秋深まる尾瀬へ【2】 [尾瀬ケ原]
【拠水林に漂う朝靄も朝陽を浴びると激しく動き出す】
[空撮に当たり関係諸機関の許可を得て,各種法令遵守の上,飛行・撮影しています]
数日前からNHKの取材班が撮影に入り,ドローン等を使って8Kで尾瀬を撮影していた。以前の取材で知り合ったカメラマンも尾瀬入りしていて,明日は下の大堀付近で撮影するというので,ここで撮影の邪魔にならないように他の場所で撮影することにした。
【太陽の昇る位置もかなり南の方になりました】
木道には霜が降りて真っ白だ。昨日の濡れた木道で懲りたので,滑り止めを装着して出かけると既に花見さんが三脚を立てて撮影を始めていた。周辺を歩いて霜の様子を確認する。樹木の天辺まで真っ白になっていないので大霜とは呼べないかな・・・。
【白い虹を少し高い場所から】
ヨッピ橋方面に向かうと,どんどん朝靄が濃くなり,至仏山や目の前の景鶴山さえもぼんやりとしか見えないが,朝陽を浴びて山頂付近が紅く染まっているようだ。湿原に目をやるとチリチリになったヤマドリゼンマイや小灌木も霜で綺麗にデコレーションされ,華やぎを取り戻して生き生きとしていた。
【尾瀬ヶ原は一面霜が降りたようで真っ白です】
時間とともにどんどんと光が降りてくる・・・ 真っ白だった湿原の一角に光が溢れ,そこを中心に周囲が明るくなる。この時を待ってドローンを上空へ飛ばす・・・。初めは真っ白だが,朝靄の上に出るとモニタに映る光景が一変する。朝陽を浴びて輝く紅葉間近の森,真っ赤に染まりながら揺れ動く朝靄,ブロッケンとそれを取り囲む白い虹・・・どれを見ても息をのむ光景だ。
【地上では,真っ白な湿原の一角から朝日が昇ります】
幻想的な上空の光景に酔いしれていると,いつしか湿原にも光が舞い降り,目の前に白く大きな半円の弧を描いた。ドローンを一端ホバリングさせ,デジイチで白虹を撮影。嬉しい忙しさだ。時間がいくらあっても足りないくらいだが,白虹が長い間出続けてくれたので上空と地上からその姿を何とかカメラに収めることができた。
【朝靄が濃く,地上には霜が降り,色彩のないモノトーンの世界が広がります】
時間とともに,霜に覆われて真っ白だった湿原も徐々に草紅葉の湿原に戻っていく。その溶けた霜が滴になってゆらゆらと朝日に輝いている様子もまた綺麗だ。湿原に取り残された朝靄,日陰に残る霜と草紅葉の対比も面白い。しかし,時間とともに早朝の輝きが消え,いつもの湿原に戻っていく。
【徐々に朝靄が上がり,朝のドラマも終盤を迎えます】
一息ついたので小屋に戻って朝食の時間にした。ちょうど食事中だった花見さんや和風子さんとまた一緒におしゃべりをしながらの朝食になった。朝の撮影が充実していた時の朝食は格別である。予定では尾瀬沼でもう一泊してから下山する予定だったが,台風の影響による天気の悪化が早まったので早めに帰ることにした。小屋主さんを交え尾瀬仲間のオフ会さながらの楽しいやりとりもあって出発はいつもよりもさらに遅かった。
【かなりの霜が降りヤマドリゼンマイや小灌木も綺麗にデコレーションされていました】
穏やかな秋の尾瀬に浸りたくて長沢の湿原の片隅に立つ。シーズンオフ前に仕上げようと忙しそうに進められる木道工事の杭を打つ音が遠く響く。水量が少なくなった長沢の清流の音に混じって,風にこすれる木の葉の音が涼しく響く。突然,周囲が賑やかになる。シジュウカラの群れだろうか・・・時間の経つのも忘れてのんびりと時間を過ごす。台風が接近しているなんて想像できないくらいの雲一つない秋晴れの空の下,鳩待峠までゆっくりと下山した。
【今朝の冷え込みで紅葉も一気に進んだようです。昨日よりも明らかに色づいています】
【目映い紅葉のトンネルを歩く】