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■錦秋の尾瀬に霜が降る[1] [尾瀬沼]

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【いよいよ始まりました本格的な黄葉が・・・】

□10月12日(木)晴れ 22,738歩
 例年だと日光や尾瀬の紅葉の見頃は10月の体育の日前後と相場が決まっていた。しかし,毎年気温が不安定で紅葉前線を予想するのが難しくなっている。特に今年は,かつてないほどの異常な夏だったので尚更だ。「温暖化が進むと温度変化が急激で秋や春が短くなる」とテレビ番組で聞いたことがある。今年はまさしくそれだ。あんなに暑かったのが嘘のように10月6日燧ヶ岳や至仏山などが突然初冠雪した。

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【写真に撮ると,見た目以上に黄色が強調されます】

 そうなると通常は草紅葉からじっくりと周辺の山々に紅葉の主役が移っていくのだが,一気に冷えると色付きが良くないばかりか,余り急激に冷え込むと紅葉する前に一気に枯れて落葉したり,色付きが悪くなってしまう。この雪が,そして急激な低温が今年の紅葉にどのような影響を与えるのだろう・・・。

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【透過光越しに見る紅葉も綺麗ですね】

 戸倉のバス停から大清水行きのバスに乗る。ここ数日,尾瀬は余り天候が良くなかったし,久しぶりに晴れが連続するとあって第1駐車場は既に多くの車で埋まっていた。戸倉についたバスからほとんどの乗客が降り,大清水に向かう車内に残ったのは僅か5・6名。秋の日差しが射し込む車内から外の様子をぼんやり眺めると片品川沿いの山々は,まだ紅葉には早い感じであった。大清水で一息つく暇もなく降車すると,一之瀬に向かうシャトルバスが準備を整えて待っていた。乗り継ぎもスムーズに済み,あっという間に一ノ瀬にいた。

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【十二曲りの黄葉ブナやミズナラが多く黄色い色が主流です】

 一ノ瀬橋の工事があるらしく,工事用の車やプレハブがたくさんあった。雪が降っても暫く工事は続くのかな・・・。この辺は戸倉よりは標高が高いので,木々が既に黄色く色付いていた。まだ本格的な黄葉ではないが,落葉してしまった森よりも,緑・黄・赤などのいろいろな色が入り乱れ,色彩豊かで美しい。

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【やはり,モミジの赤い色があると引き立ちます】

 最近は鳩待峠から入山することが多いので,いきなりの登りでペースが上がらない。岩清水で水分補給をすると,徐々に体も慣れてきた。透過光越しに見る黄葉もステンドグラスのようで綺麗だ。その色合いも高度が上がるにつれ,心なしか濃くなっていくように感じられた。三平峠に到着。しかし,これから先の木道の荒れ方が酷い。木道はほとんど朽ちているし,古い上に苔が生えていて滑りやすい。登山者に転倒に注意をと呼びかける前に,まずこの道を整備してほしいものだ。

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【何なんだ? このキノコは?】

 三平下に無事ついてベンチでホッと一息。休憩所は片付けられ,尾瀬沼山荘のテラスで昼食を提供していた。今年最後の営業かな・・・。ゆっくりしていると何やら周囲はツアー客で一杯になり,韓国語が賑やかに飛び交い始めた。こりゃたまらんと,早稲の砂風のベンチに移動して,秋風に吹かれながらのんびりと昼食にした。

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【トチノキの黄葉は色も形も面白いのでつい撮影してしまいます】

 取り敢えず早めにチェックインしようと長蔵小屋に向かう。そもそも尾瀬沼周辺は,針葉樹林が多いため紅葉の派手さはないけれど,やはりこの辺りの黄葉が一番鮮やかに感じた。午後の日差しや尾瀬沼の照り返しを受けてナナカマドやモミジが輝いていた。チェックインを済ませ,尾瀬沼周辺をゆっくり撮影しようと必要な物を持って周囲をウロウロしていると,旧ビジターセンター前で知人を見つけてしばし談笑。

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【カマッ堀湿原付近の黄葉,カラマツも徐々に色付き始めています・・・】

その後,場所を大江湿原に移動したが,ここでドローンに思わぬトラブル発生。(T_T) 尾瀬沼だけでなく尾瀬ヶ原,アヤメ平等で空撮を計画していたが全て水泡と帰した。残念な思いを引きずりながら長蔵小屋に戻り入浴,食事を済ませた。思わぬトラブルで心此処に在らず・・・ 空撮が出来ないのなら,明日下山しようとか,天気は良さそうだし尾瀬ヶ原には行かないと・・・とか考えた挙げ句,気を取り直してドローンを使う前のように,カメラ片手に地上からじっくり撮影することにした。しかし,当初予定していた三条の滝やアヤメ平を経由するのは見送ることにした。早朝の撮影準備を整えて,いつもの部屋のいつもの場所で早々に休んだ。

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【尾瀬沼と燧ヶ岳と黄葉と】
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■グリーンシャワー[2] [尾瀬沼]

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[芽吹きの始まった沼尻湿原と忙しく行き交う雲]

□6月5日(月)晴れのち曇り 29,354歩
 前回に続き今回も朝食を朝弁当にして,周囲をゆっくりと撮影するつもりだったが,ヤマドリゼンマイ等の芽吹きにはまだ早いし,朝靄なども出ていないため撮影するものがあまりない状態だった。取りあえず必要な物だけをもって大江湿原に出てみるが,休み明けの朝とあって湿原を散歩している宿泊客もほとんどいない。

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[尾瀬沼の静かな朝]

 既に燧ヶ岳中腹まで射し込んでいた朝の光が,大江湿原を照らす頃を待って空撮を始める。上空に上がったドローンから届けられるのは,朝陽を浴びて眩しく輝く至仏山,燧ヶ岳,そして尾瀬沼を取り囲む山々の映像だ。朝の穏やかで暖かい色の光が山上の楽園を包む。どこを見渡しても朝靄や朝霧はなく,いかにも尾瀬というような幻想的なイメージはないが,この穏やかな朝の時間は外せない。

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[早春の大江湿原。日一日と緑が濃くなっていく。]

 のんびりと撮影して小屋に戻ると,朝食の時間が始まっていたため食堂は混雑していたものの,2階に上ると辺りは静まりかえっていた。ここでいいかと昨日用意してもらった朝弁当を部屋で食べてから,出発準備を整えていると同室の方が戻って来たので少し雑談した。韓国からのツアー客を案内してきたのだという。そのグループの集合時刻が近づき小屋の前が賑やかになってきたので,その人と別れ,談話室でゆっくりとドリップコーヒーを飲み一服してから小屋を後にした。

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[長蔵小屋裏のシラネアオイ。霜害から逃れられたものは僅か。]

 荷物を預けて小屋の外に出る。この日も天気は良いし,時間もたっぷりあるので尾瀬沼を一周することにした。尾瀬で最も遅く開花するチシマザクラを何とかギリギリ見る事ができたので,次は,いつもこの時期にたくさん見かけていたサンカヨウを撮影したいと思っていたが,なかなか見つからないので,ビジターセンターの方に確認すると,シカに食べられてしまって数が激減したのだという。

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[沼尻湿原を上空から見ると意外に池塘が多いことが判明]

 そのサンカヨウを探しながら,沼の周りを散策する。時期的には見頃を過ぎたミズバショウも,森によって霜害から守られたため,真っ白なものが多かったのは,嬉しい誤算だった。まだまだ森の中に咲く花は少ないが,カッコウやウグイスの声を聞きながら歩く時間は最高の癒やしの時間となった。

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[未踏の地。治右衛門池とタソガレ田代]

 沼尻では,多くのツアー客が次々にやって来ては,休憩所のテラスで休んでいた。風はあるものの,夏至も近いこの時期は日差しも強く,やはり日陰が恋しくなる。沼尻周辺から,まだ訪れた事のない池や湿原を空撮して,早々に樹林帯に逃げ込んだ。

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[南岸道にたくさん咲いていたムラサキヤシオツツジ]

 来た道を戻ろうかとも思ったが,やはり暫く訪れていない南岸道を通って,予定通り尾瀬沼一周をすることにした。以前は,相当荒れていた木道や登山道もかなり整備され,安心して歩けるようになっていた。一カ所だけは,雪があったらかなり危険だろうなと思う場所はあったが・・・。

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[数が激減したサンカヨウ]

 やはり,見られる植物が北岸道とは違っていた。南岸道で印象的だったのはムラサキヤシオツツジ。時期的にもちょうど見頃を迎えており,それ以外にも多くの花に出会えたのは,こちらを回って良かった事の一つだ。

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[南岸道から見る燧ヶ岳とミズバショウ]

 三平下に着くと,ここでも多くの人がベンチで休んでいたので,自分もここで小休止してから長蔵小屋に向かった。
その後,長蔵小屋に預けていた荷物を受け取り沼山峠に向かったが,バスの接続が悪く,もう一つお目当ての檜枝岐での裁ちそばやハットウが時間切れで食べられなかったのは心残りである。
*空撮にあたり,DIPS2.0での機体登録・飛行計画登録,関係機関への連絡・調整済み。

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[新緑に包まれて,5月の風に吹かれているのは至福の時です]
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■グリーンシャワー[1] [尾瀬沼]

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[真っ青な空を背景に,新緑が眩しく輝いていた]

□6月4日(日)晴れ 19,621歩
 気温は少し高めに推移し,ほぼ例年通り,九州・四国地方は梅雨入りをした。関東地方の梅雨入りも時間の問題かというような状況だったが,この時期としては珍しい台風が日本列島付近を通過し,台風一過の晴天がもたらされた。この日を逃したら暫くは尾瀬には行けないかもと思い,尾瀬に向かった。
 前回,尾瀬ヶ原から尾瀬沼へ縦断する事が出来なかったので,今回も無理はせず,尾瀬沼だけをのんびりと歩くだけの計画にした。ついでに,久しく食べていなかった檜枝岐の裁ちそばやハットウも味わいたいとの思いもあった。

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[途中で寄り道をして撮影した「モーカケの滝」]

 日曜日なので,尾瀬の宿泊客は減る事が予想されたが,交通渋滞も考えられるので早めに家を出発した。高速道路は,貨物輸送のトラックが多数行き来していたが,それほどの混雑もなく御池に到着した。爽やかな風に吹かれて新緑が眩しく揺れ,ハルゼミの声がこだましていた。
 もちろん,途中でモーカケの滝や御池周辺の空撮も試みた。ただ,やはり台風の影響が若干残っていたのか,強風に煽られて何度か警告が出た。自動帰還もできない状況のため地図を見ながら手動で戻せと表示された時には,少し緊張したが,新緑に包まれたブナ林や残雪残る燧ヶ岳の様子を撮影した。やはり,こちらから空撮する機会は少ないので,見える景色は新鮮だ。

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[御池側から見る燧ヶ岳]

 がらんとした駐車場でゆっくり身支度を調えて,シャトルバスに乗り込む。すっかり新緑に包まれた沼山峠への道をバスに揺られながら進む。沼山峠休憩所に着くと,数名の登山者がテラスで寛いでいた。少しすると,団体客を乗せた大型バスが到着して,一気に辺りが賑やかになってしまったので,この団体が動き始める前に出発することにした。

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[チシマザクラが何とか咲いていてくれました]

 沼山峠展望台で荷物を下ろして,ここからほとんど見えなくなってしまった大江湿原や燧ヶ岳の空撮を始めた。幸い,大江湿原は山に囲まれているので強風の影響もほとんどなく撮影することができた。やがて,ツアー客の一行が尾瀬沼に向かい,元の静寂が戻った頃,また歩き始めた。

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[風が強く,大きな雲が激しく入れ替わります]

 大江湿原の入り口付近に到着すると,いつもなら出迎えてくれるはずのミネザクラは,すっかり葉桜となっていた。やはり,尾瀬沼もいつもよりも花暦は前倒しになっているようだ。また,尾瀬ヶ原同様,GW後の遅霜,降雪,低温の影響は顕著で途中にあったイワナシやミズバショウ等の葉や苞は茶色に変色し,見るも無惨な姿に変わり果てていた。ただ,一歩森に入るとその影響から免れた花たちが生き生きとした姿を見せてくれていた。

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[森の中のあちこちで見られたコミヤマカタバミ]

 風に吹かれながら,のんびりと大江湿原を散策した。湿原内では,ミズバショウの他,イワカガミ,タテヤマリンドウ,キジムシロ,リュウキンカ,チシマザクラ,ミネザクラ,ワタスゲの果穂等が数は少なめだったが出迎えてくれた。また,あちこちでコバイケイソウがたくさん芽吹き,今年は当たり年になりそうな予感を漂わせていた。

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[尾瀬沼の畔のテラスからの今年最後の花見]

 元長蔵小屋横の尾瀬沼の畔のベンチ荷物を下ろし,見慣れたこの光景に包まれながら,ウグイスの声に耳を傾け,食事をするのは至福の時間だ。その後,受付を済ませ,荷物を置き周辺をサンカヨウの花を探してウロウロする。以前はたくさん見かけたこの花も,ビジターセンターの話では,シカの食害にあって近年はめっきり数が減ったという。

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[大江湿原の中でも,大江川の周囲だけが緑色に]

 いったん小屋に戻り,風呂と食事を済ませてから,再度カメラを持って周囲を歩く。カマッポリ湿原では森林側の川沿いに僅かにミズバショウが咲いていたが,完全に見頃は過ぎていた。ただ,沈みかけた夕陽の照らされたコバイケイソウの葉やミズバショウの苞が綺麗だった。上空を盛んに雲が行き来していたので,久しぶりに夕焼けが見れそうだと心躍らせる。

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[沈み駆けた夕陽に照らされるコバイケイソウの葉とミズバショウの苞]

 やはり,思った通り,期待以上の夕焼けに包まれ,30分後には尾瀬沼は穏やかに眠りについた。ストーブの付いた談話室に戻り,今年初めてという夕焼けを見れた余韻に浸った後は,宿泊客2名の相部屋に戻って休んだ。
*空撮にあたり,DIPS2.0での機体登録・飛行計画登録,関係機関への連絡・調整済み。

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[今年初となる尾瀬沼での夕焼け]
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■紅に染まる燧ヶ岳[1] [尾瀬沼]

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【夕陽も皿伏山の肩に沈んでいくような季節になりました】

9/30(金)~10/2(日)に,御池~尾瀬沼~燧ヶ岳~御池のコースで尾瀬を歩いてきました。その様子を一日ごとにまとめようと思いますので,ご覧ください。

□9月30日(金)快晴  13,947歩
檜枝岐や尾瀬の山小屋に写真集を届ける時に尾瀬を歩いてこよう,可能ならば燧ヶ岳に登りたいと思った。
秋雨前線や台風の影響で続いた不安定な天候も一段落して,秋らしい天候が戻って来そうなので山小屋に電話をするが,長蔵小屋は既に満館,尾瀬沼ヒュッテのカプセル部屋に空きがあった。山小屋でカプセル部屋?との戸惑いもあったが,どんなものか見ておきたいという気持ちもあり,直ぐに予約を入れた。

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【沼山峠付近から見た大江湿原と尾瀬沼】

御池から9時30分発のEVバスに乗り込む。御池周辺のブナ林はまだ紅葉には早い感じだが,尾瀬が燃えるような紅葉に包まれる季節はもうすぐそこまで来ている。

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【草紅葉が見頃となった大江湿原】

沼山峠休憩所の中は売店部分が取り払われ,広い空間にテーブルと長椅子が数組,寂しそうに置かれていた。尾瀬の山小屋や休憩所が,災害・後継者不足・採算の悪化の関係で,次々に閉鎖や縮小されていくのを見るのは,かつての賑わいを知る者としては寂しい限りだ。

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【初秋の午後の光を受けて輝く尾瀬沼】

久しぶりの沼山峠の道を秋の乾いた空気を体いっぱい吸い込んで,一歩一歩辿っていくと,あっという間に沼山峠展望台に到着。以前は大江湿原や尾瀬沼がよく見えたが,今では周囲の樹木が生長して尾瀬沼が少し見える程度だ。しかし,ドローンから送られてくる映像には,尾瀬に通い始めた頃に見た懐かしい光景が,映し出されていた。その後,草紅葉のピークを迎えた大江湿原に移動して,午後のまったりした尾瀬沼を空撮した。

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【午後のまったりとした時間が緩やかに流れる尾瀬沼】

長蔵小屋に写真集を納品して,尾瀬沼ヒュッテに向かう。長蔵小屋でも個人で宿泊する時は2段ベッドの部屋になることが多いので,カプセル部屋についてはそれほど心配はなかったが,使い心地はどんなものだろう・・・。

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【夕陽を浴びて輝く三本カラマツ】

尾瀬沼ヒュッテにカプセル部屋が設置されたのは2020年で,全部で4室。1つの部屋には6つのカプセル式個室があるが,現在はコロナの影響で3つしか使えない。カプセル部屋には,調光式ライト,アロマ付換気扇,アラーム,コンセントなどがあるほか,高反発マットやクリーニングされたシーツや枕カバーも用意され,思っていたよりも機能的かつ清潔で使いやすかった。しかも,1泊2食付きでは尾瀬で一番安く泊まれる。

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【ナナカマドも輝く尾瀬沼の水面の光を受けて輝きます】

夕食まで時間もあったので,撮影機材を持って尾瀬沼周辺や大江湿原をうろうろする。日没が近くなると雲が上空を行き来し,傾きかけた夕陽の赤い光が,尾瀬沼の澄んだ空を,ゆったりと波打つ水面を,秋色に染まり始めたナナカマドを,より色鮮やかに染め上げた。撮影を終え小屋に戻る。
夕食後,アロマの香り漂う部屋で早めに横になって明日に備える。外はかなり冷えていたが,明日は大丈夫だろうか・・・
*空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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【元長蔵小屋の夕暮れ】
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■真夏の光溢れる尾瀬へ[3] [尾瀬沼]

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【大江湿原にかかる白虹とレンゲツツジ】

□7月2日(土)晴れ 21,048歩
深夜になって目が覚め,みんなが寝静まった廊下を足音を忍ばせ,外に出て確認すると満天の星空が広がっていた。昨日よりも更にスッキリ星が見えていたので,この日も小一時間星の撮影をする。深夜の時間帯は尾瀬沼から立ち上がる天の川が印象的だった。頭上には夏の大三角が輝いていた。体も冷えてきたので部屋に戻って一旦休憩。
そして,いつもの事ながら二度寝するとついつい寝過ごしてしまう。この日も気が付くと外はすっかり明るくなっていた。大急ぎで小屋を出る頃には既に5時近くなっていた。燧ヶ岳山頂には既に朝の光が射している。湿原はこの時間まだ真っ白な朝靄に覆われていたので,あちこち撮影しながら大江湿原を進む。

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【朝靄に覆われ幻想的な朝を迎えた大江湿原】

この暑さ続きで開花が遅れていたレンゲツツジがちょうど見頃を迎えていた。ワタスゲも大きくなった果穂に朝露を蓄えていていい感じである。所々にあるヤマドリゼンマイもまだ十分開ききっていない若々しい葉が伸びをしていた。あちこちで様々な命が躍動していることを実感する。

大江湿原の朝靄は,尾瀬ヶ原ほど濃くならずにすぐに晴れてしまうので,ベンチからドローンで空撮を始める。大江湿原や尾瀬沼は一部が朝靄の下で眠っていたが,北東の空から光が差し,森を照らし始めると,状況が激しく変化する。朝靄がだんだん薄くなり,今まで見えなかった三本カラマツも見え始めた。そして,その光が自分のいる場所を照らし始めると,朝靄をスクリーンにしてうっすらと大きな弧を描いた。白虹だ・・・。

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【上空から見た白虹。地上と違って白虹はスクリーンとなる朝靄があれば円形となります。】

朝靄が立ちこめにくく直ぐに消えてしまう大江湿原では,尾瀬ヶ原ほど白虹が見える確率は高くない。以前は白虹に対する認識も低かったので見過ごしていたこともあるかも知れないが,昨年まで一度も尾瀬沼で白虹を見たことがなかった。っそれが,昨年の同時期に初めて遭遇して大喜びしたものだが,それを2年連続で見ることが出来るとは・・・。舞い上がる気持ちを抑えながらドローンや地上から,つきまとうブユに何度も邪魔をされながらも何度もシャッターを切った。

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【朝露に濡れた湿原が朝陽を浴びて一つ一つの水滴がきらきらと輝きます】

この頃になると加速度的に朝靄が晴れていく。気が付くと朝靄が佇んでいるのは,尾瀬沼の一角だけとなり,静かなしっとりとした尾瀬沼の畔の朝があった。朝露に濡れたワタスゲや湿原が朝日に照らされて輝き,揺れていた。こうした風景をカメラに収めながら小屋に戻った。

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【霧に包まれた樹林帯の朝靄も激しく動き,みるみる晴れていきます。】

部屋に荷物を置き,やや薄暗い落ち着いた雰囲気漂う食堂でゆっくり朝食を頂く。撮影を終えた後のこのまったりと流れる時間もまた捨てがたい。
食後,談話室で情報を確認してから,御世話になったスタッフに挨拶をして一旦チェックアウト。荷物を預け,カメラだけを持って大江湿原を散策する。

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【朝靄は徐々に尾瀬沼の方に移動していき,消滅します。】

湿原内の日陰にはまだ朝露が残り,しっとりとした朝の風情が残っているが,だんだんと日差しが強くなってきた。今日もまた暑くなりそうだ。沼山峠からは次々と人がやってくる。今日は週末なので昨日以上にたくさんの登山者で賑わうことだろう。ニッコウキスゲの蕾もあちこちで見られ,本格的なシーズンがもうすぐそこに来ていることを教えてくれる。

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【朝露に濡れたレンゲツツジ。この暑さで一気に見頃を迎えた。】

最後に三平下の尾瀬沼山荘売店に立ち寄り,ヤマスタのスタンプラリーをコンプリート。ここのダケカンバの森の木陰で,風に吹かれながら,尾瀬沼に打ち寄せる波の音を聞きながら夏の尾瀬をじっくり味わい,心に刻んでから尾瀬の地を後にした。

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【ワタスゲのピークも間もなく訪れそうです。】

*空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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色彩の競演【1】 [尾瀬沼]

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【夕陽を浴びたナナカマドと燧ヶ岳】  

10月4日(月)(快晴)
コロナの新規罹患者が急速に減り,9月末をもって緊急事態宣言も解除された。さらに,尾瀬は紅葉のベストシーズンを迎えようとしていた。当然の如く気持ちは尾瀬に向かう。上陸が心配された大型の台風も大きな被害をもたらすこともなく,日本を掠めていった。その後は秋らしい晴天が数日続くようだ。

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【透過光で見るとホオノキの黄葉もより一層輝く】

この時期になると尾瀬の紅葉の進み具合が気になる。所用で台風一過の秋晴れを落ち着かないまま2日間過ごし,4日からの入山となった。御池周辺のブナの紅葉にはまだ早いだろうと判断し,大清水から入山後,尾瀬沼から尾瀬ヶ原を歩くコースを選ぶ。
大清水に向かうバスの接続を考え,戸倉に車を置いて路線バス,タクシーを乗り継いで一ノ瀬に向かう。接続がうまくいき,あっという間に秋色に染まった一ノ瀬の森の中にいた。

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【尾瀬沼の沼尻南西部の未踏の湿原と池塘。治右衛門池,タソガレ田代,かたわれ田代】

この時期のお気に入りのコースの一つ,一ノ瀬から三平峠への森を歩く。透過光越しに見るブナの葉はまだ緑色が残っているものの黄金色の光を放ち,眩しく輝く。さらに,周囲を見渡せば,ツタウルシ,オオカメノキ,ナナカマドなどの赤やオレンジ色の葉が所々に鏤められ,彩りを添えている。鮮やかかつ多彩で森全体が華やかさに満ちあふれている。全体的に見れば紅葉のピークには少し早い感じだが,樹木の種類によっても,個体差によっても見頃は異なるので,生きのいい紅葉を見るにはちょうど良い時期なのかも知れない。

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【檜の突き出しの黄葉と輝く尾瀬沼】

岩清水のベンチで休んでいたらKさん,三平下に向かう途中でMさんと暫くぶりに遭遇し,談笑することができた。三平下では,尾瀬沼山荘の売店も久しぶりにオープンし,売店前のベンチにも人が溢れ,平日だというのに多くの人で賑わっていた。緊急事態宣言が解除された上,紅葉のベストシーズン,そしてこの好天である。皆,尾瀬に向かうこの日を待ち焦がれていたのだろう。

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【尾瀬沼に沈む夕陽もこんな南に寄ってしまった】

混雑を避け,早稲の砂風のベンチに移動して,空撮をしていたところ,いきなりドクターヘリが直ぐ近くまで飛んできた。しかも,暫くそこでホバリングしていて,スピーカーで何か言っていたが,ヘリの音が五月蠅くて何を言っているのか聞き取れない。どうも,負傷者を輸送するのでそこを空けろと言うことらしい。飛ばしていたドローンを急いで回収,避難し,三平下で休憩していた人と成り行きを見守った。ヘリから降りてきた2人の隊員が,負傷者と関係者をロープを使ってヘリに乗せ,あっという間に飛び立った。その間,15分。その後には,ヘリの風圧で木が折れ,飛ばされた落ち葉が空しく吹き溜まっていた。

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【暫くぶりに訪れた大清水平】

静寂が戻った三平下の一角でゆっくりと昼食を食べてから久しぶりに南岸道を歩いた。荒れ放題だった登山道もかなり修復され,歩きやすくなっていた。南岸道は,登山者も少なく,一部で沼の畔に立てることや燧ヶ岳の全容が見れるのがいい。途中から久しぶりに大清水平に向かう。登山道を塞いでいる倒木を避け,思い出を辿りながら山道を進むとぽっかりと青い空が広がる湿原に飛び出す。

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【大江湿原の草紅葉とカンバの森の黄葉】

十年以上訪れていなかったこの湿原。「あぁ・・・」木道や二カ所あったベンチも朽ち果て,時の移ろいを感じさせる。そこに立ち,風の音に耳を澄ますと,あの頃の空気感や思い出が蘇ってくる。ここで過ごした時間はここに閉じ込められたままになっていた。長い時間,思い出に浸り時を過ごした後は,長蔵小屋に向かう。

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【久しぶりに明かりが灯った「元長蔵小屋」】

この日の長蔵小屋は,平日にも関わらず満館になり,週末以上の賑わいを見せていた。小屋主の太郎さんに声をかけられ,囲炉裏の部屋を覗くと懐かしい紀子さんや佑さんがいて,談笑することができた。夕暮れ時には日差しも見れたが,思ったような夕焼けや星空には出会えなかったので,この夜はゆっくりと休んだ。

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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梅雨明けの尾瀬を歩く【3】 [尾瀬沼]

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【尾瀬沼を見守るように広がる銀河と夏の大三角】

7月20(火)(晴れ時々曇り)
上弦の月が沈む頃,上空を確認すると気持ちよいくらいに空一面に夏の星空が広がる。準備しておいた三脚を持って小屋の外に出ると,目の前をライトに照らされたたくさんの霧が行き交う。明朝は朝靄が期待できるかも知れない・・・。沼畔に三脚を立ててじっくりと星を撮影する。登山者も皆,寝静まり,物音一つ聞こえない静かな尾瀬沼を見下ろす天の川が尾瀬沼上空に大きく横たわり,夏の大三角が明るく輝く。

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【水分が多いせいかいつもより長い時間,朝靄が大江湿原を覆った】

他にも小屋の周辺で何枚か撮影したが,撮影開始が遅かったせいか,それほどしないうちに空が明るくなり始めたので,一旦小屋に引き上げた。1時間にも満たなかったが,尾瀬の夏の夜の満天の星空を貸しきりで堪能させてもらった。
宿泊者が寝静まり,静かな小屋の中を静かに部屋に戻り,一旦休憩。

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【定番ポイントから見る朝靄の大江湿原】

冷えた体が温まり,気持ちよくなったせいで、少し寝過ごした感じだが,再度必要な機材だけを持って小屋の外に。やはり,期待通り大江湿原にはいつも以上の朝靄が立ち込めていた。元長蔵小屋横のテラスでは,数名のカメラマンが三脚を立ててスタンバっていた。朝靄越しにうっすらと山頂が赤く色づいた燧ヶ岳が見える。既に上空では,モルゲンロート劇場が始まっているに違いない。

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【少し上空から。朝靄に包まれる大江湿原の朝】

そこで数枚撮影して,大江湿原に移動する。やはりキスゲは少ないな・・・。かつても裏年にはこのようなこともあったが,最盛期のニッコウキスゲの群落を知る者としては,今の尾瀬の状況はやはり寂しさを感じてしまう。しかし,数も分布している場所も限られるが,ちょうど見頃を迎えたニッコウキスゲが朝露に濡れ,小さなしずくの球をたくさん蓄えて朝陽が射すのを健気に待っていた。

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【今年のニッコウキスゲは時期的には見頃でしたが,完全な裏年でした】

ここで空撮開始。既に燧ヶ岳山頂を照らしていた朝陽は,尾瀬沼西岸を照らし始めていた。朝靄も大江湿原付近に澱んだままだ。試行錯誤しながら空撮に没頭していると,いつの間にか大江湿原にも光が差し込む。うまくすればここで白い虹が見れるかも知れない・・・。よく目を凝らすと朧気ながら三本カラマツを取り囲むように半円のアーチが見えた。

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【動き始めた朝靄に朝日が差し込み幻想的な光芒があちこちで見られた】

初めて尾瀬沼で見る白虹。大江湿原は地形の関係もあって,湿原に日が射す遅い時間まで朝靄が留まることが少ないため白い虹を見る機会がほとんどない。自分自身,今まで写真で見ただけで実物を見たのは初めてである。上空でドローンを飛ばしていたので,上空から見た大江湿原の白虹の撮影が一段落してから地上からも撮影した。しかし,この頃にはちょっと薄い白虹となってしまったのはちょっと心残りではある。

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【尾瀬沼で初めて見た白虹を少し上空から】

それにしても,予想以上に条件に恵まれた朝だった。大江湿原を少しだけ散策して,小屋に戻り朝食をとった。
久しぶりに太郎さんと談笑して,荷物を纏めて小屋を出る頃にはすっかり夏空が広がる真夏の尾瀬が目の前に広がっていた。

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【大江湿原で見る白虹。上空からパノラマ撮影】

夏の草が青々と茂る早稲の砂風のベンチに荷物を下ろし,最後の空撮を行い,尾瀬を後にした。梅雨明け10日。比較的天候は安定していたものの雷雨あり,夕焼けあり,白虹ありで充実した3日間を過ごすことが出来た。

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【朝靄立ちこめる尾瀬沼の朝】

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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春の息吹きの中で【3】 [尾瀬沼]

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【尾瀬沼に浮かぶ夏の星座】

■6月11日(晴れ)
今夜は新月。天候さえ許せば絶好の星景写真撮影日和だ。尾瀬沼は尾瀬ヶ原に比べて夜霧や朝靄も出にくいので星の撮影には都合がいい。深夜にふと目が覚めて窓の外を確認すると,雲一つない満天の星空が広がっていた。

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【明ける大江湿原。尾瀬沼の朝靄が立ちこめている時間はそれほど長くありません】

昨夜は星の撮影を諦めていたので,条件の揃ったこの日は寝るわけにいかない。小屋の周りをカメラを担いで歩き回り,所々で撮影を繰り返す。尾瀬沼の南側には,なだらかな皿伏山しかないため,低い位置にある蠍座もしっかり撮影できた。短い時間で引き上げるつもりでいたが,熊よけにつけたラジオを聞きながら1時間ほど撮影を続けて部屋に戻った。

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【朝陽に染まる尾瀬沼】

日中の気温は高いとはいえ,やはり夜は相当冷え込んで体も冷えたせいか,布団に入って温まると直ぐに眠ってしまった。
寝過ごさなければいいけどと思いながらも目覚ましを設定する前に眠りについてしまったようで,気付いた時には既にライトがいらないくらいに明るくなっていた。「やばい・・」

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【朝日を浴びる三本カラマツ】

必要な機材だけを詰め込んだリュックを担いで小屋を出る頃は,燧ヶ岳の山頂は朝陽を浴びて赤く染まっていた。大江湿原には僅かだが朝靄が漂い,初夏の朝らしい爽やかな光景を見せていた。まず,小屋の周りを簡単に撮影してから,ドローンで撮影を始めた。

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【陽が当たると僅かについていたしもが溶け出し,輝く】

朝靄もまだ消えずに残ってはいるものの,尾瀬沼周辺の朝靄は薄く控えめで,上空からではそれほどの存在感はない。上空からは,遠く至仏山や景鶴山も見ることが出来る。季節や時間が変わると見えてくるものや撮りたいものが毎回変わってくる。今まで気付かなかったものを見つけては驚き,心躍らせながらも撮影を進める。手を変え品を変え,同じような場所をあてもなく何度も飛び回る。だから,できあがった写真や動画はいつも行き当たりばったりになってしまうのだが・・・。

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【僅かに霜が付いたコバイケイソウの葉】

そして,朝陽が大江湿原にもやっと届くと,その光は真っ先に三本カラマツを照らし出す。スポットライトを浴びた舞台女優のように,凜と立つ大江湿原のシンボルを浮かび上がらせる。朝靄でしっとりと濡れたカラマツの葉がきらきらと煌めき,そして輝く。その儚くも美しい瞬間を夢中で記録した。

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【ヤマドリゼンマイも朝露に濡れ,生き生きとしていた】

気付くと大江湿原を包んでいた朝靄はいつの間にか消え去り,眩しい光が辺りを照らしていた。ドローンでの撮影を一旦休止して,眩く輝く湿原の表情を切り取る。ドローンを飛ばすことに夢中で見逃していたが,木道や湿原には僅かに霜が降り,小さな花やコバイケイソウは白く縁取られていた。しかし,それも束の間,朝陽を浴びた場所から,その僅かな霜が溶けて朝露をとなって輝く。一本一本の草までもが美しく,そして儚い。一期一会の貴重なこの瞬間が消えてしまう前に記録しなくては・・・ 

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【この時期としては大変珍しく,3日間晴れてくれました】

時間も忘れて夢中で撮影していると,いつの間にか朝食の時間になってしまったので急いで小屋に戻る。食事を済ませ,朝のコーヒーで一服。朝の撮影をすませた後の至福の時。このまったりとした時間がたまらなく好きだ。
荷物を纏めて小屋を出発する頃には,太陽は高く,空はからっと晴れ渡っていた。今日も天気は良さそうだ。梅雨入り前のこの3日間,奇跡的に晴れてくれたことに感謝したい。思うような撮影もできたし,久しぶりに山小屋でゆっくりすることもできた。三平峠を越え,賑やかなハルゼミの声を聞きながら,のんびりと大清水に戻った。

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです

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【不明です。どなたかご存知でしたら宜しくお願いします・・・】
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尾瀬清秋【1】尾瀬沼編 [尾瀬沼]

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【一ノ瀬~三平峠間の紅葉。ここ紅葉も色彩豊かで美しい】

2020.10.13~15 
尾瀬沼から燧裏林道を通り,尾瀬ヶを歩いてきました。その時の様子を備忘録程度にまとめておきました。お時間のある時にご覧ください。

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【透過光越しに見る紅葉はやっぱり別格である】

■10月13日(火)曇り時々晴れ
前回尾瀬を訪れてから約10日。紅葉のピークはこの頃と予想し,新型コロナウィルスによる失われた旅行需要の回復や観光関連消費喚起のための「Go To Travel」キャンペーンも利用して宿を予約した。このキャンペーンでは宿泊費用の35%割引+地域共通クーポン券が配布されるという。

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【ブナやトチノキなど紅葉はそのピークを迎えようとしていた】

今回の目的は,なかなか訪れる事のできない紅葉のベストシーズンに尾瀬を歩くことである。そこで今回,絶対に外せないと思ったのが,大清水~三平峠,そして御池~赤田代を結ぶ燧裏林道である。特にこのルートはブナ等の紅葉が圧倒的に綺麗な場所である。天気は3日間とも曇りの予想だが,少しだけも晴れてくれたら・・・と祈るような気持ちで家を出発した。

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【沼尻付近を空撮。湖面の色合いが独特である】

直前まで雨が降っていたこともあり,出発はいつもよりも遅め。大清水~一ノ瀬間はまだ紅葉には少し早い。時間節約ということでシャトルバスに乗り,大清水を午前8時に出る。一ノ瀬について辺りを見回すと,今を盛りと色を競い合うブナ・クヌギ・モミジ・ カエデ・ダケカンバ等が雨に濡れ,より一層その色合いを深めていた。黄色やオレンジ色を主体とした尾瀬の紅葉は,全山燃えるような紅葉と呼ぶほどの派手さはないが,落ち着いた美しさがある。

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【草紅葉とカンバの森の黄葉が尾瀬沼の秋を演出している】

いつもなら汗を流しながら,ただひたすら登るだけの道であるが,あちこちで歩みを止め,写真を撮りながら進むので退屈しない。じっくり進むためそれほど疲れることもない。岩清水を過ぎた頃から,雲間から漏れた光が黄葉した木々を照らす。それまでも十分過ぎるくらい綺麗だったが,透過光で見る黄葉は何十倍も鮮やかだ。やはり太陽の力は偉大だ。この時とばかりにカメラを次々に変えては何枚もシャッターを切るため,益々ペースは遅くなる。

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【通称「カンバの森」と呼ばれているがちょっと上空から見るとその全体像が見える】

13時30分頃に三平下に到着。秋のシーズン真っ最中なのにそれほど混雑はしていない。天候は相変わらず,時々,陽は射すものの圧倒的に雲が優勢。風も強い。早稲の砂風のベンチに荷物を置き,のんびりとお昼を食べながら天候の回復を待つ。風が強いのでちょっと不安はあったが,何度かドローンを飛ばしての撮影も試みた。

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【ほとんど雲に覆われ,晴れ間の少ない日だったが,要所要所で晴れてくれた】

さらに,宿泊先の長蔵小屋周辺を歩き回っているとだんだん日差しの出ている時間も長くなってきた。それでも猫の目のようにくるくる変わる天気で,その後,また急に雲が厚くなり雨が降りそうな天候に変わってしまったので,早々に小屋に入って寛いだ。
(尾瀬清秋【2】に続きます)

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【トチノキの黄葉。自然が作り上げるものは細部まで丁寧に作られていると改めて思う】

※ドローンでの空撮に当たっては国交省DIPS・FISS登録,関係機関への連絡調整済みです。
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梅雨空の下の尾瀬縦断【3】 [尾瀬沼]

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【直前までの激しい雨が信じられないくらい,突然空が赤く染まり出しました】

 明るくなってきたので,窓から外を見ると一面の雲に覆われ燧ヶ岳さえ見えない。とても撮影できる状態ではないので,そのまま布団に潜り込み微睡んでいるとそのうち激しい音を立てて猛烈な雨が降り出した。眼を閉じその音を聞いていて安心したのだろう,暫く眠ってしまった・・・ 。ふと気付くとそろそろ日の出の時刻が迫っている。

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【待ち望んでいた青空と夏の雲とニッコウキスゲのコラボ。最後の最後にやっと出会えました】

 窓から見える空は一部が赤い色に染まっている。ひょっとすると・・・ カメラを持ち出してサンダルを履いて急いで湿原まで走る。時間とともに尾瀬沼を覆っていた雲がみるみるオレンジ色に染まり出す。いつしか東だけでなく南の空の雲も赤く色づいてきた。ほんの10分程度の短いドラマだったが何があるか分からないものである。ビショビショになった靴下を履き替えるため小屋に戻るといつもの梅雨空に戻ると,また雨が降り出した。

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【光が戻った大江湿原。でもこのくらい高いとキスゲの群落はわかりにくいです】

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【小淵沢田代への分岐から尾瀬沼方向を望む】

 ゆっくり食事をとり,朝食後のコーヒーをゆっくり飲んで雨が上がるのを待ってゆっくりチェックアウトした。ウェザーニュースの天気予報では,午前中に雲がとれる予報が出ているのでせっかく来たのだから青空に揺れるニッコウキスゲが見ようとビジターセンターで待機するが,なかなか天気は良くならない。館内やビジターセンターの周囲をぶらぶらしていると,そのうち徐々に空も明るくなってきたので荷物を担いで大江湿原に繰り出す。

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【燧ヶ岳もやっと顔を見せてくれました】

雨に濡れながらもコオニユリもいくつか咲き出していた。そんな瑞々しい高山植物を撮影しながら待っていると,急速に雲が取れ,みるみる青空が広がった。この3日間,青空らしい青空はほとんど見ていなかったので,青空欠乏症になっていたのだろう・・・。青空を入れ込んだ写真を何枚も撮影してしまった。青い空と白い雲,そして夏の風に揺れるニッコウキスゲ・・・ 見たかったものが全てそこにあった。

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【朝の雨に濡れしっとりとしたニッコウキスゲ】

ニッコウキスゲのピークは数日前であることは明白だが,まだまだ見応えのある状態である。思い返せば,本当にこの3日間よく雨が降った。しかし,それは夜とか朝の時間だけで,日中歩くのにはほとんど支障がなかったし,何より雨続きのこの天候の中で最後の最後に夏空広がる尾瀬を歩けたことに感謝したい。

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【コオニユリも咲き出しました。朝降った雨のしずくが綺麗です】

【空撮に当たっては関係諸機関の許認可を得て撮影しております】
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