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■変わりゆく刻の中で[2] [尾瀬ケ原]

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[音もなく静かな朝。朝靄が広がり穏やかな朝が訪れた]

□7月7日(金)晴れ 29,195歩
昨日,龍宮小屋に宿泊した方は,どの人も写真を撮る方ではないので食事後も食堂で時間を過ごしていた。ということは・・・ 日の出前の時間にぼんやりしていると間違いなく寝過ごすと思って早めに目覚ましをセットして準備をする。

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[それほど濃い朝靄ではなかったが,尾瀬ヶ原一面が朝靄に覆われていた]

目覚ましが鳴る前に目が覚めたので,撮影機材だけを詰めたリュックを持って下に降りると,誰も出発準備をしている人も出かけた様子もない。薄暗い中,登山靴の靴紐をしっかり結んで小屋の外に出た。朝靄は尾瀬ヶ原全体に広がってはいるものの至仏山は半分以上顔を出しているので,靄はそれほど深くはないようだ。

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[上空から見た初夏の早朝の尾瀬ヶ原]

朝露に濡れた草の生い茂る木道をベンチ付近まで急ぐ。位置的にも尾瀬ヶ原のちょうど中心にあるので空撮をするにはちょうど位置的にも都合が良いからだ。
上空を見ると,今朝は朝靄以外は全くないピーカンと思っていたが,いつの間にか北半分を大きな雲の一団が空を覆っていた。ちょっと心配になったが,至仏山山頂からいつもの朝のドラマが幕を開けた。

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[朝靄漂う尾瀬ヶ原とダイヤモンド燧ヶ岳]

しかし,その光がだんだん弱くなったり,消えたりを繰り返す。上空に広がり始めた雲が勢力を増して光を遮り始めたのだ。朝靄の消えないうちに空撮を始めておこうとドローンを飛ばす。思ったよりも朝靄は狭い範囲にしか広がっていなかったが,動きのある朝靄とあちこちに光が動く様子は,モニタで見ていても楽しかった。

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[朝露をまとったウラジロヨウラク]

やがて,その雲が時間と共に南に流れていき,湿原全体を照らすようになった。しかし,その頃には残念ながら朝靄はすっかり消え去ってしまい,白い虹や想うような写真が撮れなかったのは,残念だった。ただ,朝露で潤う高山植物や湿原の様子を撮影しながら,小屋に戻った。朝食開始時刻には少し遅れたが,宿泊客はまだ食事中だったのでホッとした。ここ数回,朝弁当が続いたが,撮影後に温かい食事をいただけるのは何よりもありがたい。

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[遅霜の被害を受けたが,何とか例年の状態に戻りつつあるヤマドリゼンマイ]

朝食後,部屋に戻って出発準備を整え,ロビーで小屋主さんと一年ぶりの龍宮コーヒーを味わいながら談笑して小屋を後にする。
時間もあるので,見晴を経由して帰宅することにした。龍宮を過ぎると木道が極端に荒れる。自分自身,この木道の中央が抉れていたため何度も足を捻挫している。
尾瀬の歩荷さん達がクラウドファンディングで一部修理したのだが,全体から見ればほんの僅かでしかない。何とかならないものか・・・

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[青空が広がる尾瀬ヶ原と秋を想わせる雲]

見晴は時期的にキスゲのシーズン前でもあるし,夏休みも始まっていないので,賑わいからはほど遠く,静かに時間が流れていた。弥四郎清水の水場に流れ込む沢水が気持ちよさそうだった。湿原ではちょうどトキソウやサワランが見頃となっていた。今年はツルコケモモを多く見かけた。間もなく見頃を迎えるはずのニッコウキスゲは,木道脇にポツポツとある程度で,余り見かけなかった。シカの食害や霜害の影響もあると思うが,今年はそもそもが花芽もないのだから裏年なのだと思う。

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[朝靄もすっかり消え,夏の空を映す池塘]

 全く,記録的に早かった雪どけ,そして遅れて何度もやって来た降雪,降霜によって,植物は散々痛めつけられた。今年は高山植物にとって正しく受難の年であると言えよう。今日もまた,観測史上初となる7月の黄砂の影響が残り,晴れてはいるものの遠くの山や森は霞んでいる。これはこれで今の尾瀬でもあるし,貴重な一日なので,行き来する雲間から時折落ちる日差しを待ち,ゆっくりと撮影しながら鳩待峠の道を登った。
*空撮にあたり,DIPS2.0での機体登録・飛行計画登録,関係機関への連絡・調整済み。
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■変わりゆく刻の中で[1] [尾瀬ケ原]

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[朝靄漂う尾瀬ヶ原。もうすぐ日の出の時間を迎えますが・・・]

□7月6日(木)晴れ 24,341歩
 梅雨の重苦しい空気の中,2日間だけ与えられた晴れ間。ここ1か月近く尾瀬に出かけていなかったので,やはり出かけておきたい。咲いている花も相当様変わりしていることだろう。ただ,気になるニュースもあった。なんとこの2日間,例年冬から春にかけて季節風に乗り中国からやってくる黄砂が日本に来るらしい。

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[ハクサンシャクナゲ]

 どんより曇っていた空も,戸倉に着く頃にはすっかり晴れ上がり,新緑が眩しく輝いていた。久しぶりの好天と言うこともあってか,平日にも関わらず乗合タクシーは直ぐにいっぱいになるためザックを車に積むと,全く待つことなくタクシーは鳩待峠に向かった。そして,いよいよ鳩待峠に着くと,様子がかなり変わっていた。と言うのも鳩待山荘と休憩所の改築工事が本格的に始まっていたからだ。工事が終わるのは2年後になるようである。

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[オニシモツケ]

 ここで,荷物を預けてオヤマ沢田代付近まで往復するつもりでいたが,荷物の預かりサービスはないし,時間も10時を回っていたので今回は諦めることにした。最近はいろいろ計画をしてもほとんど安易な方に流れるなぁ。(^^ゞ荷物を背負い,疲れが残る体を引きずりながら,道端に咲く花を見つけては,じっくりとカメラで撮影をしていくため,なかなか山の鼻に着かない。でも春先と違って,すっかり葉で覆われた森は,梅雨の晴れ間から降り注ぐ日差しを遮ってくれるので非常にありがたい。

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[梅雨とは想えない夏らしい青い空が広がりました。そこから降り注ぐ光は強烈でした]

 山の鼻では,あちこちで小学生がグループで昼食を食べていた。天気も良く気持ちも高まっているのだろう。子どもたちの生き生きした声がキャンプ場内に響いていた。自分ではまだ昼食には早かったので先を急いだ。しかし,時間と共にはっきり見えていたはずの燧ヶ岳や距離的に目に前にある至仏山でさえ,白い霞に覆われたような状態になっていった。これがニュースで伝えていた黄砂である事は直ぐに理解できた。後で調べると,7月のこの時期に黄砂が日本で観測されるのは,気象観測を始めてから初めてなのだという。

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[池塘によってヒツジグサのある池とそうでない池が・・・]

 その黄砂も,真夏の強烈な日差しを遮ることは出来ずに,ジリジリと熱い日差しが降り注ぐ。森や日陰がほとんどない尾瀬ヶ原は正に地獄のような暑さだ。熱中症には気をつけなくては・・・。

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[オゼタイゲキ]

 もう一つ気になっていたのが,6/20の遅霜の影響である。ヤマドリゼンマイやカキツバタ・ヒオウギアヤメ,レンゲツツジ等が壊滅的な被害を受けているというので気になっていたが,その情報に嘘偽りは無かった。一番酷かったのがヤマドリゼンマイである。正に9月の草紅葉頃に霜に当たって茶色に変色し,チリチリに縮んだ状態と変わらない様子だった。その頃と違い,まだ大きくなりきれていない若葉が茶色に変色しているのを見るのは何とも痛々しい。また,レンゲツツジはもう時期を過ぎていたが,アヤメやカキツバタは蕾の状態で枯れているものが多く見られた。

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[ハッチョウトンボ]

 ただ,その茶色に変色したヤマドリゼンマイの真ん中辺りから新しい葉が伸びたり,その根元から新たな芽吹きが見られたりしたこと,アヤメやカキツバタは新しい蕾から真新しい花をたくさん咲かせていた。環境がどんなに過酷でも必死で生きようとするその健気な姿に,ただただ感動するばかりだった。

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[黄砂に霞む至仏山と遅霜の影響を受けるヤマドリゼンマイ]

 時間と共に至仏山の影は薄くなるばかり。そして,気のせいか眼が痛み出してきたので,ピーカンだし早々に小屋にチェックインすることにした。
小屋で受付を済ませると今日の宿泊客は全部で6名ほど。一番風呂にも浸かることが出来て最高の気分。食事までの時間部屋でまったりとした・・・。

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[夕暮れ空を映す,波静かな池塘が綺麗でした]

 夕食を早めに済ませて,機材を持って龍宮十字路のベンチで夕暮れの一時を過ごす。日中はピーカンだった空に時折雲が行き来していたので,少しは焼けるかなと淡い期待をしながらその時を待ったが,燧ヶ岳の山頂が少し赤く色付いた程度だった。
その後,部屋に戻り早々に休むことにした。
*空撮にあたり,DIPS2.0での機体登録・飛行計画登録,関係機関への連絡・調整済み。

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[夏至は過ぎましたが,太陽は景鶴山のこんな近くに沈んでいきます]
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