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晩秋の尾瀬ヶ原を歩く【2】 [尾瀬ケ原]

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【一面の大霜に覆われた尾瀬ヶ原】

10月25日(月)(晴れのちくもり)

昨夜は満月を少し過ぎたばかりなので,月が煌々と湿原を照らしていたが,無理に起きだして撮影するほどでもないと判断してその夜の撮影は見送った。
目が覚めたのが4時30分を回った頃。消灯で暗くなった部屋でライトを頼りに出発準備を進める。朝弁当と一緒に出していただいたお茶を一口飲んで小屋を後にする。

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【徐々にモルゲンロートに染まる至仏山】

周囲を見渡せば,雲はほとんどなく,既にライトはいらないくらいに明るい。木道や湿原はかなりの量の霜が降り真っ白だ。拠水林も大きなカラマツも葉っぱの先までまで真っ白になっている。今朝は疑いようもないくらい完璧な大霜だ・・・。

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【寺ヶ崎付近から顔を出す太陽と大霜に輝く樹氷】

こんな願ってもない好条件を目前にして気持ちは焦る。太陽が昇る前の大霜の湿原,夜明け前の静まりかえった湿原の様子を何とかカメラに収めたい。それに,ドローンでの撮影を考えると龍宮小屋までは行かないと・・・ 急に慌ただしくなるが,時間ばかりがどんどん過ぎていく。

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【神は細部に宿る・・・】

何処にカメラを向けても,絵になるから困る。カメラを変え,切り取り方を変え,露出を変え,あれこれ試しながら何枚も何枚も撮影する。すると,至仏山頂が赤くなり始めた。時間とともにその赤い光は至仏山の麓に向かって降りていく。

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【無風快晴の朝。至仏山が綺麗に逆さまに見えていた】

しかし,その光が突然消えた。東の空に朝日を遮る雲があるのか・・・。上空を見上げると薄い雲が上空に進出していた。せめてもう少し,この幻想的な光景を見せてくれ・・・と心の中で願わずにはいられなかった。
至仏山を照らす朝陽は気まぐれだが,その光は徐々に降りてきて湿原に届こうとしていた。

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【大霜に包まれた龍宮小屋】

急いで空撮の準備をして,急いでドローンを空へ飛ばす。昨日見た,茶色の湿原は大霜で覆われ,パステルカラーの柔らかな色に塗り替えられていた。すっかり葉を落とした拠水林の枝は真っ白になり,作り物のクリスマスツリーのようだ。黄葉が見頃を迎えていたカラマツの先端まで白い粉雪を振りかけられたようである。
何という光景・・・。大霜の湿原は美しいがやはり光があるのとないのとでは大違いだ。

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【大霜に包まれた朝の尾瀬ヶ原】

しかし,美しい瞬間は長くは続かない。この光は大霜に覆われた湿原を美しく見せるのと同時に,美しさを損ねる大敵なのだ。この温かい光に当たることで大霜はみるみる溶けて,いつものありきたりな光景に変わってしまうのだ。
しかし,夢中で空撮していて気が付かなかったが,バッテリー2本分の空撮を終える頃には,上空を薄い雲が支配し,ほとんど朝陽は射さなくなっていた。

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【大霜の朝,煌めき輝きを増す森】

撮影も一段落したので,ちょっと一息ついてベンチに腰掛け,朝弁当を食べていたが,時間が経っても状況が好転することはなかった。ただ,日差しがなかった分,大霜が溶けるスピードが遅くなり,長い時間大霜の湿原を見ることができたのも,ある意味幸運なのかも知れない。
昼前には曇る予報だったが,天気の崩れが予想よりも早まったのだろう・・・。 この大霜を長時間見ることができただけでも大収穫である。
湿原を歩く人は時間とともに増えていったが,その日はもうほとんど撮影することもなく,鳩待峠に向かった。

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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【荘厳な朝の幕開け】
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てばまる

最近は10月にたっぷりの新雪と大霜も滅多に見ることがなくなったので今季は貴重ですね。年々小屋じまいも早くなってるので週末ハンターにはなかなかチャンスが巡って来ません。せめて11月3日までは小屋開けて欲しいです。
by てばまる (2021-11-01 11:26) 

Aqua

私も,いい条件の時に残念な思いをしたことも数知れずです・・・。ここ2,3年,週末以外も行けるようになりましたが,更にここに来て温暖化の影響で更にそのチャンスは少なくなってますから貴重ですね。
by Aqua (2021-11-02 17:38) 

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