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■真夏の光溢れる尾瀬へ[3] [尾瀬沼]

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【大江湿原にかかる白虹とレンゲツツジ】

□7月2日(土)晴れ 21,048歩
深夜になって目が覚め,みんなが寝静まった廊下を足音を忍ばせ,外に出て確認すると満天の星空が広がっていた。昨日よりも更にスッキリ星が見えていたので,この日も小一時間星の撮影をする。深夜の時間帯は尾瀬沼から立ち上がる天の川が印象的だった。頭上には夏の大三角が輝いていた。体も冷えてきたので部屋に戻って一旦休憩。
そして,いつもの事ながら二度寝するとついつい寝過ごしてしまう。この日も気が付くと外はすっかり明るくなっていた。大急ぎで小屋を出る頃には既に5時近くなっていた。燧ヶ岳山頂には既に朝の光が射している。湿原はこの時間まだ真っ白な朝靄に覆われていたので,あちこち撮影しながら大江湿原を進む。

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【朝靄に覆われ幻想的な朝を迎えた大江湿原】

この暑さ続きで開花が遅れていたレンゲツツジがちょうど見頃を迎えていた。ワタスゲも大きくなった果穂に朝露を蓄えていていい感じである。所々にあるヤマドリゼンマイもまだ十分開ききっていない若々しい葉が伸びをしていた。あちこちで様々な命が躍動していることを実感する。

大江湿原の朝靄は,尾瀬ヶ原ほど濃くならずにすぐに晴れてしまうので,ベンチからドローンで空撮を始める。大江湿原や尾瀬沼は一部が朝靄の下で眠っていたが,北東の空から光が差し,森を照らし始めると,状況が激しく変化する。朝靄がだんだん薄くなり,今まで見えなかった三本カラマツも見え始めた。そして,その光が自分のいる場所を照らし始めると,朝靄をスクリーンにしてうっすらと大きな弧を描いた。白虹だ・・・。

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【上空から見た白虹。地上と違って白虹はスクリーンとなる朝靄があれば円形となります。】

朝靄が立ちこめにくく直ぐに消えてしまう大江湿原では,尾瀬ヶ原ほど白虹が見える確率は高くない。以前は白虹に対する認識も低かったので見過ごしていたこともあるかも知れないが,昨年まで一度も尾瀬沼で白虹を見たことがなかった。っそれが,昨年の同時期に初めて遭遇して大喜びしたものだが,それを2年連続で見ることが出来るとは・・・。舞い上がる気持ちを抑えながらドローンや地上から,つきまとうブユに何度も邪魔をされながらも何度もシャッターを切った。

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【朝露に濡れた湿原が朝陽を浴びて一つ一つの水滴がきらきらと輝きます】

この頃になると加速度的に朝靄が晴れていく。気が付くと朝靄が佇んでいるのは,尾瀬沼の一角だけとなり,静かなしっとりとした尾瀬沼の畔の朝があった。朝露に濡れたワタスゲや湿原が朝日に照らされて輝き,揺れていた。こうした風景をカメラに収めながら小屋に戻った。

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【霧に包まれた樹林帯の朝靄も激しく動き,みるみる晴れていきます。】

部屋に荷物を置き,やや薄暗い落ち着いた雰囲気漂う食堂でゆっくり朝食を頂く。撮影を終えた後のこのまったりと流れる時間もまた捨てがたい。
食後,談話室で情報を確認してから,御世話になったスタッフに挨拶をして一旦チェックアウト。荷物を預け,カメラだけを持って大江湿原を散策する。

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【朝靄は徐々に尾瀬沼の方に移動していき,消滅します。】

湿原内の日陰にはまだ朝露が残り,しっとりとした朝の風情が残っているが,だんだんと日差しが強くなってきた。今日もまた暑くなりそうだ。沼山峠からは次々と人がやってくる。今日は週末なので昨日以上にたくさんの登山者で賑わうことだろう。ニッコウキスゲの蕾もあちこちで見られ,本格的なシーズンがもうすぐそこに来ていることを教えてくれる。

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【朝露に濡れたレンゲツツジ。この暑さで一気に見頃を迎えた。】

最後に三平下の尾瀬沼山荘売店に立ち寄り,ヤマスタのスタンプラリーをコンプリート。ここのダケカンバの森の木陰で,風に吹かれながら,尾瀬沼に打ち寄せる波の音を聞きながら夏の尾瀬をじっくり味わい,心に刻んでから尾瀬の地を後にした。

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【ワタスゲのピークも間もなく訪れそうです。】

*空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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■真夏の光溢れる尾瀬へ[2] [尾瀬ケ原]

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【尾瀬ヶ原は真っ白な朝靄に覆われていても上空では朝のドラマが繰り広げられていました】

□7月1日(金)晴れ 34,224歩
目覚ましに起こされることもなく4時20分に目が覚めた。既にヘッドライトがいらない明るさになっていたので,昨夜のうちに準備したものを背負って小屋を出る。
小屋の周りはすっかり朝靄に覆われ,真っ白だ。朝靄に佇むワタスゲやレンゲツツジの湿原も幻想的である。遠くで小さくカッコウの声が響き高原の夏を演出していた。朝靄が薄くなった所から時折,青い空が覗く。今日も好天に違いない・・・

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【朝靄に包まれた朝の湿原】

ベンチに荷物を下ろし,ドローンを離陸させる。あっという間に朝靄の上に飛び出ると,真っ白な朝靄の絨毯を眼下にして,山頂付近が赤く染まった至仏山や大きく伸びた燧ヶ岳の影,燧ヶ岳の裾野から顔を覗かせる太陽がモニターに飛び込んでくる。太陽の光が射すとそれまで澱んでいた重苦しい空気が一気に動き出すから不思議である。モルゲンロートに染まる朝靄を高度を変え,場所を変え撮影してみる。地上はまだ朝靄の中だ。

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【朝靄が激しく蠢く早朝の尾瀬ヶ原】

湿原を覆い尽くしていた朝靄が少しずつ明るくなり,時折,朝靄越しに太陽の丸い形が眩しくなったり,見えなくなったりを繰り返す。そして,ふと朝靄が途切れそこから溢れた光が朝露を纏ったワタスゲやヤマドリゼンマイを照らすと,朝露の一粒一粒がきらきらと輝き,風に揺れる様は時間を忘れてしまう。さらに,薄い霧の彼方には薄い白虹も現れた。このところデジカメの撮影が疎かだったこともあり,今回は時間をかけて朝の光景も撮影した。

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【スポットライトが当たりヤマドリゼンマイの若葉が眩しく輝きます。】

朝靄が消えてしまわないうちに,ドローンでの撮影を再び開始。幻想的な光景を狙ってあちこち移動させる。はやり何もない日中とは違って朝靄のある光景は幻想的で魅力的である。朝食の時間なので撮影を切り上げて小屋に戻る頃には,ズボンの裾は朝露に濡れびっしょりになっていた。

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【夏空を写す尾瀬沼と沼尻の池塘】

今回は,ヤマスタのチェックインのこともあるので,迷わず東電小屋経由で見晴に向かう。途中,昨日はまだ蕾だったニッコウキスゲが二輪,山吹色の花を咲かせていた。ヨッピ橋を渡るとヨシッポリ田代のワタスゲが出迎えてくれた。尾瀬ヶ原全体で見ると例年並みと言える状態だが,東電小屋の周辺はいつもの年よりも確実に見応えがあった。こちらを回って正解だった。爽やかな風が吹き抜ける中を湿原内に咲き始めた花を撮影しながら見晴へ。

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【林内で見かけたゴゼンタチバナ】

熱くなった体をしっかりクールダウンしてから,段小屋坂へ。尾瀬ヶ原と違って所々に木漏れ日があるだけでほとんど木陰なのがありがたい。さらに,イヨドマリ沢の水は暫く手を入れていると痛くなるほど冷たく,そこを吹き抜ける風は涼しすぎて寒いくらいだった。そんな樹林帯の道を渓流の音を聞きながら,暑さを忘れて歩けるのはありがたいものである。

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【ウワズミザクラもそろそろ終盤】

白砂湿原の木陰で昼食後,沼尻休憩所に到着。今年は営業をしていないがテラスの陰に荷物を置いてゆっくりする。尾瀬沼に映る真っ白な入道雲,そして湖面を吹き抜ける夏の風・・・。夏真っ只中の光景の中にぼんやりと佇む。ふと,湿原の池塘も尾瀬沼も冷静な目で見ると,いつもと比べて,かなり水位が低いなと感じた。今年は梅雨らしい天気ではなく,雨が少なかったためなのか,今夏の電力需要逼迫による影響なのか不明ではあるが,気になるところである。

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【夕暮れの尾瀬沼】

昨日に比べて暑い中歩き続ける時間帯も少なかったが,登りで多少汗もかいたし蒸すので,早々に長蔵小屋にチェックインした。風呂の時間を待って直ぐに風呂場に。しっかり汗を流し,大きな浴槽にゆったりと浸かった。風呂上がりに,この日上山してきた太郎さんとゆっくり話をした。夕食の時間になったので食堂に向かう。この日の宿泊客は全部で20名程度。この時期は,時間的にゆっくりと食事をとる時間があるのはありがたい。

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【久しぶりに尾瀬沼上空にあった雲が真っ赤に焼けてくれました。】

夕食後,少し休んでから,昨日の反省から完全なブユ対策をして,食事後,夕暮れの時間帯になるのを待ってカマッポリ湿原へ。良さそうな雲が西の空にあったので,これは焼けるかも知れないとの期待が高まる。低い位置にあった雲の隙間から太陽の光が漏れると周囲のコバイケイソウがオレンジ色に染まる。そして太陽が尾瀬沼の彼方に沈むと,その光は上空にあった雲を真っ赤に染め上げた。パレットのようにいろいろな色が入り混じり,時間と共により濃く,鮮やかになっていく。そして,その気分を台無しにするのがブユである。対策をしていてもお構いなし。周囲をぶんぶんと飛び回るので,まず奴らを追い払ってからシャッターを切らねばならない。本当に鬱陶しい。
ブユと格闘しながら撮影を終え小屋に戻る。部屋に戻って横になっていたらいつの間にか寝てしまった。

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【尾瀬沼から立ち上る銀河】

*空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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■真夏の光溢れる尾瀬へ[1] [尾瀬ケ原]

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【真夏の空を映す池塘群】

□6月30日(木)晴れ時々くもり
 史上最速の梅雨明け,そして,6月にもかかわらず全国各地で気温が40℃を越え,東京では連日35℃以上の真夏日が9日も続く異常事態となった。偏西風の蛇行がその原因だという。ほぼ一週間続く晴天の予報を目にして,足は尾瀬に向かった。

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【もうダメかなと諦めていたズミですが,研究見本園で何とか見ることが出来ました】

 時期としてはワタスゲも見頃を迎え,至仏山も7月に入ると登山解禁となる。高山植物を求めて多くの登山者が訪れ,週末ともなれば一気に混雑するだろう・・・。
いつもなら梅雨の真っ只中で出かける機会もそれほど多くないが,いつもならワタスゲやレンゲツツジが見頃となる時期だ。
戸倉の第一駐車場は平日だというのにいっぱいだ。ちょうど出発待ちをしていた小型バスに揺られて鳩待峠に着いたが,予想以上に雲が多く至仏山頂も雲の中に隠れていた。

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【牛首付近。いつもはワタスゲの群落が見れる場所ですが,暫くここの群落は見ていません】

 今年もヤマスタのスタンプラリーが良いタイミングで始まっていたので,チェックポイントでチェックインしながら歩くことにする。まず,鳩待山荘からと思い,受付に入ると来栖支配人が。ちょっと談笑して山の鼻に向かう。雲の隙間から漏れる強い日差しを逃れるように薄暗い森に入る。平日のため,児童・生徒が次々と尾瀬学校で入山してくる。所々で立ち止まって説明している横をすり抜け,山の鼻に着くと至仏山荘前に見覚えのあるカメラザックが。

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【ちょうど見頃を迎えていたウラジロヨウラク。今年は当たり年のようだ。】

 至仏山荘にいた新井先生に挨拶をしてから,見本園に向かう。ミズバショウシーズンはすっかり終わったが,その後,シカ柵の効果があってミツガシワが例年以上の群落を作っているというので,それを確認したかったからだ。見本園内を一周したが,ミツガシワの見頃は既に過ぎ,フワフワになったワタスゲが気持ちよさそうに風に揺れていた。

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【イモリ池と至仏山】

 時間とともに,尾瀬ヶ原や燧ヶ岳・至仏山頂を覆っていた雲も徐々にとれ,真っ青な青い空が一面に広がった。容赦ない夏の強烈な日差しが辺りに降り注ぐ。前回はヒメシャクナゲが多く感じたが,今回はあちこちでウラジロヨウラクやタテヤマリンドウを見かけた。今年はやはり残雪が多かった分,これらの花は当たり年となっているようだ。

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【ハクサンチドリ。アップにするとラン科の花である事を実感します。】

 真夏の湿原を空撮しようとドローンを飛ばす。池塘の水面に映る青い空と真っ白な雲がいかにも夏らしい。しかし,空撮にも慣れてきたせいか,ただ撮っているだけでは面白みに欠けるなと思いつつもバッテリー2本ほど飛ばした。

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【オゼヌマタイゲキ。尾瀬沼では何故か見かけません?】

 何一つ遮るもののない尾瀬ヶ原を歩いていると,背面からジリジリと照らされる。体温を下げるために首筋に掛けていた濡れタオルもいつの間にか乾いてしまった。こんな時は,炎天下のベンチよりも拠水林の木陰がありがたい。ここで荷物を下ろして小休止。水分や塩分の補給を忘れたら,忽ち熱中症になりそうだ。尾瀬とは言え,手元の温度計では32℃を越えていた。もう,初夏を通り越して,すっかり真夏である。

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【夕陽に照らされるヤマドリゼンマイ】

 僅か2週間で一気に大きくなったヤマドリゼンマイやほとんど終わっていたズミに季節の移ろいの早さを感じながら龍宮小屋に到着。部屋につき,まず明日に備えてドローンのバッテリーの充電を開始する。程なく夕食の時間になったので,早々に夕食を済ませ,必要なカメラだけを持って十字路まで歩き,ベンチでのんびりする。

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【龍宮十字路の池塘の夕暮れ。この日は少し焼けてくれました。】

 夕刻が近くなるにつれ,忘れていた悪夢が・・・。この時期の朝夕の太陽が昇ったり沈んだりする時間帯になると,何故かきまって大量のブユが異常なくらい纏わり付いて周囲を飛び回る。ヤッケを着て帽子を被り防いだつもりでも隙間から入り込んだり,写真にも大量に写り込んだりする。厄介なのはドローン操縦中に送信機を操作する手にブユがとまってしまった時だ。もう操縦どころではなく,中断することもしばしば・・・

 前日が新月だったため,月明かりもなく星の撮影には好都合だと思っていたのだが,暗くなると急激に温度が下がった影響で夕霧が湿原を覆い始めた。幸い小屋の東側半分の空はぽっかり空いていたので,小屋周辺で天の川を撮影してそのまま眠りについた。

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【龍宮付近に架かる天の川】

*空撮にあたっては,DIPS・FISS・機体登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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