋の東側半分の空はぽっかり空いていたので,小屋周辺で天の川を撮影してそのまま眠りについた。

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【龍宮付近に架かる天の川】

*空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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■梅雨の晴れ間の尾瀬を歩く[2] [尾瀬ケ原]

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【この日見たかった花キヌガサソウ。尾瀬でも見られる場所はかなり限られる】

□6月14日(火)曇り 28387歩

 夜間に目が覚め星を確認するのは恒例になっているが,どんよりとした雲に覆われた空を確認し,部屋に戻ってウトウトする。
それでも,日の出前には目を覚ます。雨でも降らない限り,何があるか分からない尾瀬なので,4時30分には,最小限の撮影機材を持って龍宮十字路のベンチに向かうと,既に花見さんが三脚を立てて撮影中であった。(^^ゞ

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【ミネザクラ。6月に花見が出来るのは尾瀬ならでは・・・ 贅沢~】

 朝靄も風もない穏やかな朝。遠くでカッコウやカエルの音がこだまする。燧ヶ岳の北の空が明るかったので,ものは試しとドローンを使って上空から眺めてみたが,尾瀬の光景が劇的に変わるような状況ではなく,少しだけ動画を記録するだけにとどめた。

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【咲いたばかりのサンカヨウ・・・ 葉も十分開ききっていません】

 小屋に戻ると,温かい朝食が待っていた。食事を済ませて,荷物を整理してからそれぞれのルートで下山することにした。私は,荷物が負担になるので,リュックを龍宮小屋に預けてカメラだけを持って見晴へと向かった。その理由は,キヌガサソウが見たかったから。咲く時期はもちろん,場所もかなり限定的なためここ暫くこの花の良い時に出会えていない。植え込みにあると言うが,それでも十分,十分。

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【こちらも生まれたてのヤマドリゼンマイ。 あっという間に成長する姿に生命力を感じます。】

 行ってみると,ありました。ちょうど見頃の可憐な花が・・・。他にもサンカヨウなどもあったが,驚いたことに半分以上がシカに食べられていて,茎だけが無残に取り残されていた。こんな所まで奴らは来るのか・・・。じっくり撮影を済ませ,東電小屋に向かった。東電尾瀬橋の先のヨシッポリ田代のミズバショウは既に見頃も過ぎ,葉がかなり大きくなっていた。東電小屋ではイワツバメが元気に飛び交い巣作りに励んでいた。

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【ミツガシワの花 中央にたくさんついた縮毛が印象的です。】

身軽なので,足取りも軽い。あっという間に龍宮小屋に戻り,山の鼻に向かう。山の鼻では,尾瀬学校の児童や生徒が多数訪れ,かなり賑わっていた。その中に神崎さんや安類さんの姿があった・・・ 二人とも今日も仕事のようで忙しそうだった。ちょっとだけ挨拶をしてから,鳩待峠に向かうと,峠に着く頃には今までの天気が嘘のように空気がヒンヤリしてきて,みるみるうちに霧に覆われた。真っ白になった鳩待峠でぼんやりと時間を過ごして帰宅した。

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【リュウキンカ。今回は山の鼻地区でたくさんのリュウキンカが見れました。】

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【タテヤマリンドウ。 雨は降らない明るい一日だったので徐々に開いてきました。】

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【サンカヨウ。 雨に濡れると透き通る綺麗な花です。】

***** 今回の日記については,一部を割愛して公開しています・・・ *****
*空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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梅雨の晴れ間の尾瀬を歩く[1] [尾瀬ケ原]

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【今年の山の鼻のミズバショウは,例年と比べても凄い密集度らしい・・・】

***** 今回の日記については,都合により,一部を割愛して公開します・・・ *****

■梅雨の晴れ間の尾瀬を歩く[1]
□6月13日(月)曇り時々晴れ 26774歩

 拙著「尾瀬夢幻 ~水が織りなす美しき世界~」の出版祝いを尾瀬ですることになり,尾瀬に向かった。
 例年よりも早く梅雨入りしてしまったので天気は期待できないと思っていたのだが,傘のマークがずらりと並ぶ天気予報の中に,ぽつんと晴れの予報が紛れ込んでいた。「雨に降られなければいいかな」ぐらいに思っていたので,心が躍った。それならばと,家を少し早めの5時に出て,鳩待峠に着いたのは8時30分。

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【水たまりに映る青い空と湿原の芽吹きに季節の移ろいを感じます】

平日だというのにかなりの人出である。ずっと雨が続いていたし,ミズバショウも終盤を迎えていたので,天気のいいこの日に集中したのか,県民割による旅行代金補助制度の延長と拡大もこの人出に貢献したのか,いずれにしても,ここまで混雑してしまうとコロナ禍で静かだった尾瀬が妙に遠い前の出来事のように感じる。

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【やっと至仏山付近の雲がとれたので,ここまで引き返しました】

 鳩待峠で出会った花見さんの後を追うように,山の鼻に向けて出発した。登山道の雪は全くないが,ここ数日の雨で木道はしっとりしているので注意しながら歩き始めた。濡れた木道はよく滑る。登山道脇に顔を見せ始めたオオバキスミレ,イワナシ,サンカヨウ,ミヤマエンレイソウ等の花を見つけながらゆっくりと下り始めた。しかし,梅雨の晴れ間もそう長くは続かないようなので,貴重な時間を無駄にできないと思うと,のんびりもできない。約一時間程度で山の鼻に着いた。

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【周囲の森は,3週間前よりも明るくしっかりとした若葉に包まれていました】

 研究見本園のミズバショウを撮影するために,空いているベンチに荷物を下ろし,身軽になってから園内に・・・。ぐるりと園内を一周して,上田代へ。
時折,陽は射すものの,薄い雲が広がって中々青い空が広がらない。至仏山や燧ヶ岳の山頂周辺も雲が行き交いスッキリしなかったが少しずつ雲がとれてきたので,牛首付近のベンチで荷物を置いて,休憩。ドローンでの撮影を開始。

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【茶色から緑色に模様替えが進む尾瀬ヶ原(空撮)】

 空撮を済ませた頃から,急速に天候が回復してきて,影もはっきりしてきた。この状況は明日はもう見れないと思い,上田代に引き返した。湿原内のあちこちにまだある水たまりや池塘に映り込むのが青い空か黒い雲かでは,雲泥の差なのは明らかだ。さざ波がたつ池塘に,青い空を背景に聳える至仏山が映る。湿原内を見渡すと昨年の茶色になった枯草の間からたくさんの芽吹きが始まり,茶色から薄緑色に湿原の模様替えが始まっていた。

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【湿原のあちこちで芽吹きが始まっていました】

 そんな様子を撮影しながら,また同じ道を戻る。3週間前に来た時には,まだ,芽吹きが始まったばかりの淡い緑色の周囲の森も,光り輝くスッキリとした若葉に覆われていた。湿原では,タテヤマリンドウ,ヒメシャクナゲも咲き出している。ワタスゲも果穂が大きくなってきたが,その数は少ないようだ。心地良い風に吹かれながら,ヨッピ橋付近まで歩く。

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【ヤマドリゼンマイの芽吹きには生命力を感じます】

 龍宮十字路に着く頃には16時になっていた。龍宮小屋で受付を済ませ,まずは時間のかかるドローンのバッテリーの充電を始める。小屋主さんと暫く話をしてから,完全に日が落ちてしまう前に空撮をしておきたくて,十字路に戻りドローンを飛ばす。

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【雲の隙間から漏れた光が,零れて龍宮付近を照らします】

 この頃には,黒く低い雲が優勢になり,空の大部分を占めていたから,明日の天候は,ほとんど期待できない。上空から雲の隙間から漏れる光が池塘を照らし,池塘だけを浮かび上がらせる印象的な光景を見せていた。飛行を終わらせる頃には夕食の時間になっていたので,小屋に戻って夕食をとることにした。

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【夕暮れの龍宮十字路から・・・】

 情報交換後,消灯時間になったので,部屋に戻りすぐに休んだ。今夜の星の撮影は全く期待できないので,今晩は起きる必要もないだろう。

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【夕暮れ迫る尾瀬ヶ原(空撮)】
*空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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尾瀬逍遥 2022 ② [尾瀬ケ原]

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【朝靄のフィルター通しに見る尾瀬の朝】

■残雪と新緑と青空と[2]
□5月25日(水)晴れのちくもり
朝靄に包まれていたため,星の撮影を断念して小屋に戻って横になっていたら,少しうとうとしてしまい気が付くと4時30分を少し回っていた。窓から外を見ると,相変わらず外は一面の朝靄に包まれ,辺りは真っ白だ。晴れているのか,曇っているのか・・・

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【しっとりとした朝に出あうと,尾瀬にいることを実感する】

ライブカメラを確認すると,上空は雲一つ無い青空が広がり,至仏山はモルゲンロートに赤く染まっていた。必要最小限の荷物だけを持って龍宮十字路のベンチへ。急ぎ,ドローンを飛ばすと数秒で朝靄の上に出た。上田代付近はやや朝靄が薄いものの尾瀬ヶ原全体が真っ白な朝靄に覆われている。この時期,尾瀬ヶ原で一番先に太陽の光が届くのが上田代。この付近から朝靄のベールがだんだん薄くなり,それが尾瀬ヶ原全体へと一気に広がる。

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【朝靄の尾瀬ヶ原】

朝陽に染められたオレンジ色のベール越しに残雪を残す池塘が見える。朝陽に照らされて輝く水面が見える。あらゆるものが朝靄に包まれ幻想的に,ドラマチックにうごめく。その光がドローンのいる高さまで届いた時に太陽を背にすると,朝靄の上にドローンを中心とした小さな円と大きな円が描かれる。地上では条件が整えば白い虹が見えていることだろう・・・。

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【地上から見る白い虹】

朝靄でセンサーが効かなかったり,水滴で濡れてしまって動作不良を起こしかねないので,朝靄の影響をなるべく避けながら慎重に飛行させる。パノラマ撮影には時間がかかるので,この間を利用して,慌ただしく地上での撮影も行う。原一面を覆っていた朝靄が晴れる頃,ちょうどバッテリーも予定していた数を取り終えたので空撮を切り上げて,小屋に戻る。

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【上空から見る完璧な白い虹】

朝弁当をお願いしてそのまま下山するのが手っ取り早いが,撮影終了後の小屋に戻ってゆっくり食べる温かい食事の誘惑にはかなわない。朝食後のまったりした時間も捨て難く,冷たい朝弁当には中々戻れない。ただ,この時期は日の出が早いので助かるが,やがて食事時間と日の出が重なるようになると,撮影が長引き,小屋の方に迷惑を掛けてしまうため,この点についてはいつも心苦しく思っている。

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【朝陽射す】

暫く,小屋主さんと雑談した後は小屋を後にしてヨッピ経由で下山する。見晴まで行ってぐるりと尾瀬ヶ原を回ろうかとも思ったが,まだ体調は完璧とは言えないし,午後からは天気が崩れそうなので,今回は無理をせずに直ぐに下山することにした。
朝一番には,風も全くない完璧な青空が広がっていたが,午後から崩れるとの予報通り,少しずつ雲が増えていった。写真を撮る上で,雲は全くないよりも,綿飴のような雲が飛んだり跳ねたりしてくれた方が寧ろありがたい。

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【根明けと新緑の尾瀬の森】

雪溶け水で水かさを増した池塘や大雨で氾濫したヨッピ川の水が湿原に溢れてできた大きな池に白い雲が写り,宛ら天空の湖を思わせる光景も。山の鼻に戻る頃には,かなり雲行きが怪しくなってきた。最後に,もう一度山の鼻の見本園でアカシボの写真を撮ろうと立ち寄ったが,初日の残雪の白さを残す赤シボでは無く,赤茶けた残雪だけが僅かに残る風景に変わっていた。特にこの時期の雪溶けは予想以上に早く,尾瀬の風景も急速に変わってしまうのだと改めて実感した。

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【あちこちに水が溢れ,天空の鏡とも言うべき光景が広がる】

この日は,校外学習で何処かの高校生と思われる生徒が何人か訪れ,昨日よりは賑わっていたが,行き交う人もそれほど多くはなく,静かな尾瀬歩きが楽しめた。
小鳥の声が響く森を雨に降られることも無く,ゆっくりとしたペースで登り切り家路についた。

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【終わりかけた「尾瀬ヶ原湖」も,雨が降って少し復活した】

◆空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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尾瀬逍遥 2022 ① [尾瀬ケ原]

■残雪と新緑と青空と[1]
今年も尾瀬歩きの様子を一日ごとに日記風にまとめてUPします。
その日の行動を備忘録代わりに記録しているだけの文章ですが,今年もお付き合いください。

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【新緑と残雪が眩しい鳩待峠から】

□5月24日(火)快晴 20578歩
 温暖化の影響なのか近年尾瀬に積もる雪の量はかなり少ない。そのため,厳冬期の寒さから植物を守る雪の布団も薄くなる一方だ。春ともなれば直ぐに溶け,気まぐれな遅霜にやられて枯れてしまわないか,気をもむことも多い。

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【春の風物詩アカシボ。湿原内の鉄分とバクテリアが作り出したものらしい】

 しかし,昨冬は記録的な降雪量を記録していたので,久々に残雪豊富な尾瀬や花いっぱいの尾瀬を歩くことを楽しみにしていたのだが,シーズンが始まっても天候が不安定でなかなか予定が立てられない。そんなこんなしているうち,ちょっとしたはずみで腰を痛め,暫く尾瀬歩きを断念せざるを得なくなった。なんとも情けない・・・。何をするにも痛みが走り思うように動けず日常生活にも不便をきたしていたが,一週間ほどで何とか普通に歩けるまでに回復した。

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【いつもは遅い見本園のミズバショウも小さい花を咲かせていた】

 当初は,GW前半に予定していたが,あれから既に3週間以上が経ち,尾瀬ヶ原を覆っていた雪もほとんど消えてしまったようだ。気持ちは焦るが,まだ無理は出来ないので,少しだけでも尾瀬の風に吹かれたいと思い,車を走らせた。既に交通規制も始まっているので,乗合タクシーに揺られて鳩待峠に着く。
7か月ぶりの尾瀬。辺りを覆っていた雪はほとんど消え,周囲に堆く積もった雪の向こうには,新緑が眩しく輝いていた。雲一つない青い空から燦々と降り注ぐ眩しい光と,新緑の森に響く野鳥たちの嬉しそうな囀りに包まれて,すっかり春になった尾瀬を肌で感じた。

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【新緑と残雪が雪溶け水溢れる池塘に写ってら春らしさを演出】

 真新しい鮮やかな新緑の森を進むと雪溶け水の溢れる沢の音や小鳥の声が辺り一面に響いている。秋とは違って,あちこちに命が躍動し,明るく活気に満ちていた。テンマ沢付近では小さなミズバショウが多数顔を出し,尾瀬の本格的なシーズンが近いことを知らせていた。登山道はボランティアの方が除雪を行ってくれたお陰で,山の鼻付近まではほとんど雪もなく快適に歩けた。

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【この日は気温も高かったせいか水中のミズバショウも気持ち良さそう】

 人影疎らな山の鼻のベンチに重い荷物を下ろして,見本園内をぐるりと一周する。いつもは尾瀬の中でもミズバショウが最後に見頃となるここも既に小さなミズバショウがたくさん顔を出していた。特に圧巻だったのはアカシボ。残雪が広範囲にわたって赤銅色に染まるこの時期限定の現象なのだが,最近の学術調査の結果,湿原内の鉄分とバクテリアが反応しあってできることが証明されている。これもなかなか良い時に巡り会うのは難しいが,今回はちょうどいいタイミングだった。違う星にでもいるような感覚を覚えるくらい一面が赤茶色に染まっていた。そして,久しぶりの空撮。上空からは意外にもまだ残雪が多いことが確認できた。

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【上空から見た上田代付近の雪溶けの様子】

 山の鼻を過ぎると木道の雪はなく,とても歩きやすかった。池塘に浮かぶ僅かな残雪,湿原を取り囲む山の根開け,芽吹きが始まり新緑に染まりだした木々を眺めながら上田代に向かう。上田代の一帯が雪溶け水で溢れるいわゆる「尾瀬ヶ原湖」は時期的には終わりかけていたが,昨日降った雨のおかげで名残を見ることができた。逆さ燧の池塘脇のベンチで昼食後,行き交う人も少ない木道をゆっくり歩いて龍宮小屋に向かう。
 下の大堀の定番ポイントに立ち寄ると,ミズバショウは小さいながらもたくさん咲き出しており,見頃も近いと思われた。既に,シカの食害防止の柵が昨年以上に張り巡らされていた。花を守ろうとうする取り組みに異論は無いが,この柵があるためにあちこちで風景が台無しになっているのも事実だ。花だけでなく,美しい風景を見たくて尾瀬に来ている人もいるのに,もっと目立たない場所に設置できないものかと思ってしまう。

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【昨日の雨で復活した尾瀬ヶ原湖】

 半年ぶりの龍宮小屋に到着。受付を済ませ,久しぶりの龍宮コーヒーをいただきながら,暫く小屋主の澄夫さんとおしゃべりをして過ごす。4月に発売になった写真集とポストカードを届け,今回尾瀬に来た目的を一つ果たした。この日の宿泊客は7人。他に工事関係者が数名泊まっているようだ。ひっそりとした食堂で夕食を済ませてから,撮影機材を持ってベンチに腰を下ろし,のんびりと過ごす。雲も全くなく夕焼けも期待できなかったが,徐々に暮れていく空をぼんやりと眺めて過ごした。

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【上空から見た幻の「尾瀬ヶ原湖」。この時期限定です。】

 この日も星の撮影には問題なさそうだったが,できたら天の川が高く昇るまで待ってと考えたのがまずかった。さて,撮影しようと起き出してみると,龍宮小屋の周囲は真っ白な朝靄に覆われ,星の撮影どころでは無くなっていた。ちょっと,考えが甘かったようだ。
◆空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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【夕暮れの尾瀬ヶ原・中田代】
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晩秋の尾瀬ヶ原を歩く【2】 [尾瀬ケ原]

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【一面の大霜に覆われた尾瀬ヶ原】

10月25日(月)(晴れのちくもり)

昨夜は満月を少し過ぎたばかりなので,月が煌々と湿原を照らしていたが,無理に起きだして撮影するほどでもないと判断してその夜の撮影は見送った。
目が覚めたのが4時30分を回った頃。消灯で暗くなった部屋でライトを頼りに出発準備を進める。朝弁当と一緒に出していただいたお茶を一口飲んで小屋を後にする。

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【徐々にモルゲンロートに染まる至仏山】

周囲を見渡せば,雲はほとんどなく,既にライトはいらないくらいに明るい。木道や湿原はかなりの量の霜が降り真っ白だ。拠水林も大きなカラマツも葉っぱの先までまで真っ白になっている。今朝は疑いようもないくらい完璧な大霜だ・・・。

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【寺ヶ崎付近から顔を出す太陽と大霜に輝く樹氷】

こんな願ってもない好条件を目前にして気持ちは焦る。太陽が昇る前の大霜の湿原,夜明け前の静まりかえった湿原の様子を何とかカメラに収めたい。それに,ドローンでの撮影を考えると龍宮小屋までは行かないと・・・ 急に慌ただしくなるが,時間ばかりがどんどん過ぎていく。

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【神は細部に宿る・・・】

何処にカメラを向けても,絵になるから困る。カメラを変え,切り取り方を変え,露出を変え,あれこれ試しながら何枚も何枚も撮影する。すると,至仏山頂が赤くなり始めた。時間とともにその赤い光は至仏山の麓に向かって降りていく。

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【無風快晴の朝。至仏山が綺麗に逆さまに見えていた】

しかし,その光が突然消えた。東の空に朝日を遮る雲があるのか・・・。上空を見上げると薄い雲が上空に進出していた。せめてもう少し,この幻想的な光景を見せてくれ・・・と心の中で願わずにはいられなかった。
至仏山を照らす朝陽は気まぐれだが,その光は徐々に降りてきて湿原に届こうとしていた。

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【大霜に包まれた龍宮小屋】

急いで空撮の準備をして,急いでドローンを空へ飛ばす。昨日見た,茶色の湿原は大霜で覆われ,パステルカラーの柔らかな色に塗り替えられていた。すっかり葉を落とした拠水林の枝は真っ白になり,作り物のクリスマスツリーのようだ。黄葉が見頃を迎えていたカラマツの先端まで白い粉雪を振りかけられたようである。
何という光景・・・。大霜の湿原は美しいがやはり光があるのとないのとでは大違いだ。

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【大霜に包まれた朝の尾瀬ヶ原】

しかし,美しい瞬間は長くは続かない。この光は大霜に覆われた湿原を美しく見せるのと同時に,美しさを損ねる大敵なのだ。この温かい光に当たることで大霜はみるみる溶けて,いつものありきたりな光景に変わってしまうのだ。
しかし,夢中で空撮していて気が付かなかったが,バッテリー2本分の空撮を終える頃には,上空を薄い雲が支配し,ほとんど朝陽は射さなくなっていた。

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【大霜の朝,煌めき輝きを増す森】

撮影も一段落したので,ちょっと一息ついてベンチに腰掛け,朝弁当を食べていたが,時間が経っても状況が好転することはなかった。ただ,日差しがなかった分,大霜が溶けるスピードが遅くなり,長い時間大霜の湿原を見ることができたのも,ある意味幸運なのかも知れない。
昼前には曇る予報だったが,天気の崩れが予想よりも早まったのだろう・・・。 この大霜を長時間見ることができただけでも大収穫である。
湿原を歩く人は時間とともに増えていったが,その日はもうほとんど撮影することもなく,鳩待峠に向かった。

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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【荘厳な朝の幕開け】
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晩秋の尾瀬ヶ原を歩く【1】 [尾瀬ケ原]

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【朝早く雪降る鳩待峠を出発します】

10月24日(日)(雪のち晴れ)
最盛期の紅葉が見たくて出かけたのが先週だったが,僅か4日後の尾瀬沼や尾瀬ヶ原には初雪が降った。本格的な大霜や新雪が見られるのはもう少し先かなと思っていたが,例年よりも冷え込むのが早いようだ。
10月ともなれば,紅葉の情報に混じって,初霜・初氷・初雪などのニュースが届けられ,一喜一憂していたのだが,温暖化とともに,冬の訪れは年々遅くなる一方,尾瀬の山小屋の小屋締めも早まり,シーズン中に尾瀬ヶ原や尾瀬沼の雪景色を見る機会は年々少なくなっていた。やはり,新雪に覆われた尾瀬を見たい,贅沢を言わせてもらえば,紅葉と新雪のコラボが見れたら完璧なんだが・・・。

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【雪はそれほど積もっておらず,日陰などに僅かに前日の雪が残るのみでした】

これも温暖化の影響なのか,このところ,夏が終わるといきなり寒くなり,秋が短くなったように感じる。今年も暑い夏が終わったと思ったら,一気に寒さが来た。秋の準備が整っていないところに,急に寒気がやって来て自然も戸惑っていることだろう。
突然,ライブカメラやSNSで見る真っ白に雪化粧した至仏山がモルゲンロートに染まる光景は,美しく神秘的であった。天気が崩れるとは思ったが,ここまで雪が降るとは予想できなかったから,この状況を知った時は,その光景の中に自分がいないことが悔やまれた。
この雪は数時間後にはほとんど消えてしまったが,この先,できれば紅葉の残る早い時期に雪が降ったらすぐにでも出かけたいとの思いを強くした。待つこと数日。その願いをかなえてくれるかのような予報が出た。これは行くしかない・・・。冬用タイヤに交換し,その日を待った。

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【徐々に青空が広がり,至仏山も山頂が見えてきました】

予報通り,尾瀬に雪が降り始めた。しかし,降り過ぎると通行止めになる事もあるのでその前に駐車場に着かなくては。金精峠を越えると一気に雪景色だ。道路脇に佇むシカの群れに何度もドキッとさせられながらも,何とか新雪で真っ白になった鳩待峠駐車場に到着。僅か10台ほどの車が止まっていた。エンジンを止め,シュラフに潜る。静まりかえった暗闇で風がうなり,車を揺らす・・・

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【晩秋の尾瀬ヶ原・上田代。湿原に雪が殆どないのはやはり残念】

明け方近くになると,この雪を知ってか知らずか次々と車が入ってくる。外は相変わらず風が強い上,雪もまだ降り続いているようだ,しかし,いつまでもこうしていられないので準備をして,山の鼻に向かう。
林内は風もほとんどなく,風に飛ばされてしまったのか積雪も思ったほどではない。霧も立ち込め,幻想的な森を歩くのは心地良い。ただ,雨に濡れ,うっすらと雪が積もり滑りやすくなった木道は一瞬でも気を抜くと大怪我に繋がりかねない。滑り止めを付け慎重に登山道を下り山の鼻に着いたが,営業している山の鼻小屋を除いてはすっかり雪囲いで覆われ,静かな時間が流れていた。

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【青空を映す池塘と降ったばかりの雪を僅かに残す湿原】

雪はやんだものの,青空さえ見えない。徐々に回復するとの予報ではあるが,燧ヶ岳と至仏山の山頂も雲に隠れたままだ。期待していた雪も殆ど溶けてしまい,日陰に僅かに残るのみである。救いは周囲の山々に真っ白く残り,終わりかけの紅葉とともに晩秋の光景を見せてくれていたことだ。この雪が溶けてしまわないように,写真を撮りながら先を急ぐことにする。

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【紅葉の山々と新雪のコラボは心が洗われます】

牛首分岐あたりに着く頃には,青空が広がり,至仏山や燧ヶ岳の真っ白な頂もその姿を現してくれた。ここぞとばかりに空撮を始め,上空から雪の状態を確認するが,殆ど雪が残っている場所はなく,思い描いていたような光景を上空からは見ることができなかった。
しかし,周囲の山は何もない晩秋の尾瀬とは違い,僅かに残る降ったばかりの雪の白,まだ何とか見頃のブナの紅葉,針葉樹の緑。所謂「三段紅葉」の色合いに染まり色鮮やかだ。そこにスポットライトが射し込み,見事な光景を造り上げていた。

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【紅葉の森と新雪の森。季節は確実に進んでいきます・・・】

「東電下の大堀橋」と「ヨッピ吊り橋」は既に橋板が取り外され,橋桁のみになっているが,ここを慎重に渡り東電小屋に向かう。この日ヨシッ掘田代で会った人は僅か2名。ほぼ貸し切りだ。なんて贅沢な・・・ 殆ど人が行き交うことのない道を辿って見晴へ。今日宿泊する「燧小屋」以外はこの日で営業を全て終えるが,檜枝岐小屋の喫茶コーナーは幸い営業していたので,いつもの野菜の素揚げ入りカレーを注文した。

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【景鶴山と紅葉の森。今年はまだまだ紅葉も見られます】

昼食後,早めに燧小屋で受付を済ませ,荷物を置いて周辺をぶらぶらする。夕食まではまだたっぷり時間があるので,小屋締めができたのか気になっていた龍宮小屋に向かった。龍宮小屋では澄夫さんたち3人が,「今日やっとヘリが飛んだので下山できる」と最後の点検をしていた。直ぐにでも下山できそうだったが,思いの外,時間もかかっていたので,最後の点検をする皆を尻目に見晴に戻る。

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【いわゆる「三段紅葉」が美しい・・・】

尾瀬全体で唯一空いているのがこの燧小屋だけになったので,混雑しているのかなと思ったが,宿泊客は全部で12名ほど。その中には見晴休憩所等の閉所作業に当たるKさんもいた。久しぶりに会い少し談笑することができた。マイタケ御飯で夕食を済ませ,のんびりと風呂に浸かり,暖かい布団でゆっくりと休んだ。やっぱり車中泊とは比べものにならない。昨日の分までゆっくり休んだ。

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【こんな寒い時期なのに,今頃,龍宮小屋で咲いていたアケボノソウ】

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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秋は夕ぐれ・・・ 【2】 [尾瀬ケ原]

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【夕霧漂う湿原に沈む上弦の月とひときわ輝く木星】

10月15日(金)(快晴)
月没時刻が午後11時30分前後である事を確認し,アラームをセットして一眠りした。アラームに起こされて小屋から窓の外を確認すると夜霧にうっすらと浮かぶ至仏山の直ぐ上に月が輝いていた。撮影をしようとカメラを持って小屋から出る頃には,明るさが少しずつ失われ,月の赤みが増していくところだった。急いでカメラをセットして数枚撮影した。数分後には霧に霞んだ至仏山の右肩に沈んでいった。月が沈んだその後にはぼんやりとした余韻と満天の星空が残された。遠くの池塘には月の撮影をしていたと思われる明かりが点滅していた。たぶんMさんだろう・・・。この夜の主役はやはり月。星の撮影もそこそこに切り上げて部屋に戻った。

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【朝靄に浮かぶ燧ヶ岳から登る朝日】

モルゲンロートが始まるのはこの時期になると5時30分前後と真夏の頃に比べ,1時間以上遅くなる。木道の資材の置かれていないヨッピ方面に向かうことを考えて,4時30分に起き出し,5時には小屋を出る。玄関先にはMさんのスリッパが並べて置いてあった。見習わなくては・・・。

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【モルゲンロートの尾瀬ヶ原】

小屋を出ると周囲は朝靄に包まれているが,上空には青空が広がる。クマとの遭遇による事故防止のため木道の周りの草は刈られていて朝露に足下がビショビショにならずに済むのはありがたい。ヨッピ橋に向かうとだんだんと東の空は明るくなるが,朝靄が濃く,ビーナスの帯や朝の濃紺からオレンジ色に変わるあの独特の色合いの変化を見ることができないのは寂しい。

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【龍宮小屋前に出現した白い虹】

朝陽が至仏山を赤く染め始める時間になっても一向に朝靄が晴れる気配はない。何とかつながる携帯でライブカメラを確認すると,至仏山の周囲には雲はなさそうだ。これなら,上空に出れば間違いなく至仏山や燧ヶ岳が見えるはずだと思い,真っ白な湿原からドローンを上空に飛ばす。あっという間に朝靄を飛び越え,上空に広がる至仏山や燧ヶ岳が織りなす光景がモニタに映し出された。時間とともに赤い光が照らす範囲は広がるが,見える景色に大きな変化はない。

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【上空から見た白虹。靄や霧が朝靄の上空にもあれば円になるのだが・・・】

光が湿原を照らす時間になると,朝靄も急激に動き始め,樹林帯から登る太陽がだんだんはっきり見えるようになる。この光があれば・・・ と太陽の反対側に目をやると,湿原の池塘の上にうっすらと待望の白い虹が架かる。今回はこの白虹と最盛期の紅葉が見たかったので,上空で地上で夢中でこの白虹をカメラに記録する。
撮影に没頭していると時間を忘れてしまうが,朝食の時間はとっくに過ぎていた。

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【東電尾瀬橋付近の只見川周りの紅葉】

小走りで小屋に戻り,朝食を食べていると小屋の前には小屋主さんを始め,宿泊客が何人か集まっている。見ると,この日一番はっきりした白い虹が,小屋の前に架かっている。しかもこんな時間に。急いで朝食を済ませ,カメラを持って外に出るが,その時もまだ白い虹は見えていた。この周辺はやはり条件的に白い虹が見やすい場所である事を実感した。その後は急速に朝靄が移動し,雲一つない秋空が昨日に引き続き広がった。

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【華やかだった尾瀬の紅葉も終盤戦】

龍宮小屋での今年最後のドリップコーヒーをじっくり味わいながら小屋主さんと談笑し,今年のお礼を言って龍宮小屋を後にする。
時間もあるし,天気も良いので尾瀬ヶ原をぐるりと回ろうと思い,見晴に向かう。今週末で今年の営業を終える山小屋が多く,既にいくつかの山小屋の周囲は雪囲いで囲まれ,間もなくシーズンが終わることを嫌が上にも感じさせていた。
東電小屋のヨシッポリ田代,只見川の拠水林の紅葉はややピークを過ぎてはいたが,最後の華やかな姿で出迎えてくれた。この日も相変わらず一日中雲のない天候で撮影には困ったが,紅葉に染まる尾瀬ヶ原の様子をスナップし,ドローンで空撮しては鳩待峠に向かった。

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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【ヨシッポリ田代付近から見た紅葉の尾瀬ヶ原と拠水林】
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秋は夕ぐれ・・・ 【1】 [尾瀬ケ原]

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【山の鼻に続く道の紅葉は終盤。落ち葉も目立ちその分,森が明るくなった】

10月14日(木)(快晴)
10月になると紅葉の色付き具合とともに気になるのが,山小屋や道路の開設状況だ。特に今年はコロナの影響もあり,営業形態が変則的だったので,いつもと同じように営業するのか,道路はいつまで通行可能なのか気になっていた。

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【テンマ沢周辺のもみじの紅葉。グラデーションが鮮やかでした】

やはり今年は宿泊客や登山者が増えつつあるとはいえ,早々に営業を終えてしまう山小屋が多いようだ。何度もお世話になった龍宮小屋もいつもより早く16日には小屋を閉めるという。尾瀬仲間も数名宿泊するというので,最終日に予約を入れ,その日を待つことにした。しかし,宿泊日はどうも天気予報がよくない。時間をかけて出かけていって撮影も思うようにできないのはやはり悲しい・・・。

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【陰り行く上田代】

できるなら最終日の予約を取り消して,少しでも天気の良さそうな前々日に泊まれないものか・・・。急いで荷物をザックに詰め込んで家を出た。テレビや新聞で日光の紅葉も見頃だと伝えられていたため,いろは坂の渋滞も十分予想できた。もし,渋滞に巻き込まれることなく戸倉に着けたら山小屋に電話を入れよう・・・。幸い,いつもの渋滞もなく,中禅寺湖,戦場ヶ原,そして戸倉に順調に到着し,その日の宿泊予約と最終日のキャンセルをお願いした。

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【徐々に日が傾き,至仏山の大きな影が尾瀬ヶ原を呑み込んでいきます】

バタバタと準備をして,大急ぎで尾瀬に向かったが,結局鳩待峠到着が午後2時30分。のんびり撮影している時間などあるはずもなく,ここでも慌ただしく山の鼻への道を駆け下りた。スナップ程度の写真を撮りながら・・・。前回の尾瀬から既に8日たっているが,あの時まだ早いと感じたダケカンバの紅葉は既にピークを過ぎて散り始め,森は隙間だらけになった木々の間から漏れる温かい色の光で満たされていた。小鳥たちの囀りもなく,静かな森に落ち葉を踏みしめる乾いた音が響く。流石にこの時間歩く登山者も数えるほどだ。

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【尾瀬ヶ原周辺は紅葉が見頃を迎えていた】

日帰り客は既に鳩待峠に向かっただろうし,宿泊客は山小屋で寛いでいると思われる時間帯なので,山の鼻に着いても閑散としていた。そのまま研究見本園を覗き,上田代に向かった。太陽はかなり傾き,至仏山のすぐ上で輝いている。このまま小屋に行って寝るだけでは何をしに来たのか分からないし,明日は飛ばせるかどうかも分からないので,まずドローンによる空撮を始める。日が傾き,赤い光が紅葉に染まる尾瀬ヶ原の周囲の森をさらに赤く染める。樹木や森の影が伸び,印象的な光景が広がる。しかし,あっという間に上田代は至仏山の大きな影に呑み込まれ,面白くない風景になってしまったのでドローンを回収する。のんびりしている暇はない。

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【夕陽を浴びた紅葉の森とそれを映す池塘】

尾瀬ヶ原周辺の山々の紅葉の見頃はやや過ぎたもののまだまだ赤く色付き華やかさを残す。あちこちに点在する池塘がその紅葉の森を映し出し,一幅の絵のようである。そして目の前には真っ赤に染まる燧ヶ岳・・・。誰も歩いていない貸し切りとなった尾瀬ヶ原の道を,何度も何度も歩みを止めてはスナップを撮り,暗くなる前に龍宮小屋に着いた。

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【赤燧ヶ岳。時間とともに赤さが際立っていきます】

一週間ぶりではあるが,あと2日で営業を終えると思うとやはり物寂しい。夕飯後,受付前でこの日宿泊していたMさんや小屋主さんと談笑をしながら,まったりとした時間を過ごした。昨日が上弦の月。月が沈む頃,撮影に繰り出すとするか・・・。

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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【龍宮十字路の付近から見る夕暮れの池塘と至仏山】
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色彩の競演【3】 [尾瀬ケ原]

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【寺ヶ崎(龍宮小屋付近)に登るオリオン座】

10月6日(水)(雨のち曇り時々晴れ)
連日,早起きを繰り返すと目覚ましをセットしなくても習慣で早々に目覚めてしまう。この日も5時頃に目が覚める。天気が気になって窓を開けて空を確認すると,木道はしっとりと濡れていた。ひょっとしたら朝ぐらいまで天気がもってくれるかも知れないという淡い期待は,一瞬で潰えた。これでは外も歩けない。朝食まで寝ていよう・・・,と横になって朝食の時間までぼんやりと時間を過ごした。

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【雨に煙る拠水林の紅葉(1)】

定時に食堂に向かう。尾瀬で撮影に追われることもなく,ゆっくりと朝食をとるのも本当に久しぶりだ。いつもならこの時間は撮影で忙しく動き回り,体がいくつあっても足りないくらいバタバタと過ごしている事が多いので,たまにはゆっくりするのもいいものだ。久しぶりの龍宮コーヒーを飲みながら次々と出発していく宿泊客を見送る。昨日から3連泊するというTさんも雨の中を尾瀬ヶ原を歩いてくると言って出かけて行った。

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【雨に煙る拠水林の紅葉(2)】

雨の中歩き出すのはなかなか気が進まないが,雨が小降りになるのを待って龍宮小屋を後にする。一時よりも雨の勢いも弱まり,霧雨程度になったので,スナップ程度だったら撮影できそうである。
雨に霞みコントラストの低くなった山々が墨絵のように浮かんでいる。カラカラと乾いた秋風に音を立てて揺れていた木々も雨に濡れ,本来の色を取り戻しより鮮やかだ。紅葉した葉やナナカマドの赤い実の先端にはたくさん雫をつけていた。

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【雨に煙る拠水林の紅葉(3)】

こんな日はドローンも飛ばせないが,雨に煙る湿原や低く流れていく雲を絡めて華やかな秋の尾瀬を切り取った。草紅葉から拠水林や山々に主役が移り,紅葉の見頃を迎えようとしていた。写真を撮りながらゆるゆる歩いていたら,徐々に雨も上がり,山の鼻に着く頃には青空も見えてきた。

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【マユミの実】

この日は「尾瀬学校」が行われているようで,中学生らしい生徒が次々に山の鼻に到着してはベンチで昼食をとり,慌ただしく尾瀬ヶ原へと向かっていった。徐々に天候は回復しているが,この状態で撮影しても良さそうな写真はあまり期待できないので,ドローンでの空撮は諦めて鳩待峠に向かった。

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【鳩待峠に向かう途中から青空の占める割合が広がってきた】

だんだん青空が広がり,そこから零れる光が赤や黄色の色合いを深める森を明るく照らす。そんな様子をベンチで休みながら眺めたりしながら峠への道を登っているとAさん,鳩待峠では再びKさんに会った。今回の尾瀬では毎日何処かで知人に会った。やはり,緊急事態宣言も解除になり,見頃となった紅葉を求めて多くの人が尾瀬に向かったのだろう。
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