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色彩の競演【3】 [尾瀬ケ原]

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【寺ヶ崎(龍宮小屋付近)に登るオリオン座】

10月6日(水)(雨のち曇り時々晴れ)
連日,早起きを繰り返すと目覚ましをセットしなくても習慣で早々に目覚めてしまう。この日も5時頃に目が覚める。天気が気になって窓を開けて空を確認すると,木道はしっとりと濡れていた。ひょっとしたら朝ぐらいまで天気がもってくれるかも知れないという淡い期待は,一瞬で潰えた。これでは外も歩けない。朝食まで寝ていよう・・・,と横になって朝食の時間までぼんやりと時間を過ごした。

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【雨に煙る拠水林の紅葉(1)】

定時に食堂に向かう。尾瀬で撮影に追われることもなく,ゆっくりと朝食をとるのも本当に久しぶりだ。いつもならこの時間は撮影で忙しく動き回り,体がいくつあっても足りないくらいバタバタと過ごしている事が多いので,たまにはゆっくりするのもいいものだ。久しぶりの龍宮コーヒーを飲みながら次々と出発していく宿泊客を見送る。昨日から3連泊するというTさんも雨の中を尾瀬ヶ原を歩いてくると言って出かけて行った。

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【雨に煙る拠水林の紅葉(2)】

雨の中歩き出すのはなかなか気が進まないが,雨が小降りになるのを待って龍宮小屋を後にする。一時よりも雨の勢いも弱まり,霧雨程度になったので,スナップ程度だったら撮影できそうである。
雨に霞みコントラストの低くなった山々が墨絵のように浮かんでいる。カラカラと乾いた秋風に音を立てて揺れていた木々も雨に濡れ,本来の色を取り戻しより鮮やかだ。紅葉した葉やナナカマドの赤い実の先端にはたくさん雫をつけていた。

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【雨に煙る拠水林の紅葉(3)】

こんな日はドローンも飛ばせないが,雨に煙る湿原や低く流れていく雲を絡めて華やかな秋の尾瀬を切り取った。草紅葉から拠水林や山々に主役が移り,紅葉の見頃を迎えようとしていた。写真を撮りながらゆるゆる歩いていたら,徐々に雨も上がり,山の鼻に着く頃には青空も見えてきた。

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【マユミの実】

この日は「尾瀬学校」が行われているようで,中学生らしい生徒が次々に山の鼻に到着してはベンチで昼食をとり,慌ただしく尾瀬ヶ原へと向かっていった。徐々に天候は回復しているが,この状態で撮影しても良さそうな写真はあまり期待できないので,ドローンでの空撮は諦めて鳩待峠に向かった。

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【鳩待峠に向かう途中から青空の占める割合が広がってきた】

だんだん青空が広がり,そこから零れる光が赤や黄色の色合いを深める森を明るく照らす。そんな様子をベンチで休みながら眺めたりしながら峠への道を登っているとAさん,鳩待峠では再びKさんに会った。今回の尾瀬では毎日何処かで知人に会った。やはり,緊急事態宣言も解除になり,見頃となった紅葉を求めて多くの人が尾瀬に向かったのだろう。
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色彩の競演【2】 [尾瀬ケ原]

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【赤田代付近の上空から見る拠水林の紅葉】

10月5日(火)(晴れ)
平日にも関わらず長蔵小屋が満館になったのには訳がある。緊急事態宣言が解除になるのにあわせて昨日から「福島県民割プラス」というキャンペーンが始まり,福島県民は実質3000円程度で泊まれるそうだ。道理で混んでいるわけだ。蜜を避けるため夕食・朝食も数回に分けてとることになっていた。ゆっくり撮影したいので,何れの食事も最後にとることにした。

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【間もなく見頃を迎える大江湿原の森と燧ヶ岳】

雲が優勢だったが,大江湿原には少しだけ朝靄が漂っていた。上空の雲も一部で色付き始めていたが,燧ヶ岳山頂は光が当たる時間を過ぎてもなかなか紅く染まらない。日の出の位置に雲があるのだろう・・・。大江湿原では僅かにあった朝靄も急速に移動し,薄くなっていく。それを必死で追いかけ,記録に留めることを繰り返し,気付くと燧ヶ岳も漸く紅く染まり出した。朝の光が尾瀬沼を照らし始める頃,待ちかねたドローンを離陸させる。朝靄はほとんど消えかけていたが,朝の柔らかい光に染まる秋の尾瀬沼の様子を空撮できた。 ハズだった・・・・。

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【ほとんど綿毛も飛び立ったヤナギラン】

朝食の時間を少しオーバーしてしまったので,小屋に戻って急いで食事をし,チェックアウトの準備を済ませる。出発間際,入り口付近で紀子さんを取り囲んで何やら賑やかにしていたが,いつの間にか輪の中に引き込まれ,一緒に記念撮影に加わることになった。

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【沼尻から見た尾瀬沼。沼には多くの水草に覆われていた】

その後,大江湿原をあちこち移動し,撮影していると今度はHさんが友達とやって来た。Hさんと会うのは今年2回目だ。来るとは聞いていたがこんなに早い時間に尾瀬沼で会うとは思っていなかったのでビックリした。短い時間だが,談笑して沼尻に向かった。

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【尾瀬沼から見た燧ヶ岳】

昨日に引き続き良い天気であるが,今日は秋らしい雲が行き来している。撮影をするには願ってもない天気だ。明日は朝から天気が悪そうだったので,この日のうちに鳩待峠まで足を伸ばして帰ってしまおうかとも考えたが,移動だけで折角の撮影の機会を無駄にするのはもったいないと思い,予定通り龍宮小屋に宿泊することにした。
見晴に着くと原の小屋では早くも冬囲いの板を取り付け,小屋じまいの準備をしていた。まだ,紅葉のシーズンも始まったばかりだというのに,気が早いものだ。ちょうど昼時だったので檜枝岐小屋のオープンテラスでカレーを戴く。

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【トチノキの色のグラデーション】

食事後は雲が行き来するのにつられ,カメラを持って周囲をうろうろする。こんなに賑わいのある見晴を見るのは今年もあと僅かだと思うとやはり寂しさが漂う。その後は東電小屋からヨッピ橋を経由して龍宮小屋に向かった。2週間前に訪れた時には,綺麗な黄色やオレンジ色に染まっていたヤマドリゼンマイはチリチリに縮れ,赤茶色に変色していた。
途中のベンチで荷物を下ろし,短い時間だが明日はできないかも知れない空撮を行った。これで,明日雨が降ったとしても心残りはない。 ハズだった・・・・。

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【見晴付近で見られたツタウルシ】

2か月ぶりの龍宮小屋もかなりの賑わっていた。小屋周辺に設置されていたシカ柵撤去の担当者が複数泊まっていたからだ。急ぎ部屋に荷物を置き,ドローンの充電を始める。暫く部屋で横になって寛いでいたが,徐々に日が沈む時間が近づくにつれ,部屋から拠水林が紅く染まり出してきた。慌てて撮影機材を持って思わず小屋を飛び出した。

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【檜枝岐小屋のオープンテラスで寛ぐ人たち】

新しくなった木道に三脚を立て,夕焼けを期待しながら静かに池塘の傍らで待っていると,上空にあった薄い雲が時間とともに紅く色付いてきた。しかし,最後の段階でその夕焼け雲を隠すような大きな雲が手前に現れ,その視界を遮った。よりによってこの時間に現れなくてもいいのに・・・。

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【龍宮付近の夕暮れ】

小屋に戻って食事と風呂を済ませ,横になって携帯を操作していたら,携帯片手にいつの間にか眠り込んでしまった。睡魔には勝てずそのまま眠ってしまい,目が覚めたのは午前1時。外は曇り,もう星は見えないだろうと半ば諦めながらも外に出て確認をすると,オリオン座の他,秋から冬の星たちが煌々と輝いていた。撮影準備をして小屋周辺で星の撮影をする。何とか一度だけでも星の撮影ができて良かった。一時間程度,星の撮影をしてから部屋に戻り,朝まで休んだ。

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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【太陽が沈んだ後,見られた尾瀬ヶ原の秋の夕暮れ】
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色彩の競演【1】 [尾瀬沼]

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【夕陽を浴びたナナカマドと燧ヶ岳】  

10月4日(月)(快晴)
コロナの新規罹患者が急速に減り,9月末をもって緊急事態宣言も解除された。さらに,尾瀬は紅葉のベストシーズンを迎えようとしていた。当然の如く気持ちは尾瀬に向かう。上陸が心配された大型の台風も大きな被害をもたらすこともなく,日本を掠めていった。その後は秋らしい晴天が数日続くようだ。

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【透過光で見るとホオノキの黄葉もより一層輝く】

この時期になると尾瀬の紅葉の進み具合が気になる。所用で台風一過の秋晴れを落ち着かないまま2日間過ごし,4日からの入山となった。御池周辺のブナの紅葉にはまだ早いだろうと判断し,大清水から入山後,尾瀬沼から尾瀬ヶ原を歩くコースを選ぶ。
大清水に向かうバスの接続を考え,戸倉に車を置いて路線バス,タクシーを乗り継いで一ノ瀬に向かう。接続がうまくいき,あっという間に秋色に染まった一ノ瀬の森の中にいた。

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【尾瀬沼の沼尻南西部の未踏の湿原と池塘。治右衛門池,タソガレ田代,かたわれ田代】

この時期のお気に入りのコースの一つ,一ノ瀬から三平峠への森を歩く。透過光越しに見るブナの葉はまだ緑色が残っているものの黄金色の光を放ち,眩しく輝く。さらに,周囲を見渡せば,ツタウルシ,オオカメノキ,ナナカマドなどの赤やオレンジ色の葉が所々に鏤められ,彩りを添えている。鮮やかかつ多彩で森全体が華やかさに満ちあふれている。全体的に見れば紅葉のピークには少し早い感じだが,樹木の種類によっても,個体差によっても見頃は異なるので,生きのいい紅葉を見るにはちょうど良い時期なのかも知れない。

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【檜の突き出しの黄葉と輝く尾瀬沼】

岩清水のベンチで休んでいたらKさん,三平下に向かう途中でMさんと暫くぶりに遭遇し,談笑することができた。三平下では,尾瀬沼山荘の売店も久しぶりにオープンし,売店前のベンチにも人が溢れ,平日だというのに多くの人で賑わっていた。緊急事態宣言が解除された上,紅葉のベストシーズン,そしてこの好天である。皆,尾瀬に向かうこの日を待ち焦がれていたのだろう。

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【尾瀬沼に沈む夕陽もこんな南に寄ってしまった】

混雑を避け,早稲の砂風のベンチに移動して,空撮をしていたところ,いきなりドクターヘリが直ぐ近くまで飛んできた。しかも,暫くそこでホバリングしていて,スピーカーで何か言っていたが,ヘリの音が五月蠅くて何を言っているのか聞き取れない。どうも,負傷者を輸送するのでそこを空けろと言うことらしい。飛ばしていたドローンを急いで回収,避難し,三平下で休憩していた人と成り行きを見守った。ヘリから降りてきた2人の隊員が,負傷者と関係者をロープを使ってヘリに乗せ,あっという間に飛び立った。その間,15分。その後には,ヘリの風圧で木が折れ,飛ばされた落ち葉が空しく吹き溜まっていた。

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【暫くぶりに訪れた大清水平】

静寂が戻った三平下の一角でゆっくりと昼食を食べてから久しぶりに南岸道を歩いた。荒れ放題だった登山道もかなり修復され,歩きやすくなっていた。南岸道は,登山者も少なく,一部で沼の畔に立てることや燧ヶ岳の全容が見れるのがいい。途中から久しぶりに大清水平に向かう。登山道を塞いでいる倒木を避け,思い出を辿りながら山道を進むとぽっかりと青い空が広がる湿原に飛び出す。

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【大江湿原の草紅葉とカンバの森の黄葉】

十年以上訪れていなかったこの湿原。「あぁ・・・」木道や二カ所あったベンチも朽ち果て,時の移ろいを感じさせる。そこに立ち,風の音に耳を澄ますと,あの頃の空気感や思い出が蘇ってくる。ここで過ごした時間はここに閉じ込められたままになっていた。長い時間,思い出に浸り時を過ごした後は,長蔵小屋に向かう。

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【久しぶりに明かりが灯った「元長蔵小屋」】

この日の長蔵小屋は,平日にも関わらず満館になり,週末以上の賑わいを見せていた。小屋主の太郎さんに声をかけられ,囲炉裏の部屋を覗くと懐かしい紀子さんや佑さんがいて,談笑することができた。夕暮れ時には日差しも見れたが,思ったような夕焼けや星空には出会えなかったので,この夜はゆっくりと休んだ。

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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草もみじの頃【2】 [尾瀬ケ原]

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【太陽もかなり燧ヶ岳の南の裾野から昇るようになった】

9月21日(火)(快晴)
明日は中秋の名月。窓からふと外を見ると,いつの間にか上空を覆っていた雲がほとんどなくなり,丸く大きな月が尾瀬ヶ原上空で煌々と輝いていた。この日は,夕霧も靄も何故かほとんど出ていない。朝になればもう少し出てくれるかと期待をして布団に潜る。

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【この日はこの一角にだけ,ほんの短い時間だけ現れた朝靄。超貴重品です。】

予定よりもかなり早く起きてしまったが,この頃になると至仏山頂からモルゲンロートが始まるのが5時30分頃なので,部屋で横になって過ごす。頃合いを見て第二長蔵小屋を後にする。見晴から山の鼻間は尾瀬のメインルートだが,六兵衛堀から見晴間の木道の傷みが最悪と言っていいほど酷い。足を捻ってしまわないよう注意して龍宮十字路へ。

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【初秋の彩りを見せる湿原にうっすらとかかった朝靄】

上空には微妙に風が吹いているせいか,この日は朝になってもそれほど朝靄が出ることはなかった。ただ,場所によっては霜が降りたらしく,スルッと足を取られることが何度かあった。僅かにあった朝靄は時間とともに景鶴山の方に流れていく。この朝靄を追いかけるようにヤマドリゼンマイのビューポイントに向かう。

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【そろそろ紅葉が見頃となるダケカンバも長い影を落としています】

この群落地に着く頃,燧ヶ岳の裾野から太陽の光が零れ,朝露に濡れたヤマドリゼンマイを照らす。僅かに残った朝靄もいい感じだ。しっかりと一眼で撮影後,すかさずドローンを上空へ。僅かに残る朝靄が消えぬうちに撮影しておきたいと気持ちは焦る。何とか間に合ってうっすらではあるが,白虹らしきものも確認できた。

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【朝日を浴びて煌めくヤマドリゼンマイ】

今回はヤマドリゼンマイの紅葉を地上や上空から撮るのが目的ではあったが,10m以上の上空からだとどうしても,塊としてしか捉えられない。その一帯が紅葉している事ぐらいしか分からずあまり面白くないので,慎重に低空からの飛行も試してみる。風も雲も全くない状態で飛ばすには絶好のコンディションにも関わらず思うようなカットは得られなかった。残念・・・。

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【ヤマドリゼンマイもほとんど紅く染まり,見頃を迎えていました】

荷物を持って東電小屋に向かう。今年もヤマスタのスタンプラリーが行われているが,最後に東電小屋が残ってしまったためだ。缶バッジの配布は早々に終了してしまったようだが,今年のヤマスタも何とかコンプリートできた。あとは秋の湿原歩きをのんびりと楽しみながら帰るとしよう。人通りの少ない東電小屋のベンチに荷物を下ろし最高の風景に包まれて朝食をとる。

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【黄土色の湿原とヤマドリゼンマイの赤が尾瀬ヶ原の初秋を代表する色ですね】

この日は朝,太陽が昇ってから帰るまで雲一つない完璧な快晴の一日だったにもかかわらず,真夏の一日とは違って,爽やかな風に吹かれ,ベンチでゆっくりと休憩を取りながら鳩待峠に向かった。

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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【まだこのように黄色い色をしたヤマドリゼンマイもありました】
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草もみじの頃【1】 [尾瀬ケ原]

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【秋の明るい空を映す上田代の池塘群】

夏の記録的な降水量と悪天候が,9月に入っても続いているような不安定な天候が続いていたが,中旬になると漸く秋らしい天候に変わってきた。台風一過で好天が予想できたので,時期的に見頃を迎えているはずの草紅葉が見たくて出かけることにした。
早めに家を出発したものの,ライブカメラで朝靄の尾瀬の光景を見てしまうと,昨日のうちに出発しておくべきだったとの後悔が・・・。戸倉に着くと,第一駐車場は既に満車,第二駐車場も半分以上埋まっていた。久しぶりの好天とシルバーウィーク等の条件が相まって一気に人出が増えたのだろう。

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【個体差はあるが,ダケカンバの紅葉はそろそろ見頃を迎える】

乗合タクシーから下りると鳩待峠は,周囲の木々がほんのりと色付き,紅葉シーズンが目の前に迫ったことを告げていた。雲一つない一面の青空から降り注ぐ日差しも真夏のそれとは違って柔らかく,吹き抜ける乾いた風も爽やかだ。
まず,ドローンで周囲の様子を簡単に撮影してから,秋の気配が漂う森に足を踏み入れる。所々に紅く染まった葉が入り混じり,黄色く色付き始めた葉を通り抜けてきた光が,森の中を明るく照らす。僅かばかりの華やかさを感じると同時に,この光景を見ることが出来る時間も残り少ないと思うと一抹の寂しさを感じてしまう。カラカラと乾いた風が木々を揺らすと枯葉が音もなく落ちる。いろいろな色の葉が周囲に鏤められ,積み重なっていく。

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【ヤマドリゼンマイの葉はほとんど霜にも当たらず見頃を迎えた】

山の鼻に着くとベンチ周辺は,今が緊急事態宣言中であることを忘れてしまうくらい多くの人が休んでいた。今年もコロナ禍で山小屋は受け入れをかなり制限していたから,いつ来ても登山者は少なく,久しぶりに活気ある尾瀬を見た。今年は早々と営業を終える山小屋がほとんどなので,こうした光景を目にする機会はこの先もほとんどないだろう・・・。

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【ヒツジグサはまだ花を咲かせているが,徐々に紅葉が進んでいた】

徐々に雲は多くなりつつあったが,至仏山荘のカフェテラスでコーヒーを飲みながら早めの昼食にした。ゆっくりと秋の一日をここで過ごせたらとは思うが,じっとしていると妙に落ち着かないので,研究見本園・上田代に移動して空撮を開始した。しかし,この頃から徐々に大きな雲が移動してきては日差しを遮り,思うように撮影できない。逆さ燧のベンチで光線待ちをしていると尾瀬仲間のhoriguchiさんがやって来た。話を聞くと大清水から入山後,尾瀬沼を経由して日帰りするところだという・・・。今の自分にはとてもできない芸当だ。

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【秋空と草紅葉の湿原をバックに聳える燧ヶ岳】

この時期は木道工事用の資材があちこちに放置され,撮影の邪魔になってしまう。それを確認しながら龍宮十字路へ。そして今回,何よりも楽しみにしていたヤマドリゼンマイの黄葉が気になってヨッピ橋方面に向かう。何日か前の冷え込みで一部が茶色く変色したり,縮れていたりするものもあったが,時期的にはちょうど良い感じである。カメラの設定で色合いは微妙に変わるが,今年一番の見頃と言っても良いだろう。

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【この時期の草紅葉は,いろいろな色が楽しめるところがいい】

相変わらず雲が優勢だが,その隙間を通り抜けた午後の日差しがヤマドリゼンマイの大きな葉を背後から照らすと,緑,黄色,オレンジ色のグラデーションがステンドグラスのように鮮やかに輝きを増す。やがて雲が多くなり,撮影が思うように進まないので,適当に撮影を切り上げて山小屋に向かう。
今回お世話になるのは第二長蔵小屋。明日は平日なのでこの日の宿泊客は少なく,僅か5名。暫くぶりに泊まったが,かなり老朽化してしまったというのが正直なところ・・・。サービス面でも首を傾げざるを得ない部分も多くあり,残念な思いだけが残った。

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【木漏れ日溢れる明るい林内】

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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梅雨明けの尾瀬を歩く【3】 [尾瀬沼]

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【尾瀬沼を見守るように広がる銀河と夏の大三角】

7月20(火)(晴れ時々曇り)
上弦の月が沈む頃,上空を確認すると気持ちよいくらいに空一面に夏の星空が広がる。準備しておいた三脚を持って小屋の外に出ると,目の前をライトに照らされたたくさんの霧が行き交う。明朝は朝靄が期待できるかも知れない・・・。沼畔に三脚を立ててじっくりと星を撮影する。登山者も皆,寝静まり,物音一つ聞こえない静かな尾瀬沼を見下ろす天の川が尾瀬沼上空に大きく横たわり,夏の大三角が明るく輝く。

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【水分が多いせいかいつもより長い時間,朝靄が大江湿原を覆った】

他にも小屋の周辺で何枚か撮影したが,撮影開始が遅かったせいか,それほどしないうちに空が明るくなり始めたので,一旦小屋に引き上げた。1時間にも満たなかったが,尾瀬の夏の夜の満天の星空を貸しきりで堪能させてもらった。
宿泊者が寝静まり,静かな小屋の中を静かに部屋に戻り,一旦休憩。

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【定番ポイントから見る朝靄の大江湿原】

冷えた体が温まり,気持ちよくなったせいで、少し寝過ごした感じだが,再度必要な機材だけを持って小屋の外に。やはり,期待通り大江湿原にはいつも以上の朝靄が立ち込めていた。元長蔵小屋横のテラスでは,数名のカメラマンが三脚を立ててスタンバっていた。朝靄越しにうっすらと山頂が赤く色づいた燧ヶ岳が見える。既に上空では,モルゲンロート劇場が始まっているに違いない。

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【少し上空から。朝靄に包まれる大江湿原の朝】

そこで数枚撮影して,大江湿原に移動する。やはりキスゲは少ないな・・・。かつても裏年にはこのようなこともあったが,最盛期のニッコウキスゲの群落を知る者としては,今の尾瀬の状況はやはり寂しさを感じてしまう。しかし,数も分布している場所も限られるが,ちょうど見頃を迎えたニッコウキスゲが朝露に濡れ,小さなしずくの球をたくさん蓄えて朝陽が射すのを健気に待っていた。

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【今年のニッコウキスゲは時期的には見頃でしたが,完全な裏年でした】

ここで空撮開始。既に燧ヶ岳山頂を照らしていた朝陽は,尾瀬沼西岸を照らし始めていた。朝靄も大江湿原付近に澱んだままだ。試行錯誤しながら空撮に没頭していると,いつの間にか大江湿原にも光が差し込む。うまくすればここで白い虹が見れるかも知れない・・・。よく目を凝らすと朧気ながら三本カラマツを取り囲むように半円のアーチが見えた。

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【動き始めた朝靄に朝日が差し込み幻想的な光芒があちこちで見られた】

初めて尾瀬沼で見る白虹。大江湿原は地形の関係もあって,湿原に日が射す遅い時間まで朝靄が留まることが少ないため白い虹を見る機会がほとんどない。自分自身,今まで写真で見ただけで実物を見たのは初めてである。上空でドローンを飛ばしていたので,上空から見た大江湿原の白虹の撮影が一段落してから地上からも撮影した。しかし,この頃にはちょっと薄い白虹となってしまったのはちょっと心残りではある。

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【尾瀬沼で初めて見た白虹を少し上空から】

それにしても,予想以上に条件に恵まれた朝だった。大江湿原を少しだけ散策して,小屋に戻り朝食をとった。
久しぶりに太郎さんと談笑して,荷物を纏めて小屋を出る頃にはすっかり夏空が広がる真夏の尾瀬が目の前に広がっていた。

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【大江湿原で見る白虹。上空からパノラマ撮影】

夏の草が青々と茂る早稲の砂風のベンチに荷物を下ろし,最後の空撮を行い,尾瀬を後にした。梅雨明け10日。比較的天候は安定していたものの雷雨あり,夕焼けあり,白虹ありで充実した3日間を過ごすことが出来た。

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【朝靄立ちこめる尾瀬沼の朝】

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梅雨明けの尾瀬を歩く【2】 [尾瀬ケ原]

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【尾瀬沼で見る夏の夕暮れ】

7月19日(月)(晴れ時々曇り)
昨夜は条件が整えば星景写真の撮影をしようと考えたが,目が覚めた時には,龍宮小屋周辺は濃い霧に覆われていてとても無理そうだったので,この日の星の撮影はは諦めて寝不足を解消すべく早々と休んだ。

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【朝靄に包まれた森に朝日が差し込む。光芒が美しい。】

目が覚めた時には,既に日の出時刻を回っていた。必要な荷物だけを持ち,この日はヨッピ橋方面に向かう。気付くと,木道を覆うように伸びた草に付いた朝露が靴やズボンの裾をいつの間にかビショビショに濡らす。ネットで確認すると至仏山頂は既にモルゲンロートに染まっているようだが,尾瀬ヶ原は相変わらず深い朝靄に覆われ,目の前の景色は一向に変わらない。そろそろいいかなと思い,途中からドローンを飛ばす。100mも上げると尾瀬ヶ原に澱んだ朝靄を突き破り,朝陽に染まる燧ヶ岳と至仏山が顔を見せる。モルゲンロートに染まる至仏山に燧ヶ岳の影が重なる。

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【はっきりくっきり完璧な白虹が見れました】

尾瀬ヶ原に朝の光が届くまでにはもう少し時間がかかるので,変化の乏しい上空で暫く撮影を続ける。この時期は,山の鼻やヨシッポリ田代付近が真っ先に,朝陽に照らされるようだ。湿原の様子が変化するまで空撮を一旦休止して,地上の撮影を始める。朝露に濡れるヤマドリゼンマイ。朝靄が激しく蠢く湿原。しっとりとした夏の朝を満喫していると,やがて周囲が明るくなる。そろそろ湿原の朝日が射し込む頃だ。目を凝らすと目の前には大きなアーチが現れ,時間とともによりくっきりとした白虹になっていく。すかさずドローンを上空へ。地上から見た白虹が,上空から見るとドローンの影を中心にした大きな円に変わる。

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【上空から見る白虹の一部】

朝日が当たると朝靄が激しく動き,その分布の濃いところと薄いところが出来る。その朝靄の薄いところを通して朝陽を反射して眩しく輝く池塘が見える。この時間帯しか見れない光景を心ゆくまで撮影してドローンを戻す。所々朝靄が残る朝の湿原を横目で見ながら急いで小屋に戻る。
朝食や出発準備を済ませてゆったりと朝のコーヒーを頂く。深い朝靄や完璧な白虹を撮影できて,今日やるべきことはほとんど済ませた気分である。あとは気儘に尾瀬沼に向かうのみ。

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【朝のドラマの終焉。これからが暑さの本番です】

弥四郎清水で冷たい水を補給して見晴で情報収集。尾瀬ヶ原を後にして段小屋坂を登る。まだ10時だというのに既に蒸し暑い。イヨドマリ沢や谷筋を歩く時には,冷気が澱んでいるためホッとする。重い荷物と腰の痛みを堪えながら白砂峠を越え,尾瀬沼へ。

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【白砂湿原・盛夏】

沼尻の休憩所もトイレも今シーズンは開いていないが,休憩所周辺ではたくさんの人が休んでいた。ここで昼食休憩と空撮をするために大休止していたが,この日も遠くで雷の音が聞こえ出し,急速に雲が広がる展開に。

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【沼尻付近には藻がびっしり覆い尽くし,不思議な色彩を放っている】

急いで昼食を済ませた後は,空撮を取りやめて長蔵小屋に向かう。
昔から「コバイケイソウの当たり年はキスゲ等の花が不作」と言われていたし,SNSの情報でも今年のキスゲはそれほど良くはなさそうだったが,それは間違いではなかった。時期的にはちょうど見頃なんだけどなぁ・・・

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【空高く伸びていた入道雲も夕陽に染まる】

受付を済ませ,部屋で寛いでいると予想通り雨が降り出した。入浴後食事を済ませて尾瀬沼の畔でのんびりする。燧ヶ岳上空に現れた入道雲が夕陽に染まり美味しそうな綿菓子のようだ。昨日のような派手な夕焼けにはならなかったが,徐々に暮れていく尾瀬沼の夕暮れを暗くなるまで楽しんだ。

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【一番大きな入道雲が燧ヶ岳山頂にかかり夕陽に染まっていた】

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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梅雨明けの尾瀬を歩く【1】 [アヤメ平]

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【久しぶりに尾瀬ヶ原で見るスケールの大きい夕焼け】

7月18日(日)(晴れのち曇り,雨のち晴れ)
コロナ禍による規制や自粛要請,オリンピックの無観客での開催など暗いニュースばかりが続く毎日。閉塞感で息も詰まりそうになり,暫くぶりに尾瀬の空気を吸いたくなった。新種のウィルスへの対応に右往左往する人間を尻目に,季節は確実に移ろい,鬱陶しい梅雨も明けた。ネットに溢れる情報では,今年のニッコウキスゲはあまり期待できないようではあるが,気分転換には行くしかない・・・

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【横田代全景】

睡眠時間もほとんど取れないまま早朝に出発。鳩待峠に着いたのは9時頃となった。梅雨明け後の好天とキスゲのシーズンとあって最近の尾瀬に比べて入山者は明らかに増えている。相変わらずコロナ罹患者は多いのだが,ワクチン接種も進み,人の移動も活発になっていると感じた。

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【夏雲を映すアヤメ平の池塘と燧ヶ岳】

好天で風も少ないのでドローンを飛ばしていると,突然,安類さんが目の前に。お約束の飛行許可を得ているかどうかの確認だという。
至仏山は入山規制解除後,間もないとあってかなり混雑しているようである。キスゲはそれほど期待できないので,今回はまず,アヤメ平に向かう。

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【アヤメ平の池塘群と至仏山】

ここ数日,それほど雨が降っていないせいか登山道がぬかるんでいたり,木道が滑りやすくなっていたりすることもないのは嬉しい。強烈な日差しを遮ることの出来る樹林帯歩きは心地良い。ただこの日は,湿度は極めて高く,風もないためサウナにでも入っているように汗が滴り落ちる。しかも替えたザックのバランスが悪く,少し歩くとかなり腰にくる。1時間も歩くと,青空と真っ白な入道雲を映す池塘の傍で,ワタスゲが揺れる横田代の一角に飛び出す。いかにも夏の尾瀬といった感じだ。
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【涼風吹きぬける夏のアヤメ平】

ベンチに荷物を下ろし,横田代やアヤメ平の空撮を開始。吹き抜ける風は爽やかだが,日差しはジリジリと突き刺すように熱い。行き会う人もそれほどなく,ほぼ貸切状態で撮影を終えたが,アヤメ平に着く頃から急速に雲が多くなり,遠くで雷鳴も聞こえるようになった。

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【夏雲湧くアヤメ平】

崩れるとしても暫く先かなと高を括り,のんびりと昼食をとっていたが,思いの外,急激な天候の変化に慌てて長沢道に逃げ込む。暫くすると大きな雨粒が激しく降り出した。ザックカバーをつけ,滑りやすくなった木道を気をつけながら龍宮十字路へ。個人的に長沢道で一番歩きにくいと思うのは,土場~長沢頭までの雨に濡れた木道だったが,ここに新しいゴムの滑り止めが全面に張られたのは非常にありがたいと感じた。

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【一部にはワタスゲが咲き残っていました】

小降りになる頃,龍宮十字路へ。雨が激しかったためか湿原を歩く登山者は少ない。午後の柔らかな日差しに照らされて,雨上がりの湿原はきらきらと輝いていた。虹も出るかなと期待したが,見ることは出来なかった。そのまま,予約してあった龍宮小屋に向かう。コロナ対策で受け入れ制限をしているが,この日は20名程度の宿泊者があって賑わっていた。

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【早くもたくさんのアキアカネが飛び交っていました】

夕食後,携帯だけを持って辺りをうろうろしていたら,空の雲が焼けそうな気配になってきたため,急いでカメラを取りに小屋に戻る。それでも,西の空は低い雲に覆われていたので,それほど焼けることはないかなと思っていたが,みるみると広い範囲が赤く染まり,ここ数年で一番の夕焼けとなった。

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【池塘に映る夕焼け雲が妙に綺麗でした】

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです。
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春の息吹きの中で【3】 [尾瀬沼]

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【尾瀬沼に浮かぶ夏の星座】

■6月11日(晴れ)
今夜は新月。天候さえ許せば絶好の星景写真撮影日和だ。尾瀬沼は尾瀬ヶ原に比べて夜霧や朝靄も出にくいので星の撮影には都合がいい。深夜にふと目が覚めて窓の外を確認すると,雲一つない満天の星空が広がっていた。

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【明ける大江湿原。尾瀬沼の朝靄が立ちこめている時間はそれほど長くありません】

昨夜は星の撮影を諦めていたので,条件の揃ったこの日は寝るわけにいかない。小屋の周りをカメラを担いで歩き回り,所々で撮影を繰り返す。尾瀬沼の南側には,なだらかな皿伏山しかないため,低い位置にある蠍座もしっかり撮影できた。短い時間で引き上げるつもりでいたが,熊よけにつけたラジオを聞きながら1時間ほど撮影を続けて部屋に戻った。

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【朝陽に染まる尾瀬沼】

日中の気温は高いとはいえ,やはり夜は相当冷え込んで体も冷えたせいか,布団に入って温まると直ぐに眠ってしまった。
寝過ごさなければいいけどと思いながらも目覚ましを設定する前に眠りについてしまったようで,気付いた時には既にライトがいらないくらいに明るくなっていた。「やばい・・」

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【朝日を浴びる三本カラマツ】

必要な機材だけを詰め込んだリュックを担いで小屋を出る頃は,燧ヶ岳の山頂は朝陽を浴びて赤く染まっていた。大江湿原には僅かだが朝靄が漂い,初夏の朝らしい爽やかな光景を見せていた。まず,小屋の周りを簡単に撮影してから,ドローンで撮影を始めた。

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【陽が当たると僅かについていたしもが溶け出し,輝く】

朝靄もまだ消えずに残ってはいるものの,尾瀬沼周辺の朝靄は薄く控えめで,上空からではそれほどの存在感はない。上空からは,遠く至仏山や景鶴山も見ることが出来る。季節や時間が変わると見えてくるものや撮りたいものが毎回変わってくる。今まで気付かなかったものを見つけては驚き,心躍らせながらも撮影を進める。手を変え品を変え,同じような場所をあてもなく何度も飛び回る。だから,できあがった写真や動画はいつも行き当たりばったりになってしまうのだが・・・。

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【僅かに霜が付いたコバイケイソウの葉】

そして,朝陽が大江湿原にもやっと届くと,その光は真っ先に三本カラマツを照らし出す。スポットライトを浴びた舞台女優のように,凜と立つ大江湿原のシンボルを浮かび上がらせる。朝靄でしっとりと濡れたカラマツの葉がきらきらと煌めき,そして輝く。その儚くも美しい瞬間を夢中で記録した。

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【ヤマドリゼンマイも朝露に濡れ,生き生きとしていた】

気付くと大江湿原を包んでいた朝靄はいつの間にか消え去り,眩しい光が辺りを照らしていた。ドローンでの撮影を一旦休止して,眩く輝く湿原の表情を切り取る。ドローンを飛ばすことに夢中で見逃していたが,木道や湿原には僅かに霜が降り,小さな花やコバイケイソウは白く縁取られていた。しかし,それも束の間,朝陽を浴びた場所から,その僅かな霜が溶けて朝露をとなって輝く。一本一本の草までもが美しく,そして儚い。一期一会の貴重なこの瞬間が消えてしまう前に記録しなくては・・・ 

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【この時期としては大変珍しく,3日間晴れてくれました】

時間も忘れて夢中で撮影していると,いつの間にか朝食の時間になってしまったので急いで小屋に戻る。食事を済ませ,朝のコーヒーで一服。朝の撮影をすませた後の至福の時。このまったりとした時間がたまらなく好きだ。
荷物を纏めて小屋を出発する頃には,太陽は高く,空はからっと晴れ渡っていた。今日も天気は良さそうだ。梅雨入り前のこの3日間,奇跡的に晴れてくれたことに感謝したい。思うような撮影もできたし,久しぶりに山小屋でゆっくりすることもできた。三平峠を越え,賑やかなハルゼミの声を聞きながら,のんびりと大清水に戻った。

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです

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【不明です。どなたかご存知でしたら宜しくお願いします・・・】
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春の息吹きの中で【2】 [尾瀬ケ原]

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【上空から見る白虹。ドローンの影を中心にそれを取り囲む大きな白い虹ができる】

6月10日(晴れ)
明日は新月なので月に邪魔されることもなく星の撮影ができるかなと期待していたが,夜半には,いつものように夜霧が発生して龍宮小屋周辺は,ほとんど真っ白になった。星の撮影は明日の楽しみにとっておくことにして,朝靄の尾瀬ヶ原の撮影に備えてその夜は寝ることにした。

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【雲海に浮かぶ燧ヶ岳】

目が覚める頃になっても,まだ小屋の周囲は真っ白な霧に覆われていた。必要な荷物だけを持って小屋から出るには出たが,霧に覆われ周りの様子は全く分からない。そろそろ至仏山頂が朝陽に染まる頃である。空撮後の撮影も考慮して撮影場所を移動する。

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【朝の湿り気を帯びた空気をすり抜けて朝の光が湿原に届く】

長時間,霧に覆われていたせいか,木道がしっとりと湿り,場所によっては霜が降りているところもある。暫く歩いても朝靄の状態は変わらないが,目的のベンチにザックを置いてライブカメラを確認すると,予想通り,至仏山は朝陽を浴びて赤く染まっていた。急いでドローンを離陸させた。あっという間に朝靄の上空に出ると彼方には,モルゲンロートに染まる至仏山の姿があった。

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【沼尻の池塘群と尾瀬沼。上空の雲がすっかり夏のよう・・・】

湿原は真っ白な朝靄に覆われ眠りのさなかだが,上空では既に朝の劇的なドラマが繰り広げられていた。朝の光を受けて朝靄は慌ただしく動き,大きくうねり尾瀬ヶ原を行き来する。そのうねりが大きなスクリーンとなって太陽の光を映す時,地上では白い虹となって目の前に姿を現す。地上では視点となる者の影を中心に上半分の半円を描くが,上空ではその朝靄の分布や高度によって下半分の半円や,ドローンの影を中心とする大きな円となる。

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【初夏の光溢れる沼尻平】

そんな幻想的な朝靄の尾瀬ヶ原の上空を飛ぶドローンから送られてくる映像を見,僅かな時間をとらえては,時々カメラを構えて目の前の光景を記録する。
しかし,どうしても気になる・・・。下の大堀や龍宮付近にも昨年から本格的なシカの防護ネットが張られたが,これが,写真を撮る者にとって非常に目障りな場所に所構わず張られている。シカの食害から花を守れるのは良いことだが,花をひっくるめた風景の撮影を楽しみにしている者にとっては堪らない。花あっての尾瀬,尾瀬あっての花である。ここまで風景に入り込んでしまっては,景観破壊行為の何物でもない。もっと邪魔にならない樹林帯寄りに張ることは出来るはずである。

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【展望デッキからみるミネザクラと燧ヶ岳】

尾瀬ヶ原での撮影を終え,朝露に濡れ逆光に輝く湿原を眺めながら小屋に戻り,朝食をとる。2年ぶりの龍宮小屋のモーニングコーヒーをのんびりといただいてから尾瀬沼を目指す。当初はトガクシショウマや三条の滝を見て,尾瀬沼に向かうつもりでいたが,体調や時間を考慮して,通常のルートで尾瀬沼に向かった。

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【まだ見頃のミネザクラもたくさん残っていた】

すっかり日差しが強く,森の中を歩くルートは本当に心地良い。時々現れる渓流で火照った体を冷やしたりしながら白砂峠を越えると,林内に新鮮なムラサキヤシオツツジが多く見られるようになる。所々に残雪も見られるようになり,周囲には小ぶりなミズバショウが咲いていた。少し標高が高い分,花の見頃も,全体的に尾瀬ケ原より遅れている感じだ。

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【尾瀬沼の夕暮れ】

沼尻の休憩所で昼食後に空撮し,長蔵小屋に向かう。尾瀬沼周辺の山小屋は今年はコロナ等の影響で,どこも営業を再開してから10日ほどしかたっていないせいか,人影もまばらで静かな昔ながらの尾瀬を満喫した。宿泊先である長蔵小屋のこの日の宿泊者は3名しかなく,個室でゆっくり骨休めすることができた。食事を済ませた後,のんびりと散策の時間がとれるのは,日の長いこの時期ならでは。徐々に傾く夕陽に照らされるミズバショウを撮影して,静かな山小屋に戻り,早めに休んだ。

*空撮にあたっては,DIPS・FISS登録,関係機関への連絡・調整済みです

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【夕陽を浴びて輝くカマッポリ湿原のミズバショウ】
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