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眠りにつく尾瀬 [尾瀬ケ原]

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【すっかり雪に覆われた尾瀬ヶ原。この雪が根雪になることはないのだろう・・・】

11月5日【曇りのち晴れ】 
尾瀬の入山口,鳩待峠,大清水,沼山峠に通じる道もいよいよ閉鎖となる前日,尾瀬に久しぶりに大量の雪が降った。ここ数年,温暖化の影響からか新雪に覆われた尾瀬ヶ原の様子を見る機会は極めて少ない。せっかくの機会なので行ける時に行っておこうと急遽,鳩待峠に向かった。

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【雪晴れの登山道。すっかり葉が落ち明るくなった林内を歩く】

紅葉も終盤を迎えた奥日光も混雑からは解放され,気持ちよく車を走らせていると車道に大きな鹿が現れた。それも大きく立派な角を携えた雄鹿だ。こんな角で突かれたら車に大穴を開けられかねない。機嫌を損ねないようにスピードを落として慎重に車を走らせる・・・。しかし,暫く走っていると,次から次へと同じような雄鹿が現れる。全部で10匹近くはいただろう。さらにはカモシカまで現れた。鹿のサファリパークにでも迷い込んだか・・・

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【山の鼻ももうすぐ。見慣れた風景も雪に覆われて一変・・・】

最後に真打ち「熊」との遭遇もあり得るな・・・。今までにないくらいの数の野生動物の出迎えを受け,鳩待峠に着く頃には,気持ちもやや後ろ向きになっていた。
駐車場には以前から駐めてあったと思われる分厚い雪に覆われた車が数台,今日到着したと思われる車が2台寂しげに駐まっていた。

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【ふわふわの雪が湿原を覆う。池塘も場所によって表情が異なる】

準備だけは整え,鳩待峠休憩所に向かう。至仏山頂は雲に覆われ,晴れる気配はない。GPVでは昼頃から完全に晴れる予報にはなっているが,のんびりとそれを待つ余裕はない。今日は,午後2時までに戸倉に戻らなければ,道路が冬季閉鎖されてしまうのだ。

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【雪晴れの湿原。燧ヶ岳がなかなか山頂を見せてくれません】

鳩待峠からの様子を撮影していると,突然,峠まで数台の車が上ってきて,中から多くの人が降り立った。ビジターセンターの閉所作業をするのだという。その一団は,慌ただしく山の鼻に向かっていった。その人たちの後を追うように登山道に積もった雪を踏みしめながら歩き始める。前回とは明らかにその量が違う。優に15~20cmは積もっていただろうか。一人でラッセルするとなると厄介だが,先行者があったのでその苦労は軽減された。

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【氷で閉ざされた池塘のヒツジグサの上に雪が降り積もる】

すっかり葉を落とし,光溢れる林内には,昨日降った純白の雪が降り積もり,木漏れ日を眩しく反射させている。雪晴れの気持ちの良い林内をゆっくりと進む。前回たくさん見かけた熊の足跡もほとんどないが,油断は禁物。イヨドマリ沢周辺には,あちこちに熊の足跡があった。まだ冬眠はしていないようだ。

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【葉が落ち,林内が見渡せるようになった拠水林。川の流れも見えます】

先ほどの人たちが山の鼻で慌ただしく閉所作業をするのを横目に上田代に向かう。その先は,2~3名の踏み跡だけとなり,ふわふわで歩きにくい雪を踏み外さないように慎重に歩く。人のほとんどいない最終日に,高架になった木道から落ちて怪我する事態だけは避けたい・・・。激しく雲が行き交い,時々青空が空を横切ると,真っ白な雪原に落ちたスポットライトが雪原を行き来する。尾瀬のシーズン中に真新しい霜や雪と遭遇することが少なくなり,こんな雪の日ならではの光景を実際に尾瀬ヶ原で目にしたのは本当に久しぶりである。この雪は果たして根雪となって来シーズンまで残るのだろうか・・・上田代の逆さ燧のベンチ付近まで行き,折り返す。


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【湿原の白と池塘の黒。色の対比が面白い】

だんだん,天候は回復していたが,最後まで燧ヶ岳や至仏山の山頂は見ることができなかった。しかし,最後の最後に振り返ると,その時だけ燧ヶ岳の山頂が姿を現してくれた。燧ヶ岳に今年最後の挨拶をして帰路につく。

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【豪華絢爛,錦秋の尾瀬から僅か半月でモノクロの尾瀬へ。その変化は劇的です】

やはり,尾瀬最終日。しかも,平日でもあり一般の登山者と会ったのは10名程度だ。あとは尾瀬関係者ばかりである。帰り道,木道工事をしていた人に話を聞くと,木道工事は道路が冬季閉鎖になっても終わるまで続けるらしい。ビジターセンターの片付けも終わったようで山の鼻は物音一つしない静かな初冬の尾瀬に戻っていた・・・。尾瀬には半年ぶりの静寂が訪れ,長い眠りにつくのだろう・・・。

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【ドローンで間近から見た小至仏山】

すっかり天候も回復し,新雪を纏った至仏山がどっしりと見守る鳩待峠に着いたのは午後1時。冬季閉鎖には何とか間に合うだろう。最後に空撮をして尾瀬の地を後にした。

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【新雪に覆われた尾瀬を望む。燧ヶ岳はまた雲に隠れてしまった・・・】
※空撮に当たっては,国交省DIPS・FISS登録,関係機関への連絡調整済みです。
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新雪に包まれた尾瀬ヶ原 [尾瀬ケ原]

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【朝日を浴びて輝く新雪と樹氷(猫又川上流,柳平付近)】

尾瀬の全ての山小屋は今年の営業を終え,尾瀬の入山口に続く道路も間もなく閉鎖となる。
新型コロナウィルスの対応に追われ,未だ嘗て経験したことのない今年の尾瀬のシーズンも間もなく終わろうとしているが,最後ぐらいはいつものように新雪に包まれた尾瀬を見て終わりにしたいと思っていた。

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【研究見本園の北側にある大白沢山と猫又川源流】

願いが通じたのか,週末は降雪直後に晴れるとの予報になった。
冬用タイヤに履き替え準備万端その日を待ち,降ったばかりの雪に逢いたくて深夜に車を走らせた。津奈木橋を越えた辺りから道路の一部が凍結していた。駐車場には30台程度の車が既に駐まっているが,皆仮眠中なのだろうか,乾いた空を吹き抜ける強い風の音が響き,上空には今月2度目という満月が煌々と輝いていた。

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【朝の光に染まる至仏山中腹】

少し休憩してから鳩待峠休憩所に向かう。風も強くドローンでの空撮はできそうになかったので,至仏山は諦めて尾瀬ケ原に向かうことにした。ただ,鳩待峠でさえ積雪はわずか数センチしかなく,尾瀬ケ原はそれほど積雪していないのではないかとの心配がよぎる。

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【徐々に青空のエリアが広がってきました】

林内に入ると,ふんわりと新雪が降り積もった木道には,数分前につけられたような生々しい熊の足跡が延々と続いていた。木道の先に,突然その足跡の主が現れてもおかしくはない状況に緊張感でいっぱいになる。いつもはザックに取り付けている鈴を手にしっかりと持ち,音を出しながら進むが生きた心地がしない。朝夕の薄明の時間帯は最も危ない。山の鼻までの道がとてもとても長く感じられたが,何とか無事に到着。ホッと胸をなで下ろす。

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【青空を背景に輝く至仏山の新雪】

見本園から光景は,出発時とは明らかに様子が異なり,燧ヶ岳や至仏山の頂は雲に隠れ,モルゲンロートに染まった雲が僅かに行き来しているだけだ。この付近だけ天候の回復が遅れているのだろうか。一瞬だけ至仏山頂が顔を出したり,雲の隙間から零れた光が降ったばかりの新雪や樹氷を照らしたりする時間はあるものの,上空はほとんど低い雲に覆われている。気温は-5℃。風も冷たい。

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【この頃はまだ雪も溶けずに残っていたのですが,肝心の光が・・・】

研究見本園で僅かの晴れ間を捉えて写真を撮ったり,空撮したりしてから上田代に移動する。上田代のベンチに荷物を下ろして天候の回復を待つが,一向に良くなる気配もなく,時間ばかりが空しく過ぎる。紅葉のシーズンは過ぎたとはいえ,今日は週末。8時頃になるとたくさんのハイカーが次々にやって来た,木道工事の音も遠く響く。

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【ヒツジグサを閉じ込める氷が江戸切子のように綺麗でした】

朝食をとっている時間にも刻々と風景が変わる。湿原の灌木や草に僅かに付いていた霜が溶け,降り積もった雪がどんどん溶けていく。朝日に輝く霜や新雪の光景が見たかったが太陽は雲に隠れたままだ。しかし,時間とともに上空の雲は明らかに動きが激しくなり,時折,湿原に光を落とすようになる。思い描いていたような光景とは異なるが,重い腰を上げ,あちこち歩き回ってシャッターを切る。雲の中に隠れていた至仏山,燧ヶ岳そして景鶴山も徐々に姿を現した。

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【新雪を纏ったヒロハツリバナ】

そこからの変化は急激だった。あっという間に雲がとれ,湿原を覆っていたはずの新雪もほとんど消えてしまった。ピーカンの青空と乾いた湿原,拠水林に点在するカラマツの黄葉。遠くには冠雪した尾瀬の山々。まさに初冬から晩秋の尾瀬に逆戻りしたかのような劇的な変化だった。雪がかなり降って翌日も残るようなら戸倉でもう一泊する予定だったが,雪が完全に消えてしまったことで一気に気持ちも萎み,このまま日帰りすることにした。

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【最後まで雲に覆われていた景鶴山もやっと姿を現してくれました】

そんな光景の中田代を散策後,上田代に戻ってベンチで寛いでいると,尾瀬仲間のてばまるさん,horiguchiさんがやって来た。今年はコロナ禍のため入山自粛要請があったり,オフ会も中止になったりで尾瀬仲間に会う機会もほとんどなかったが最後に漸く会うことができた。談笑後,中田代を散策してから戻るという二人を見送り,残雪の残る道をゆるゆると登って鳩待峠に戻る。
二人が到着するのを待ち,下山後は三人で龍宮小屋の小屋主さん宅を訪問。一年ぶりの再会でたくさん話もしたかったが,バスの時間もあるので来年,龍宮小屋での再会を約束して帰宅した。何とか新雪を見ることができたし,最後に尾瀬仲間にも会えたし,充実した一日だった。

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【カラマツの黄葉が綺麗な上田代。朝の雪は一体どこへ・・・】


※空撮に当たっては,国交省DIPS・FISS登録,関係機関への連絡調整済みです。
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尾瀬清秋【3】尾瀬ケ原編 [尾瀬ケ原]

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【雨上がりの尾瀬ヶ原。長い間霧が流れしっとりとした空気に包まれてていた】

■10月15日(木) 曇り時々晴れ
酔いのせいか,疲れのせいか分からないがよく寝た。尾瀬に来た時の方が,家で眠るよりも睡眠時間がとれている。眠りが浅くなった時に聞こえるのは,窓の外に響く激しい雨の音。星の写真を撮影するには条件的には良い日だったが,そんなチャンスは全くなかった。

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【雨に濡れ,紅黄葉もその色の深みを増す】

山の鼻小屋の部屋は今回は「ワタスゲ」。かの写真家,某先生がよく宿泊されていた部屋である。ちょっと狭いが部屋の2面に窓があり,外の様子を確認するには都合がいい。朝起きて窓を開けると,ヒンヤリと湿った空気が室内に流れ込む。雨はやんだものの湿原には霧が流れ,まだ眠たげだ・・・。
館内放送に急かされ,食事を済ませる。早々に出発準備を済ませるが,今日はどうしよう?

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【霧も上がり,やがて雲間から光が漏れる天候に変わった】

一日曇りだろうし,ぱっとしない天候だったら,早々に引き上げるつもりだったが,荷物を一式持って上田代まで散歩することにした。普段は時間に追われたり,写真を撮りまくったりと,ゆっくりと落ち着いて尾瀬の中で過ごすことも少なかったのでベンチに荷物を下ろしぼんやり過ごした。”色づく山のもみじを この先一体 何度 見ることになるのだろう・・・”ふと,竹内まりやの「人生の扉」の歌詞が頭をよぎる・・・。

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【紅黄葉も,太陽の光を浴び,乾いた秋の風に吹かれて気持ちよさそうだ】

改めて,こんな素晴らしい光景の中に身を置き,のんびりと過ごすのはなんと贅沢な時間だと思った。
霧に包まれた湿原を時折通り過ぎるのは木道工事の人たちか? やがて,その霧もだんだん晴れ,周りの風景がはっきりと見渡せる。今まさに見頃を迎えた紅葉に染まった木々に包まれた湿原。この素晴らしい光景を目に焼き付け,写真に収めて山の鼻に戻る。

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【こうした表情が見ることができるのは,本当に限られた時間なのだと改めて実感した】

やはり紅葉のベストシーズンとあって,至仏山荘前のベンチは少しだけ賑わっていた。徐々に天候も回復傾向にあったので,お茶などを飲みながら過ごしていると,やがて雲間から光が降り注ぐようになった。ダケカンバやブナの木々を照らす温かな光に見守られながら,ゆっくりと鳩待峠に向かった。

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【紅葉に包まれた綺麗な山道を周囲の様子を確かめながら鳩待峠へと戻る


鳩待峠から戸倉のバス連絡所までジャンボタクシーでその後バスに乗り換えて・・・と思っていたが,大清水行きの最終バスは数分前に出てしまうというハプニングもあった。しかし,そのジャンボタクシーの運転手が直ぐに大清水に向かってくれ,事なきを得た。
今回も一ノ瀬・三平峠,御池周辺の最盛期の紅葉を見ることもでき,心に残る尾瀬となった。
【ドローンでの空撮に当たっては国交省DIPS・FISS登録,関係機関への連絡調整済みです。】

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【今回見つけたツルコケモモの実】

■蛇足ですが・・・
竹内まりやの「人生の扉」へのリンクを参考までに載せておきますので,ぜひ聞いてください。心に染みる素敵な歌です。
https://www.youtube.com/watch?v=GBJuRfQPdZM

(英語部分の訳:Yahoo知恵袋より)
I say fun to be 20
You say it's great to be 30
And they say it's lovely to be 40
Bue feel it's nice to be 50
私は言うの、「20歳になるのはたのしいこと」
あなたは言うの、「30歳になるのはすばらしいこと」
そして、みんなは言うわ、「40歳になるのは素敵なこと」
でも、50歳になるのもいいなって感じるわ

I say it's fine to be 60
You say it's alright to be 70
And they say still good to be 80
But I'll maybe live over 90
私は言うの、「60歳になるのもいいんじゃない」
あなたは言うの、「70歳になるのも悪くはないわ」
そしてみんなは言うわ、「80歳だってまだまだ大丈夫よ」
でも、私は90歳過ぎまで生きると思うわ

I say it's sad to get weak
You say it's hard to get older
And they say that life has no meaning
But I still believe it's worth living
But I still believe it's worth living
私は言うの、「弱るのは(老いるのは)悲しいこと」
あなたは言うの、「老いていくってつらいこと」
そしてみんなは言うの、「人生に意味はない」って
でも、私は信じてる、生きるってすばらしいこと(価値があること)
でも、私は信じてる、生きるってすばらしいこと

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【辛うじて残っていたナナカマドの紅葉】
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黄金色の湿原【2】 [尾瀬ケ原]

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天気予報では雨は降らないが朝から曇りの予報が出ていた。いつもなら撮影を済ませてからゆっくり朝食をとるパターンなのだが,今回は見晴に宿泊している関係上,しっかり昨夜の内に朝弁当を受け取り,早朝の出発に備えた。

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【霜が降りてもおかしくない気温だが,湿原内の草や木はしっとりと朝露に濡れていた】

しかし,天候は急速に下り坂になってしまい,出発を予定していた5時頃,窓から見る尾瀬ヶ原は,朝靄が出ているもののどんよりとした雲が低く垂れ込めていた。部屋でのんびりしていても仕方がないので,予定通り早々に小屋を後にする。天気は良くなかったが,せっかく来たのだからとドローンを飛ばしたり,接写をしたりしながらゆっくりと山の鼻に向かう。

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【しっとりとした空気に包まれた朝を迎えた尾瀬ヶ原(空撮)】

ところが,歩いている内に徐々に雲が薄くなり,時折,日が射し始めた。ヨシッポリ田代につく頃,突然朝の光が湿原を照らした。朝露にびっしょりと濡れた樹木や高山植物に付いた小さなしずくが光の球となってこぼれ落ちる・・・。諦めていた気持ちがここに来て一気に切り替わり,何度も何度もシャッターを切る。

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【一瞬の光が朝露で濡れた湿原を照らすと,空気感が一変する】

のんびりと朝食を食べていたら間違いなく見逃したであろう短い時間だったが,とても充実した瞬間だった。その後も,乾き切った風が吹き抜ける湿原に,時折日が射す天候に変わったが,朝の瑞々しい空気とは明らかに違っていた。

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【爽やかな朝の息吹に包まれて,清々しい一日のスタートが切れた】

東電小屋のベンチでゆっくりと朝食をとる。ふと辺りを見回すと,尾瀬を取り囲む山々は,間違いなく昨日よりも秋の色に変わっているように感じた。十日もすれば,全山燃えるような鮮やかな色に包まれるに違いない・・・。その時もう一度訪れられたらいいなと思った。

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【日に日にその色を濃くするトチノキ】

今日は土曜日。「Go To Travel」のキャンペーン等の影響か山の端からは次から次へと多くの登山者とすれ違った。未知のコロナに対する試行錯誤の対応は山小屋にも求められ,尾瀬の日常は今までの尾瀬とは少し異なってはいるが,あたり前に繰り返されていた尾瀬の日常が戻る日もそう遠い日ではないかも知れない。
【空撮に当たっては,国交省DIPS・FISS登録,関係機関への連絡調整済みです。】

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黄金色の湿原【1】 [尾瀬ケ原]

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【2020年10月2日(金)】[快晴]
自粛疲れもあり,歩くことにどんどん後ろ向きになっていたが,ネットで見る秋の尾瀬の光景が,重くなった腰をやっと上げさせてくれた。

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【今年はいつもよりも早く樹林帯の紅・黄葉が進みそうである】

いつもよりも早めの出発に拘り鳩待峠に着いたのは午前7時。黄葉にもやや早く,平日ということもあって鳩待峠も閑散としていた。至仏山の全体は見えないが,天気の崩れを心配する必要もないくらいの青い空が広がっている。

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【湿原の草紅葉は絶好調・・・ 今が見頃だ】

一足先に鮮やかな色に染まったツタウルシやトチノキ。さらに他の木々も僅かに色付き始めている。温暖化の影響で紅葉の時期は年々遅れているが,今年は昨年よりも少し早そうだ・・・。

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【いつもなら霜でチリチリになっているヤマドリゼンマイも今年は見応えがある】

しかし,いつもは賑やかな小鳥の囀りもなく,聞こえるのは乾いた風に乗って運ばれる枯葉の擦れ合う音だけである。秋の華やかさとは裏腹に,一抹の寂しさを感じさせるのはこうした静けさも一因なのだろう。

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【木道工事の音が遠くに響く・・・ この音も秋の到来を感じさせてくれる音だ】

今シーズン最初で最後の賑わいを見せる山の鼻を後にして研究見本園に向かう。賑わいとは無縁の静かなベンチにザックを下ろし,湿原を吹き抜ける風に揺れるダケカンバの黄色い葉を眺めながら至福の朝食をとる。

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【見晴地区の山小屋もコロナの影響で開いているのは3軒。その営業も間もなく終わる】

その後は気儘に写真を撮りながら宿泊先である燧小屋に向かう。風も雲もない絶好の空撮日よりのハズだがやはり,何もないと説明的な写真にしかならない。むしろ,まだまだ強い光越しに見るヤマドリゼンマイが綺麗だ。

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【秋の夕陽により赤く染まる湿原】

一旦,荷物を宿泊先の燧小屋に置き,必要な機材をザックに詰め小屋を出る。流石にこの時間歩き回っている者はいない・・・。雲なし,霧なしの変化に乏しい撮影だったが,取りあえず撮影を済ませて小屋に戻り,消灯までの間のんびりとする。

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【樹木が長い影を湿原に落とし始めた・・・ そろそろ小屋に戻ろう。】

【空撮に当たっては,国交省DIPS・FISS登録,関係諸機関への連絡調整済みです。】
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梅雨空の下の尾瀬縦断【2】 [尾瀬ケ原]

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【朝靄に包まれた湿原と拠水林】

7月21日(曇り時々雨)
尾瀬とはいえ湿度も高く,機能は非常に寝苦しかった。こんな朝は間違いなく濃霧に覆われるはずだが・・・ 部屋の窓から外を確認すると,やはり外は一面の朝靄に覆われていた。上空はピンクに色づいた雲も出ている。曇りや雨のマークが並ぶ予報に嫌気がさし諦めていたが,案外いい条件なのかも知れない・・・。

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【平滑の滝と朝の尾瀬ヶ原】

必要な機材を持って散歩に出かける。熊の気配はないかとビクビクしながら,朝靄に包まれ墨絵のようになった周囲の森林を撮影する。しかし,徐々に朝靄が移動すると変化の少ない景色に変わった。これなら遠くまで足を伸ばす必要もないなと小屋に戻り,早めの朝食をとる。

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【カキラン】

SNSで知り合いだった方がまさかまさか受付にいらっしゃたのでちょっと談笑し,東電尾瀬橋経由で見晴に向かう。やはり早朝の空気をいっぱい吸いながら歩くのは気持ちがいい。途中の赤田代分岐からドローンを飛ばす。まさかとは思ったが,ここからでも三条の滝の写真が撮れたのには驚いた。
ラン街道を歩いていると前から環境省の職員が・・・ 中には懐かしい安類さんの顔があった。仕事中のため簡単にあいさつを交わして先を急ぐ。

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【バイケイソウ】

見晴に着いたので小休止。弥四郎清水で冷たい水を補給する。この温度差がたまらない・・・ しかし,ぐるりと見渡すといくつかの山小屋や休憩所が閉鎖され,秋のような寂しさを感じた。再び蒸し暑い登山道をゆっくりと進み只管歩くと思いの外早く沼尻に着いた。休憩所デッキによじ登り,ここからドローンを飛行させる。沼尻にはびこる藻が綺麗だ。この日は小雨が時折降っていたが,登りで火照った体にはちょうどいいお湿りとなった。

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【ヒツジグサ】

昼食をとりゆっくりしてから,一番期待していた大江湿原に到着した。しかし,ニッコウキスゲは昨年よりも少なく,見頃もやや過ぎていたようだが,風に飛び立つ前のふわふわした状態のワタスゲも見ることができた。

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【夏の沼尻付近は藻があたりを覆い独特の光景を作り出している】

この日も早めに長蔵小屋にチェックインして部屋で寛いでいると,昨日と同じように雨が落ちてきたため夕方の撮影は諦めのんびりと夕食を待った。この日の宿泊客はなんと4人。談話室で夕食をとることになった。長蔵小屋に何度も宿泊しているがなかなかない貴重な体験となった。

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【大江湿原にて。辛うじて残ったワタスゲとキスゲのコラボ】
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梅雨空の下の尾瀬縦断【1】 [尾瀬ケ原]

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【上田代の池塘もたくさんのあ雨で水が豊富だった】

 先日,2泊3日で今年初めて尾瀬に行ってきました。その時の様子を日記風にまとめました。

7月20日[曇り時々晴れ]
非常事態宣言は5月下旬に解除され,少しずつではあるが以前の生活に戻ろうとする試みが始まった。尾瀬の山小屋もしばらく営業を見合わせていたが,コロナ対策を実施して7月から限定的に営業を再開するところも出てきた。出かけることが憚られる状況ではあったが,尾瀬に行きたい気持ちは募る。

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【時折射し日差しが湿原の上を移動する様子は感動的だ】

しかし,悪いことは続くものである。今年の梅雨は長く,そして多雨である。これもまた温暖化の影響らしいが,年々加速度的に破壊力を増している。天気予報を見ては一喜一憂し,良い天気を見計らっていくことはほとんど不可能に近い。ならば,欲張らずに尾瀬を歩くことだけを主眼を置き出かけることにした。

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【オニシモツケ。一つ一つがはじけて線香花火のよう・・・】

第一駐車場に車を駐めタクシーの出発を待つが,客は集まらず発車。一人だけのマイクロバスは閑散とした鳩待峠に着く。平日ではあるが,まだ,旅行自体敬遠され,自粛している方が多いのも事実である。

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【ミヤマシシウド。こちらは上空でぱっと開いた打ち上げ花火のようです】

久しぶりの山歩きである。自粛生活を続け,暫く運動を怠けたこともあり,無理はできないので時間的に余裕のある計画を立てた。雨に濡れ滑りやすい木道で転倒しないように慎重に歩く。木漏れ日が漏れる林道を歩いていると,多くの野鳥の声が森に響く。蒸し暑さにふと足を止め,すっかり緑色に変わった林内を見ていると,季節は大きく移ろってしまった事を思い知る。

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【既にキンコウカが見頃を迎えた研究見本園】

山の鼻のベンチでも数人が休んでいるだけである。薄い雲を通して陽も射しているが,比較的強めの風が拭き抜け心地よい。見本園のベンチに荷物を置き,ゆっくりとお茶タイム。湿原には既にたくさんのキンコウカが鮮やかな黄色い花を咲かせ,池塘では真っ白なヒツジグサが風に揺れていた。まだ梅雨は明けていないが,季節はすっかり夏である。

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【ヒツジグサも咲き出して,湿原はすっかり真夏の様相です】

時折,青空が覗く空から湿原に光が落ちる。この先,晴れ間なんて期待できないかも知れない。撮れるときに撮ろうとドローンでの空撮を試みる。今回はMAVICAir2のデビューだ。MAVIC2と変わらない性能に大満足。ここで昼食をとる。

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【キンコウカ。ちょうどいい時に訪れることができました】

尾瀬ヶ原のニッコウキスゲはシカの食害が酷くなってからはほとんど期待していなかったが,昨年から設置している柵の効果は絶大で,柵内は思いの外たくさんのニッコウキスゲが咲いていた。尾瀬ヶ原も嘗てのような姿を取り戻すのもそう遠くない日なのかも知れない。東電小屋に到着し,一番風呂をいただき部屋で寛いでいると,凄い音を立てて夕立となった。早めに小屋について良かった。

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【夕立ちでかすむヨシッポリ湿原】

【空撮に当たっては関係諸機関の許認可を得て撮影しております】
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尾瀬を彩る秋の競演【2】 [尾瀬ケ原]


【今回の滝の空撮映像のダイジェスト版です。
 編集には時間がかかるのでとりあえず30秒にまとめたものをUPしてみました。】

 陽が沈む頃までは秋晴れの爽やかな一日だったが,急速に雲が広がり全天を覆う。ミニオフ会が終わる頃確認したが状況はそれほど変わらず,安心して?休むことが出来た。深夜に目が覚め,外を確認すると綺麗な月傘が出ていたのでカメラを持ち出し数枚撮影したが,それほど条件が良くなかったので,すぐに部屋に戻って寝ることにした。この時期日の出は6時前後,いつもよりもかなりゆっくり出来るのはありがたい。

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【寝ている間に天候も回復して月の周りには傘が架かっていました】

 朝起きると状況は昨夜よりも悪化。低い雲が垂れ込め,燧ヶ岳も至仏山も山頂付近は雲に隠れ見ることが出来ない。そんな時でも散歩がてら荷物を持って湿原内を歩かないと落ち着かないのがカメラマンの悲しいサガ。ウロウロしていると燧ヶ岳の山頂が見えてきたのでもしやと思い,イモリ池に向かうが,やはり雲の勢いに勝てずそのまま撃沈。小屋に戻る。

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【「平滑の滝」。周囲の紅葉が丁度見頃を迎え鮮やかです。】

 やはり収穫がなかったと見え,尾瀬仲間も早めに引き上げてきて,特に時間を指定したわけでもないのに,いつの間にか揃って朝食の席に着いていた。食後,今年最後の龍宮コーヒーを味わいながら,たくさんの尾瀬仲間と語らい,楽しい時を過ごした後,龍宮小屋を後にした。

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【平滑の滝の最下部に行くといわゆる滑め滝ではなく落差のある滝もありました。】

 さて,この日の最大の目的は,昨年ケガで実現できなかった尾瀬の滝を空撮すること。
紅葉も滝の周辺は丁度良さそうなので撮影するにはありがたい。撮影の時間をたっぷり取りたくて早めに移動する。滝を撮影して帰りたいというてばまるさんが途中から合流して一緒に滝の撮影をする。平滑の滝や三条の滝周辺の紅葉は絶好調。ここで光が射せばより鮮やかになるのに残念で仕方がない。

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【「三条の滝」遠望。この時期は水量は減るのですが,今回は多めでした。】

 両滝とも崖や高い樹木に包まれているため電波状態は極めて良くない。GPS信号を拾えないと実質的に撮影できないのであまり条件的に良いとはいえないし,川幅が狭いのでかなり制約がある。しかし,様々な番組で紹介される滝の映像を見るにつけ,今まで目にすることの出来なかった画像を撮りたいとの思いが強くなり,慎重にドローンを飛行させる。ただ慎重になりすぎたり緊張したりするあまり,撮影し損ねたりひやっとしたりする場面が何度もあったりするなど撮影中は緊張の連続だった。

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【三条の滝の滝口を真上から落ちていくしぶきの粒まで分かります。】

 三条の滝の撮影を終え,兎田代に向かう急峻な道を越える。いつもの燧裏林道に戻るとちょっと一安心。そして,昨日,渋沢の大滝を撮影したというてばまるさんに確認しながら,紅葉に包まれた渋沢の大滝の撮影も実現させることができたのは大きな収穫だった。今となってはそのルートも荒廃し,たどり着くことさえ困難で幻の大滝になりつつある渋沢の大滝が撮れた喜びは大きい。

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【三条の滝。かなり高度を下げて撮ってみました。しぶきが凄いのですぐに退散・・・】

 最後はいつも以上にヘロヘロになりながら御池に着いた。この辺も紅葉真っ盛りで,日差しがあったらもっともっと綺麗だろうなとしみじみと味わいながら車を走らせた。途中,モーカケの滝に寄り道をして,燧の湯に浸かってから帰宅した。

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【今や幻になりつつある「渋沢大滝」。登山道を整備して欲しいです。】
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初秋の風に乗って・・・ [尾瀬ケ原]

動画を久しぶりに編集してみました。
9月26~27日 アヤメ平~尾瀬ヶ原を歩いてきた時の空撮動画です。
ちょっと長めですので,お時間のある時にご覧ください。
今年撮影した動画がたくさんたまっていますのでそちらも随時編集し公開いたします。


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共通テーマ:旅行

秋深まる尾瀬へ【2】 [尾瀬ケ原]

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【拠水林に漂う朝靄も朝陽を浴びると激しく動き出す】
[空撮に当たり関係諸機関の許可を得て,各種法令遵守の上,飛行・撮影しています]

数日前からNHKの取材班が撮影に入り,ドローン等を使って8Kで尾瀬を撮影していた。以前の取材で知り合ったカメラマンも尾瀬入りしていて,明日は下の大堀付近で撮影するというので,ここで撮影の邪魔にならないように他の場所で撮影することにした。

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【太陽の昇る位置もかなり南の方になりました】

木道には霜が降りて真っ白だ。昨日の濡れた木道で懲りたので,滑り止めを装着して出かけると既に花見さんが三脚を立てて撮影を始めていた。周辺を歩いて霜の様子を確認する。樹木の天辺まで真っ白になっていないので大霜とは呼べないかな・・・。

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【白い虹を少し高い場所から】

ヨッピ橋方面に向かうと,どんどん朝靄が濃くなり,至仏山や目の前の景鶴山さえもぼんやりとしか見えないが,朝陽を浴びて山頂付近が紅く染まっているようだ。湿原に目をやるとチリチリになったヤマドリゼンマイや小灌木も霜で綺麗にデコレーションされ,華やぎを取り戻して生き生きとしていた。

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【尾瀬ヶ原は一面霜が降りたようで真っ白です】

時間とともにどんどんと光が降りてくる・・・ 真っ白だった湿原の一角に光が溢れ,そこを中心に周囲が明るくなる。この時を待ってドローンを上空へ飛ばす・・・。初めは真っ白だが,朝靄の上に出るとモニタに映る光景が一変する。朝陽を浴びて輝く紅葉間近の森,真っ赤に染まりながら揺れ動く朝靄,ブロッケンとそれを取り囲む白い虹・・・どれを見ても息をのむ光景だ。

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【地上では,真っ白な湿原の一角から朝日が昇ります】

幻想的な上空の光景に酔いしれていると,いつしか湿原にも光が舞い降り,目の前に白く大きな半円の弧を描いた。ドローンを一端ホバリングさせ,デジイチで白虹を撮影。嬉しい忙しさだ。時間がいくらあっても足りないくらいだが,白虹が長い間出続けてくれたので上空と地上からその姿を何とかカメラに収めることができた。

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【朝靄が濃く,地上には霜が降り,色彩のないモノトーンの世界が広がります】

時間とともに,霜に覆われて真っ白だった湿原も徐々に草紅葉の湿原に戻っていく。その溶けた霜が滴になってゆらゆらと朝日に輝いている様子もまた綺麗だ。湿原に取り残された朝靄,日陰に残る霜と草紅葉の対比も面白い。しかし,時間とともに早朝の輝きが消え,いつもの湿原に戻っていく。

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【徐々に朝靄が上がり,朝のドラマも終盤を迎えます】

一息ついたので小屋に戻って朝食の時間にした。ちょうど食事中だった花見さんや和風子さんとまた一緒におしゃべりをしながらの朝食になった。朝の撮影が充実していた時の朝食は格別である。予定では尾瀬沼でもう一泊してから下山する予定だったが,台風の影響による天気の悪化が早まったので早めに帰ることにした。小屋主さんを交え尾瀬仲間のオフ会さながらの楽しいやりとりもあって出発はいつもよりもさらに遅かった。

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【かなりの霜が降りヤマドリゼンマイや小灌木も綺麗にデコレーションされていました】

穏やかな秋の尾瀬に浸りたくて長沢の湿原の片隅に立つ。シーズンオフ前に仕上げようと忙しそうに進められる木道工事の杭を打つ音が遠く響く。水量が少なくなった長沢の清流の音に混じって,風にこすれる木の葉の音が涼しく響く。突然,周囲が賑やかになる。シジュウカラの群れだろうか・・・時間の経つのも忘れてのんびりと時間を過ごす。台風が接近しているなんて想像できないくらいの雲一つない秋晴れの空の下,鳩待峠までゆっくりと下山した。

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【今朝の冷え込みで紅葉も一気に進んだようです。昨日よりも明らかに色づいています】

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【目映い紅葉のトンネルを歩く】
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