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■草紅葉の季節[2] [尾瀬ケ原]

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【広がる雲海に満ちあふれる朝の光】

 10名ほどの宿泊者が寝静まる龍宮小屋の周囲を真っ白な霧が覆う。小屋周辺が朝靄に覆われるのはいつものこと。必要な荷物だけを持って,小屋のWi-Fiに繋いで状況を確認すると,晴れの予報のままだがライブカメラは暗くて様子が分からない。仕方なく情報収集は諦めて,小屋を後にする。

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【180度向きを変えると,雲海上には白い虹が広がる】

 真っ白な朝霧に覆われ鳥や虫の声も全くない静かな木道を辿ってヨッピ橋方面に向かう。木道周辺はすっかり仮払いされているため,靴やズボンが朝露でビショビショになってしまうことがないのはありがたい。いつもなら霧が晴れる時間帯になっても周囲の様子は一向に変わらない。今日は,霧が濃いのかも知れないと思い,状況が改善するのを待ちきれず,ドローンを上空に飛ばす。

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【ヤマドリゼンマイ黄葉と白い虹】

 朝靄が立ちこめていても,いつもならほんの数秒で,朝靄の上にから真下に広がる朝靄の彼方に燧ヶ岳や至仏山を見ることが出来るのだが,今回はそうはいかない。いつもよりもはるかに長い時間をかけてやっと雲海の上に出ることができた。

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【朝霧が晴れて,やっと初秋の朝が訪れた・・・】

上空は願い通りの青い空が広がり,雲海の彼方には尾瀬を取り囲む山々が聳えていた。雲海の上に日が射し込むと漂う雲が朝の光を受けて赤く染まる。荘厳な朝のドラマの始まりである。上空に行けば早い日の出となり,低空になるほど雲や周囲の山の遮られて日の出は遅くなるが,その分赤さは失われてしまうので,ちょうどいいタイミングだった。

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【ヤマドリゼンマイの黄葉が進む尾瀬ヶ原】

 しかし,この時間帯は,雲海を撮影してしまうとそれほど変化がないので,30分ほど飛ばしてから撤収した。この日は,靄と言うよりは霧で,空気中を漂う水滴の粒も大きく,比べものにならないくらい濃かったので,暫く待ってもこの霧が晴れることはなさそうだったので,一旦小屋に戻って朝食を食べてから出直すことにした。こんなことなら,朝弁にしておくべきだったな・・・・。

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【漸くヤマドリゼンマイも黄色く色付き始めました】

 急いで小屋に戻り,朝食を済ませて部屋を片付けて小屋を出るまで,この霧は晴れることはなかった。食事中に霧が晴れ,この日のクライマックスを見損なったら,絶対に悔いを残す結果となったと思うが,朝食が終わるまで何とか霧が晴れるのを待っていてくれたようで嬉しかった。あわてて食べたので消化不良気味だが,また同じ道を通ってヤマドリゼンマイのポイントに着く頃,上空を覆っていた霧が少しずつ晴れ,青い空が見え隠れする。そして,隙間から漏れた光が湿原を覆う朝霧に射し込み・・・ 白い虹が現れた。

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【進む尾瀬ヶ原の草紅葉】

 黄色に染まったヤマドリゼンマイの群落の上に低い白い虹がアーチを架ける。時刻は7時30分を回り,太陽も高くなっていたため,その分,虹は低くなる。慌ただしく地上の様子を撮影してからドローンを上空に向かわせると,あっという間に霧が消えてしまった。雲も霧もないピーカンの空の下の湿原では少し物足りない。贅沢は言うまい・・・。このような完璧な条件で撮影できるのも中々ないことなので,じっくり空撮して再度,龍宮小屋に戻った。

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【初秋の空を映すイモリ池】

 小屋では,朝の清掃が始まっていたが,この後は鳩待峠経由で帰るだけと決めていたので,小屋の常連のHさんと談笑したりてまったりと過ごす。10時ごろまでだらだらして帰路につく。まだまだ強い秋の日差しを受けて黄金色に輝く湿原を撮影をしながら,鳩待峠に着いたのは16時頃だった。

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【ダケカンバも少しずつ色付き始めました】
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■草紅葉の季節[1] [尾瀬ケ原]

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【ヤマドリゼンマイも日に日に黄色く色付いていきます】

□9月15日(木)晴れのちくもり
 例年,行われている尾瀬でのオフ会は3年連続で中止が決まった。コロナが流行の兆しを見せ始めた頃,まさかこんなに長引くとは全く予想できなかったことだが,健康上の懸念がある以上,無理に開催することも出来ないだろう。

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【池塘はたくさんのヒツジグサで覆われ輝いていました・・・】

 しかし,そんな年でも時間と共にどんどん季節は進んでしまう。ヤマドリゼンマイなどの草紅葉も既に始まっているという,情報もたくさん飛び込んできて,尾瀬に向かう日を探したが,好天が長続きしない不安定な天候続きで,中々その日を決めかねていた。何とか2日間,雨の心配のいらない日があったので,山小屋の予約をした。この時期,本格的な紅葉シーズンを前にいくつかの山小屋は休館日となっているところも多いので注意も必要だ。

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【池塘の周囲はまだヤマドリゼンマイの色付きが遅いようです】

 当初は,久しぶりに檜枝岐経由で入山を考えていたが,大事なものを忘れ,福島側に向かう理由がなくなったので,いつも通り,戸倉を経由して鳩待峠に向かう。平日だし,紅葉シーズン前でもあるので,鳩待峠は前回ほどの賑わいはなかった。猛威を振るっているコロナの第7波の影響もあるのかも知れない。

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【秋の空を映す池塘とヤマドリゼンマイ】

 周囲の山々も夏の濃い緑から徐々にその色を変えつつある。あと一ヶ月もしないうちに華やかに彩られるこの地の様子を思い描く時,その華やかさに心躍らせると同時に,尾瀬のシーズンも残り少なくなったことが頭の片隅を掠め,ちょっと寂しくもなる。

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【龍宮十字路の夕暮れ】

 峠の道を緑一色だった森が少しずつその色彩を変えていた。オオカメノキの赤い実と秋色に染まった葉も,秋の訪れをいち早く伝えてくれた。だんだん尾瀬ヶ原が近づくにつれ,アキノキリンソウの鮮やかな黄色や,ヤマトリカブト,エゾリンドウの涼しげな青が多くなった。山の鼻に着き,ふといつものベンチを見ると,新井先生が東電の方と話していた。ビジターセンターで財団の会議があるという。

 少し立ち話をしてから,見本園に向かう。見本園の木道脇には秋の風物詩となった木道修理用の資材が無造作にあちこちに置かれていた。ヘリも忙しそうに何度も行き来していたので,静けさを求めて上田代に向かった。

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【夕食後,突然空が紫色に染まった・・・】

 時間と共に,上空をどんどんと雲が覆うようになり,燧ヶ岳や至仏山の山頂もなかなか姿を見せてくれなかった。しかし,ジリジリと照りつける日差しはまだ夏のそれであり,湿度も高く,少し歩くと汗ばんでしまう。時折吹き抜ける風も,日本に接近しつつある台風の影響なのか,妙に生暖かった。木道の間には,たくさんのエゾリンドウやミヤマアキノキリンソウ,サラシナショウマ,ウメバチソウなどが,尾瀬ヶ原に最後の彩りを添えていた。

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【オオカメノキの実と紅葉】

 今回の一番の楽しみは,何と言ってもヤマドリゼンマイの黄葉である。芽吹きの頃も面白い被写体だが,緑から黄や赤に徐々に変化していく様子が秋を感じさせてくれる。しかし,今年の秋は気温の寒暖差が激しく,一度かなり気温が下がった時がある。その影響か,葉は緑色をしているもののその周囲が茶色に変色したり,チリチリに枯れているものが多く見られた。全体的に色もくすんでいたし,今ひとつ冴えない感じであった。ヤマウルシやナナカマドの紅葉も遅れているようである。

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【ヤマトリカブト】

 それでも,紅葉の進み具合は,場所によってかなり違いが見られた。ドローンを飛ばして上空から見てみると,緑,黄,そしてオレンジ色に染まる華やかな湿原のグラデーションが初秋を感じさせてくれた。機械のセンサーで見る紅葉は,人間の目で見るよりもはっきりと季節の移ろいを捉えていた。

 早めに今日の宿である龍宮小屋にチェックインして,小屋主さんや常連さんと談笑した。夕食まで少し時間があったので,カメラを持ってベンチまで移動する。だんだんと雲が多くなってしまい,綺麗な夕焼けは望めそうもなく,諦めて小屋に戻り,食事を済ませる。ふと見ると,空が紫色に染まってきたので慌てて小屋の外に飛び出して数枚撮影し終わると,何事もなかったかのように灰色の空に戻ってしまった。

 風呂に入り,のんびりしていると,小屋の周辺は夜霧に覆われ何も見えなくなった。月夜の白虹を撮るチャンスかなとも思って期待したが,天気予報通り雲が辺りを支配し,明け方まで月は,ほとんど姿を見せてくれなかった・・・ と思う。(^^ゞ

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【今回たくさん見られたエゾリンドウ】
*空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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■真夏の光溢れる尾瀬へ[3] [尾瀬沼]

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【大江湿原にかかる白虹とレンゲツツジ】

□7月2日(土)晴れ 21,048歩
深夜になって目が覚め,みんなが寝静まった廊下を足音を忍ばせ,外に出て確認すると満天の星空が広がっていた。昨日よりも更にスッキリ星が見えていたので,この日も小一時間星の撮影をする。深夜の時間帯は尾瀬沼から立ち上がる天の川が印象的だった。頭上には夏の大三角が輝いていた。体も冷えてきたので部屋に戻って一旦休憩。
そして,いつもの事ながら二度寝するとついつい寝過ごしてしまう。この日も気が付くと外はすっかり明るくなっていた。大急ぎで小屋を出る頃には既に5時近くなっていた。燧ヶ岳山頂には既に朝の光が射している。湿原はこの時間まだ真っ白な朝靄に覆われていたので,あちこち撮影しながら大江湿原を進む。

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【朝靄に覆われ幻想的な朝を迎えた大江湿原】

この暑さ続きで開花が遅れていたレンゲツツジがちょうど見頃を迎えていた。ワタスゲも大きくなった果穂に朝露を蓄えていていい感じである。所々にあるヤマドリゼンマイもまだ十分開ききっていない若々しい葉が伸びをしていた。あちこちで様々な命が躍動していることを実感する。

大江湿原の朝靄は,尾瀬ヶ原ほど濃くならずにすぐに晴れてしまうので,ベンチからドローンで空撮を始める。大江湿原や尾瀬沼は一部が朝靄の下で眠っていたが,北東の空から光が差し,森を照らし始めると,状況が激しく変化する。朝靄がだんだん薄くなり,今まで見えなかった三本カラマツも見え始めた。そして,その光が自分のいる場所を照らし始めると,朝靄をスクリーンにしてうっすらと大きな弧を描いた。白虹だ・・・。

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【上空から見た白虹。地上と違って白虹はスクリーンとなる朝靄があれば円形となります。】

朝靄が立ちこめにくく直ぐに消えてしまう大江湿原では,尾瀬ヶ原ほど白虹が見える確率は高くない。以前は白虹に対する認識も低かったので見過ごしていたこともあるかも知れないが,昨年まで一度も尾瀬沼で白虹を見たことがなかった。っそれが,昨年の同時期に初めて遭遇して大喜びしたものだが,それを2年連続で見ることが出来るとは・・・。舞い上がる気持ちを抑えながらドローンや地上から,つきまとうブユに何度も邪魔をされながらも何度もシャッターを切った。

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【朝露に濡れた湿原が朝陽を浴びて一つ一つの水滴がきらきらと輝きます】

この頃になると加速度的に朝靄が晴れていく。気が付くと朝靄が佇んでいるのは,尾瀬沼の一角だけとなり,静かなしっとりとした尾瀬沼の畔の朝があった。朝露に濡れたワタスゲや湿原が朝日に照らされて輝き,揺れていた。こうした風景をカメラに収めながら小屋に戻った。

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【霧に包まれた樹林帯の朝靄も激しく動き,みるみる晴れていきます。】

部屋に荷物を置き,やや薄暗い落ち着いた雰囲気漂う食堂でゆっくり朝食を頂く。撮影を終えた後のこのまったりと流れる時間もまた捨てがたい。
食後,談話室で情報を確認してから,御世話になったスタッフに挨拶をして一旦チェックアウト。荷物を預け,カメラだけを持って大江湿原を散策する。

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【朝靄は徐々に尾瀬沼の方に移動していき,消滅します。】

湿原内の日陰にはまだ朝露が残り,しっとりとした朝の風情が残っているが,だんだんと日差しが強くなってきた。今日もまた暑くなりそうだ。沼山峠からは次々と人がやってくる。今日は週末なので昨日以上にたくさんの登山者で賑わうことだろう。ニッコウキスゲの蕾もあちこちで見られ,本格的なシーズンがもうすぐそこに来ていることを教えてくれる。

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【朝露に濡れたレンゲツツジ。この暑さで一気に見頃を迎えた。】

最後に三平下の尾瀬沼山荘売店に立ち寄り,ヤマスタのスタンプラリーをコンプリート。ここのダケカンバの森の木陰で,風に吹かれながら,尾瀬沼に打ち寄せる波の音を聞きながら夏の尾瀬をじっくり味わい,心に刻んでから尾瀬の地を後にした。

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【ワタスゲのピークも間もなく訪れそうです。】

*空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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■真夏の光溢れる尾瀬へ[2] [尾瀬ケ原]

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【尾瀬ヶ原は真っ白な朝靄に覆われていても上空では朝のドラマが繰り広げられていました】

□7月1日(金)晴れ 34,224歩
目覚ましに起こされることもなく4時20分に目が覚めた。既にヘッドライトがいらない明るさになっていたので,昨夜のうちに準備したものを背負って小屋を出る。
小屋の周りはすっかり朝靄に覆われ,真っ白だ。朝靄に佇むワタスゲやレンゲツツジの湿原も幻想的である。遠くで小さくカッコウの声が響き高原の夏を演出していた。朝靄が薄くなった所から時折,青い空が覗く。今日も好天に違いない・・・

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【朝靄に包まれた朝の湿原】

ベンチに荷物を下ろし,ドローンを離陸させる。あっという間に朝靄の上に飛び出ると,真っ白な朝靄の絨毯を眼下にして,山頂付近が赤く染まった至仏山や大きく伸びた燧ヶ岳の影,燧ヶ岳の裾野から顔を覗かせる太陽がモニターに飛び込んでくる。太陽の光が射すとそれまで澱んでいた重苦しい空気が一気に動き出すから不思議である。モルゲンロートに染まる朝靄を高度を変え,場所を変え撮影してみる。地上はまだ朝靄の中だ。

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【朝靄が激しく蠢く早朝の尾瀬ヶ原】

湿原を覆い尽くしていた朝靄が少しずつ明るくなり,時折,朝靄越しに太陽の丸い形が眩しくなったり,見えなくなったりを繰り返す。そして,ふと朝靄が途切れそこから溢れた光が朝露を纏ったワタスゲやヤマドリゼンマイを照らすと,朝露の一粒一粒がきらきらと輝き,風に揺れる様は時間を忘れてしまう。さらに,薄い霧の彼方には薄い白虹も現れた。このところデジカメの撮影が疎かだったこともあり,今回は時間をかけて朝の光景も撮影した。

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【スポットライトが当たりヤマドリゼンマイの若葉が眩しく輝きます。】

朝靄が消えてしまわないうちに,ドローンでの撮影を再び開始。幻想的な光景を狙ってあちこち移動させる。はやり何もない日中とは違って朝靄のある光景は幻想的で魅力的である。朝食の時間なので撮影を切り上げて小屋に戻る頃には,ズボンの裾は朝露に濡れびっしょりになっていた。

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【夏空を写す尾瀬沼と沼尻の池塘】

今回は,ヤマスタのチェックインのこともあるので,迷わず東電小屋経由で見晴に向かう。途中,昨日はまだ蕾だったニッコウキスゲが二輪,山吹色の花を咲かせていた。ヨッピ橋を渡るとヨシッポリ田代のワタスゲが出迎えてくれた。尾瀬ヶ原全体で見ると例年並みと言える状態だが,東電小屋の周辺はいつもの年よりも確実に見応えがあった。こちらを回って正解だった。爽やかな風が吹き抜ける中を湿原内に咲き始めた花を撮影しながら見晴へ。

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【林内で見かけたゴゼンタチバナ】

熱くなった体をしっかりクールダウンしてから,段小屋坂へ。尾瀬ヶ原と違って所々に木漏れ日があるだけでほとんど木陰なのがありがたい。さらに,イヨドマリ沢の水は暫く手を入れていると痛くなるほど冷たく,そこを吹き抜ける風は涼しすぎて寒いくらいだった。そんな樹林帯の道を渓流の音を聞きながら,暑さを忘れて歩けるのはありがたいものである。

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【ウワズミザクラもそろそろ終盤】

白砂湿原の木陰で昼食後,沼尻休憩所に到着。今年は営業をしていないがテラスの陰に荷物を置いてゆっくりする。尾瀬沼に映る真っ白な入道雲,そして湖面を吹き抜ける夏の風・・・。夏真っ只中の光景の中にぼんやりと佇む。ふと,湿原の池塘も尾瀬沼も冷静な目で見ると,いつもと比べて,かなり水位が低いなと感じた。今年は梅雨らしい天気ではなく,雨が少なかったためなのか,今夏の電力需要逼迫による影響なのか不明ではあるが,気になるところである。

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【夕暮れの尾瀬沼】

昨日に比べて暑い中歩き続ける時間帯も少なかったが,登りで多少汗もかいたし蒸すので,早々に長蔵小屋にチェックインした。風呂の時間を待って直ぐに風呂場に。しっかり汗を流し,大きな浴槽にゆったりと浸かった。風呂上がりに,この日上山してきた太郎さんとゆっくり話をした。夕食の時間になったので食堂に向かう。この日の宿泊客は全部で20名程度。この時期は,時間的にゆっくりと食事をとる時間があるのはありがたい。

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【久しぶりに尾瀬沼上空にあった雲が真っ赤に焼けてくれました。】

夕食後,少し休んでから,昨日の反省から完全なブユ対策をして,食事後,夕暮れの時間帯になるのを待ってカマッポリ湿原へ。良さそうな雲が西の空にあったので,これは焼けるかも知れないとの期待が高まる。低い位置にあった雲の隙間から太陽の光が漏れると周囲のコバイケイソウがオレンジ色に染まる。そして太陽が尾瀬沼の彼方に沈むと,その光は上空にあった雲を真っ赤に染め上げた。パレットのようにいろいろな色が入り混じり,時間と共により濃く,鮮やかになっていく。そして,その気分を台無しにするのがブユである。対策をしていてもお構いなし。周囲をぶんぶんと飛び回るので,まず奴らを追い払ってからシャッターを切らねばならない。本当に鬱陶しい。
ブユと格闘しながら撮影を終え小屋に戻る。部屋に戻って横になっていたらいつの間にか寝てしまった。

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【尾瀬沼から立ち上る銀河】

*空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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■真夏の光溢れる尾瀬へ[1] [尾瀬ケ原]

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【真夏の空を映す池塘群】

□6月30日(木)晴れ時々くもり
 史上最速の梅雨明け,そして,6月にもかかわらず全国各地で気温が40℃を越え,東京では連日35℃以上の真夏日が9日も続く異常事態となった。偏西風の蛇行がその原因だという。ほぼ一週間続く晴天の予報を目にして,足は尾瀬に向かった。

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【もうダメかなと諦めていたズミですが,研究見本園で何とか見ることが出来ました】

 時期としてはワタスゲも見頃を迎え,至仏山も7月に入ると登山解禁となる。高山植物を求めて多くの登山者が訪れ,週末ともなれば一気に混雑するだろう・・・。
いつもなら梅雨の真っ只中で出かける機会もそれほど多くないが,いつもならワタスゲやレンゲツツジが見頃となる時期だ。
戸倉の第一駐車場は平日だというのにいっぱいだ。ちょうど出発待ちをしていた小型バスに揺られて鳩待峠に着いたが,予想以上に雲が多く至仏山頂も雲の中に隠れていた。

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【牛首付近。いつもはワタスゲの群落が見れる場所ですが,暫くここの群落は見ていません】

 今年もヤマスタのスタンプラリーが良いタイミングで始まっていたので,チェックポイントでチェックインしながら歩くことにする。まず,鳩待山荘からと思い,受付に入ると来栖支配人が。ちょっと談笑して山の鼻に向かう。雲の隙間から漏れる強い日差しを逃れるように薄暗い森に入る。平日のため,児童・生徒が次々と尾瀬学校で入山してくる。所々で立ち止まって説明している横をすり抜け,山の鼻に着くと至仏山荘前に見覚えのあるカメラザックが。

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【ちょうど見頃を迎えていたウラジロヨウラク。今年は当たり年のようだ。】

 至仏山荘にいた新井先生に挨拶をしてから,見本園に向かう。ミズバショウシーズンはすっかり終わったが,その後,シカ柵の効果があってミツガシワが例年以上の群落を作っているというので,それを確認したかったからだ。見本園内を一周したが,ミツガシワの見頃は既に過ぎ,フワフワになったワタスゲが気持ちよさそうに風に揺れていた。

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【イモリ池と至仏山】

 時間とともに,尾瀬ヶ原や燧ヶ岳・至仏山頂を覆っていた雲も徐々にとれ,真っ青な青い空が一面に広がった。容赦ない夏の強烈な日差しが辺りに降り注ぐ。前回はヒメシャクナゲが多く感じたが,今回はあちこちでウラジロヨウラクやタテヤマリンドウを見かけた。今年はやはり残雪が多かった分,これらの花は当たり年となっているようだ。

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【ハクサンチドリ。アップにするとラン科の花である事を実感します。】

 真夏の湿原を空撮しようとドローンを飛ばす。池塘の水面に映る青い空と真っ白な雲がいかにも夏らしい。しかし,空撮にも慣れてきたせいか,ただ撮っているだけでは面白みに欠けるなと思いつつもバッテリー2本ほど飛ばした。

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【オゼヌマタイゲキ。尾瀬沼では何故か見かけません?】

 何一つ遮るもののない尾瀬ヶ原を歩いていると,背面からジリジリと照らされる。体温を下げるために首筋に掛けていた濡れタオルもいつの間にか乾いてしまった。こんな時は,炎天下のベンチよりも拠水林の木陰がありがたい。ここで荷物を下ろして小休止。水分や塩分の補給を忘れたら,忽ち熱中症になりそうだ。尾瀬とは言え,手元の温度計では32℃を越えていた。もう,初夏を通り越して,すっかり真夏である。

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【夕陽に照らされるヤマドリゼンマイ】

 僅か2週間で一気に大きくなったヤマドリゼンマイやほとんど終わっていたズミに季節の移ろいの早さを感じながら龍宮小屋に到着。部屋につき,まず明日に備えてドローンのバッテリーの充電を開始する。程なく夕食の時間になったので,早々に夕食を済ませ,必要なカメラだけを持って十字路まで歩き,ベンチでのんびりする。

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【龍宮十字路の池塘の夕暮れ。この日は少し焼けてくれました。】

 夕刻が近くなるにつれ,忘れていた悪夢が・・・。この時期の朝夕の太陽が昇ったり沈んだりする時間帯になると,何故かきまって大量のブユが異常なくらい纏わり付いて周囲を飛び回る。ヤッケを着て帽子を被り防いだつもりでも隙間から入り込んだり,写真にも大量に写り込んだりする。厄介なのはドローン操縦中に送信機を操作する手にブユがとまってしまった時だ。もう操縦どころではなく,中断することもしばしば・・・

 前日が新月だったため,月明かりもなく星の撮影には好都合だと思っていたのだが,暗くなると急激に温度が下がった影響で夕霧が湿原を覆い始めた。幸い小屋の東側半分の空はぽっかり空いていたので,小屋周辺で天の川を撮影してそのまま眠りについた。

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【龍宮付近に架かる天の川】

*空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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■梅雨の晴れ間の尾瀬を歩く[2] [尾瀬ケ原]

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【この日見たかった花キヌガサソウ。尾瀬でも見られる場所はかなり限られる】

□6月14日(火)曇り 28387歩

 夜間に目が覚め星を確認するのは恒例になっているが,どんよりとした雲に覆われた空を確認し,部屋に戻ってウトウトする。
それでも,日の出前には目を覚ます。雨でも降らない限り,何があるか分からない尾瀬なので,4時30分には,最小限の撮影機材を持って龍宮十字路のベンチに向かうと,既に花見さんが三脚を立てて撮影中であった。(^^ゞ

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【ミネザクラ。6月に花見が出来るのは尾瀬ならでは・・・ 贅沢~】

 朝靄も風もない穏やかな朝。遠くでカッコウやカエルの音がこだまする。燧ヶ岳の北の空が明るかったので,ものは試しとドローンを使って上空から眺めてみたが,尾瀬の光景が劇的に変わるような状況ではなく,少しだけ動画を記録するだけにとどめた。

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【咲いたばかりのサンカヨウ・・・ 葉も十分開ききっていません】

 小屋に戻ると,温かい朝食が待っていた。食事を済ませて,荷物を整理してからそれぞれのルートで下山することにした。私は,荷物が負担になるので,リュックを龍宮小屋に預けてカメラだけを持って見晴へと向かった。その理由は,キヌガサソウが見たかったから。咲く時期はもちろん,場所もかなり限定的なためここ暫くこの花の良い時に出会えていない。植え込みにあると言うが,それでも十分,十分。

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【こちらも生まれたてのヤマドリゼンマイ。 あっという間に成長する姿に生命力を感じます。】

 行ってみると,ありました。ちょうど見頃の可憐な花が・・・。他にもサンカヨウなどもあったが,驚いたことに半分以上がシカに食べられていて,茎だけが無残に取り残されていた。こんな所まで奴らは来るのか・・・。じっくり撮影を済ませ,東電小屋に向かった。東電尾瀬橋の先のヨシッポリ田代のミズバショウは既に見頃も過ぎ,葉がかなり大きくなっていた。東電小屋ではイワツバメが元気に飛び交い巣作りに励んでいた。

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【ミツガシワの花 中央にたくさんついた縮毛が印象的です。】

身軽なので,足取りも軽い。あっという間に龍宮小屋に戻り,山の鼻に向かう。山の鼻では,尾瀬学校の児童や生徒が多数訪れ,かなり賑わっていた。その中に神崎さんや安類さんの姿があった・・・ 二人とも今日も仕事のようで忙しそうだった。ちょっとだけ挨拶をしてから,鳩待峠に向かうと,峠に着く頃には今までの天気が嘘のように空気がヒンヤリしてきて,みるみるうちに霧に覆われた。真っ白になった鳩待峠でぼんやりと時間を過ごして帰宅した。

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【リュウキンカ。今回は山の鼻地区でたくさんのリュウキンカが見れました。】

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【タテヤマリンドウ。 雨は降らない明るい一日だったので徐々に開いてきました。】

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【サンカヨウ。 雨に濡れると透き通る綺麗な花です。】

***** 今回の日記については,一部を割愛して公開しています・・・ *****
*空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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梅雨の晴れ間の尾瀬を歩く[1] [尾瀬ケ原]

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【今年の山の鼻のミズバショウは,例年と比べても凄い密集度らしい・・・】

***** 今回の日記については,都合により,一部を割愛して公開します・・・ *****

■梅雨の晴れ間の尾瀬を歩く[1]
□6月13日(月)曇り時々晴れ 26774歩

 拙著「尾瀬夢幻 ~水が織りなす美しき世界~」の出版祝いを尾瀬ですることになり,尾瀬に向かった。
 例年よりも早く梅雨入りしてしまったので天気は期待できないと思っていたのだが,傘のマークがずらりと並ぶ天気予報の中に,ぽつんと晴れの予報が紛れ込んでいた。「雨に降られなければいいかな」ぐらいに思っていたので,心が躍った。それならばと,家を少し早めの5時に出て,鳩待峠に着いたのは8時30分。

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【水たまりに映る青い空と湿原の芽吹きに季節の移ろいを感じます】

平日だというのにかなりの人出である。ずっと雨が続いていたし,ミズバショウも終盤を迎えていたので,天気のいいこの日に集中したのか,県民割による旅行代金補助制度の延長と拡大もこの人出に貢献したのか,いずれにしても,ここまで混雑してしまうとコロナ禍で静かだった尾瀬が妙に遠い前の出来事のように感じる。

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【やっと至仏山付近の雲がとれたので,ここまで引き返しました】

 鳩待峠で出会った花見さんの後を追うように,山の鼻に向けて出発した。登山道の雪は全くないが,ここ数日の雨で木道はしっとりしているので注意しながら歩き始めた。濡れた木道はよく滑る。登山道脇に顔を見せ始めたオオバキスミレ,イワナシ,サンカヨウ,ミヤマエンレイソウ等の花を見つけながらゆっくりと下り始めた。しかし,梅雨の晴れ間もそう長くは続かないようなので,貴重な時間を無駄にできないと思うと,のんびりもできない。約一時間程度で山の鼻に着いた。

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【周囲の森は,3週間前よりも明るくしっかりとした若葉に包まれていました】

 研究見本園のミズバショウを撮影するために,空いているベンチに荷物を下ろし,身軽になってから園内に・・・。ぐるりと園内を一周して,上田代へ。
時折,陽は射すものの,薄い雲が広がって中々青い空が広がらない。至仏山や燧ヶ岳の山頂周辺も雲が行き交いスッキリしなかったが少しずつ雲がとれてきたので,牛首付近のベンチで荷物を置いて,休憩。ドローンでの撮影を開始。

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【茶色から緑色に模様替えが進む尾瀬ヶ原(空撮)】

 空撮を済ませた頃から,急速に天候が回復してきて,影もはっきりしてきた。この状況は明日はもう見れないと思い,上田代に引き返した。湿原内のあちこちにまだある水たまりや池塘に映り込むのが青い空か黒い雲かでは,雲泥の差なのは明らかだ。さざ波がたつ池塘に,青い空を背景に聳える至仏山が映る。湿原内を見渡すと昨年の茶色になった枯草の間からたくさんの芽吹きが始まり,茶色から薄緑色に湿原の模様替えが始まっていた。

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【湿原のあちこちで芽吹きが始まっていました】

 そんな様子を撮影しながら,また同じ道を戻る。3週間前に来た時には,まだ,芽吹きが始まったばかりの淡い緑色の周囲の森も,光り輝くスッキリとした若葉に覆われていた。湿原では,タテヤマリンドウ,ヒメシャクナゲも咲き出している。ワタスゲも果穂が大きくなってきたが,その数は少ないようだ。心地良い風に吹かれながら,ヨッピ橋付近まで歩く。

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【ヤマドリゼンマイの芽吹きには生命力を感じます】

 龍宮十字路に着く頃には16時になっていた。龍宮小屋で受付を済ませ,まずは時間のかかるドローンのバッテリーの充電を始める。小屋主さんと暫く話をしてから,完全に日が落ちてしまう前に空撮をしておきたくて,十字路に戻りドローンを飛ばす。

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【雲の隙間から漏れた光が,零れて龍宮付近を照らします】

 この頃には,黒く低い雲が優勢になり,空の大部分を占めていたから,明日の天候は,ほとんど期待できない。上空から雲の隙間から漏れる光が池塘を照らし,池塘だけを浮かび上がらせる印象的な光景を見せていた。飛行を終わらせる頃には夕食の時間になっていたので,小屋に戻って夕食をとることにした。

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【夕暮れの龍宮十字路から・・・】

 情報交換後,消灯時間になったので,部屋に戻りすぐに休んだ。今夜の星の撮影は全く期待できないので,今晩は起きる必要もないだろう。

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【夕暮れ迫る尾瀬ヶ原(空撮)】
*空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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尾瀬逍遥 2022 ② [尾瀬ケ原]

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【朝靄のフィルター通しに見る尾瀬の朝】

■残雪と新緑と青空と[2]
□5月25日(水)晴れのちくもり
朝靄に包まれていたため,星の撮影を断念して小屋に戻って横になっていたら,少しうとうとしてしまい気が付くと4時30分を少し回っていた。窓から外を見ると,相変わらず外は一面の朝靄に包まれ,辺りは真っ白だ。晴れているのか,曇っているのか・・・

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【しっとりとした朝に出あうと,尾瀬にいることを実感する】

ライブカメラを確認すると,上空は雲一つ無い青空が広がり,至仏山はモルゲンロートに赤く染まっていた。必要最小限の荷物だけを持って龍宮十字路のベンチへ。急ぎ,ドローンを飛ばすと数秒で朝靄の上に出た。上田代付近はやや朝靄が薄いものの尾瀬ヶ原全体が真っ白な朝靄に覆われている。この時期,尾瀬ヶ原で一番先に太陽の光が届くのが上田代。この付近から朝靄のベールがだんだん薄くなり,それが尾瀬ヶ原全体へと一気に広がる。

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【朝靄の尾瀬ヶ原】

朝陽に染められたオレンジ色のベール越しに残雪を残す池塘が見える。朝陽に照らされて輝く水面が見える。あらゆるものが朝靄に包まれ幻想的に,ドラマチックにうごめく。その光がドローンのいる高さまで届いた時に太陽を背にすると,朝靄の上にドローンを中心とした小さな円と大きな円が描かれる。地上では条件が整えば白い虹が見えていることだろう・・・。

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【地上から見る白い虹】

朝靄でセンサーが効かなかったり,水滴で濡れてしまって動作不良を起こしかねないので,朝靄の影響をなるべく避けながら慎重に飛行させる。パノラマ撮影には時間がかかるので,この間を利用して,慌ただしく地上での撮影も行う。原一面を覆っていた朝靄が晴れる頃,ちょうどバッテリーも予定していた数を取り終えたので空撮を切り上げて,小屋に戻る。

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【上空から見る完璧な白い虹】

朝弁当をお願いしてそのまま下山するのが手っ取り早いが,撮影終了後の小屋に戻ってゆっくり食べる温かい食事の誘惑にはかなわない。朝食後のまったりした時間も捨て難く,冷たい朝弁当には中々戻れない。ただ,この時期は日の出が早いので助かるが,やがて食事時間と日の出が重なるようになると,撮影が長引き,小屋の方に迷惑を掛けてしまうため,この点についてはいつも心苦しく思っている。

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【朝陽射す】

暫く,小屋主さんと雑談した後は小屋を後にしてヨッピ経由で下山する。見晴まで行ってぐるりと尾瀬ヶ原を回ろうかとも思ったが,まだ体調は完璧とは言えないし,午後からは天気が崩れそうなので,今回は無理をせずに直ぐに下山することにした。
朝一番には,風も全くない完璧な青空が広がっていたが,午後から崩れるとの予報通り,少しずつ雲が増えていった。写真を撮る上で,雲は全くないよりも,綿飴のような雲が飛んだり跳ねたりしてくれた方が寧ろありがたい。

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【根明けと新緑の尾瀬の森】

雪溶け水で水かさを増した池塘や大雨で氾濫したヨッピ川の水が湿原に溢れてできた大きな池に白い雲が写り,宛ら天空の湖を思わせる光景も。山の鼻に戻る頃には,かなり雲行きが怪しくなってきた。最後に,もう一度山の鼻の見本園でアカシボの写真を撮ろうと立ち寄ったが,初日の残雪の白さを残す赤シボでは無く,赤茶けた残雪だけが僅かに残る風景に変わっていた。特にこの時期の雪溶けは予想以上に早く,尾瀬の風景も急速に変わってしまうのだと改めて実感した。

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【あちこちに水が溢れ,天空の鏡とも言うべき光景が広がる】

この日は,校外学習で何処かの高校生と思われる生徒が何人か訪れ,昨日よりは賑わっていたが,行き交う人もそれほど多くはなく,静かな尾瀬歩きが楽しめた。
小鳥の声が響く森を雨に降られることも無く,ゆっくりとしたペースで登り切り家路についた。

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【終わりかけた「尾瀬ヶ原湖」も,雨が降って少し復活した】

◆空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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尾瀬逍遥 2022 ① [尾瀬ケ原]

■残雪と新緑と青空と[1]
今年も尾瀬歩きの様子を一日ごとに日記風にまとめてUPします。
その日の行動を備忘録代わりに記録しているだけの文章ですが,今年もお付き合いください。

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【新緑と残雪が眩しい鳩待峠から】

□5月24日(火)快晴 20578歩
 温暖化の影響なのか近年尾瀬に積もる雪の量はかなり少ない。そのため,厳冬期の寒さから植物を守る雪の布団も薄くなる一方だ。春ともなれば直ぐに溶け,気まぐれな遅霜にやられて枯れてしまわないか,気をもむことも多い。

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【春の風物詩アカシボ。湿原内の鉄分とバクテリアが作り出したものらしい】

 しかし,昨冬は記録的な降雪量を記録していたので,久々に残雪豊富な尾瀬や花いっぱいの尾瀬を歩くことを楽しみにしていたのだが,シーズンが始まっても天候が不安定でなかなか予定が立てられない。そんなこんなしているうち,ちょっとしたはずみで腰を痛め,暫く尾瀬歩きを断念せざるを得なくなった。なんとも情けない・・・。何をするにも痛みが走り思うように動けず日常生活にも不便をきたしていたが,一週間ほどで何とか普通に歩けるまでに回復した。

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【いつもは遅い見本園のミズバショウも小さい花を咲かせていた】

 当初は,GW前半に予定していたが,あれから既に3週間以上が経ち,尾瀬ヶ原を覆っていた雪もほとんど消えてしまったようだ。気持ちは焦るが,まだ無理は出来ないので,少しだけでも尾瀬の風に吹かれたいと思い,車を走らせた。既に交通規制も始まっているので,乗合タクシーに揺られて鳩待峠に着く。
7か月ぶりの尾瀬。辺りを覆っていた雪はほとんど消え,周囲に堆く積もった雪の向こうには,新緑が眩しく輝いていた。雲一つない青い空から燦々と降り注ぐ眩しい光と,新緑の森に響く野鳥たちの嬉しそうな囀りに包まれて,すっかり春になった尾瀬を肌で感じた。

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【新緑と残雪が雪溶け水溢れる池塘に写ってら春らしさを演出】

 真新しい鮮やかな新緑の森を進むと雪溶け水の溢れる沢の音や小鳥の声が辺り一面に響いている。秋とは違って,あちこちに命が躍動し,明るく活気に満ちていた。テンマ沢付近では小さなミズバショウが多数顔を出し,尾瀬の本格的なシーズンが近いことを知らせていた。登山道はボランティアの方が除雪を行ってくれたお陰で,山の鼻付近まではほとんど雪もなく快適に歩けた。

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【この日は気温も高かったせいか水中のミズバショウも気持ち良さそう】

 人影疎らな山の鼻のベンチに重い荷物を下ろして,見本園内をぐるりと一周する。いつもは尾瀬の中でもミズバショウが最後に見頃となるここも既に小さなミズバショウがたくさん顔を出していた。特に圧巻だったのはアカシボ。残雪が広範囲にわたって赤銅色に染まるこの時期限定の現象なのだが,最近の学術調査の結果,湿原内の鉄分とバクテリアが反応しあってできることが証明されている。これもなかなか良い時に巡り会うのは難しいが,今回はちょうどいいタイミングだった。違う星にでもいるような感覚を覚えるくらい一面が赤茶色に染まっていた。そして,久しぶりの空撮。上空からは意外にもまだ残雪が多いことが確認できた。

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【上空から見た上田代付近の雪溶けの様子】

 山の鼻を過ぎると木道の雪はなく,とても歩きやすかった。池塘に浮かぶ僅かな残雪,湿原を取り囲む山の根開け,芽吹きが始まり新緑に染まりだした木々を眺めながら上田代に向かう。上田代の一帯が雪溶け水で溢れるいわゆる「尾瀬ヶ原湖」は時期的には終わりかけていたが,昨日降った雨のおかげで名残を見ることができた。逆さ燧の池塘脇のベンチで昼食後,行き交う人も少ない木道をゆっくり歩いて龍宮小屋に向かう。
 下の大堀の定番ポイントに立ち寄ると,ミズバショウは小さいながらもたくさん咲き出しており,見頃も近いと思われた。既に,シカの食害防止の柵が昨年以上に張り巡らされていた。花を守ろうとうする取り組みに異論は無いが,この柵があるためにあちこちで風景が台無しになっているのも事実だ。花だけでなく,美しい風景を見たくて尾瀬に来ている人もいるのに,もっと目立たない場所に設置できないものかと思ってしまう。

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【昨日の雨で復活した尾瀬ヶ原湖】

 半年ぶりの龍宮小屋に到着。受付を済ませ,久しぶりの龍宮コーヒーをいただきながら,暫く小屋主の澄夫さんとおしゃべりをして過ごす。4月に発売になった写真集とポストカードを届け,今回尾瀬に来た目的を一つ果たした。この日の宿泊客は7人。他に工事関係者が数名泊まっているようだ。ひっそりとした食堂で夕食を済ませてから,撮影機材を持ってベンチに腰を下ろし,のんびりと過ごす。雲も全くなく夕焼けも期待できなかったが,徐々に暮れていく空をぼんやりと眺めて過ごした。

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【上空から見た幻の「尾瀬ヶ原湖」。この時期限定です。】

 この日も星の撮影には問題なさそうだったが,できたら天の川が高く昇るまで待ってと考えたのがまずかった。さて,撮影しようと起き出してみると,龍宮小屋の周囲は真っ白な朝靄に覆われ,星の撮影どころでは無くなっていた。ちょっと,考えが甘かったようだ。
◆空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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【夕暮れの尾瀬ヶ原・中田代】
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「写真展」(個展)開催決定しました・・・ [御案内]

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かねてからの念願であった写真展(個展)が開催されることになりました。
写真集発刊と同時に実施したいとも考えましたが,コロナ等の事情により,写真集発売と同時開催は今回は諦めました。

尾瀬シーズンが終わる「2023年1~3月」頃をめどに「富士フイルムフォトサロン 東京」で行いたいと思います。
コロナ等の関係で,富士フイルムフォトサロンで予定されている多くの写真展が予定通り行えるか不透明な状況ですので,正式な日時は未定ですが,決まりましたら,改めて正確な日時をお知らせいたしますので,万障お繰り合わせの上,是非ご来場いただけますようお願い申し上げます。

現在の写真集の中からピックアップして大きなプリントで見ていただくとともに,今年の新たな尾瀬の光景を加えて皆様に見ていただけるよう,今後更に気合いを入れて精進したいと思います。
宜しくお願いいたします。

https://fujifilmsquare.jp/
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